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推しの素晴らしさを伝えたいのに言葉が出ない…そんな時どうすれば? 三宅香帆さん、教えてください!『「好き」を言語化する技術』インタビュー

いろんな感情が溢れているのに、推しを見ると「尊い」「やばい」しか出てこない…オタクならそんな経験があるはず。SNS等でもっと推しの魅力を伝えたいのに、と思うことがありますよね。

そんな「好き」という感情を言語化するためのノウハウが書かれた三宅香帆さんの著書『「好き」を言語化する技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)が2024年7月に発売されて以降、累計25万部を突破。各方面で話題となっている一冊です。

そこで、自身も「推し」がいるという三宅香帆さんにインタビュー。感情を言語化するためのコツやその大切さを伺いました。


「好き」を深堀すると“自分”のことも分かる


――三宅さんの著書『「好き」を言語化する技術』は、推し活をする人だけでなく、多くの人達から反響を得ています。執筆当初はこの現状を想像されていましたか?

驚きました。推し活をしている方だけでなく、ビジネスの観点でから「自分のプレゼンや、面接のときにこの本に書いてあることが使える」と言っていただけて嬉しかったです。

――この本を書いたきっかけを教えてください。

推しの素晴らしさを言語化したいけど、語彙力がないから語れないという方に向けて、“素晴らしさを言語化することに必要なのは語彙力ではなく、細分化力”だということを伝えたかったんです。私が文章講座などを実施すると、そういった声を頂くことが多いんですよね。“そこに需要があるんだ!”と気づいて、この本を執筆し始めました。

書店の本棚一面で展開!(三宅香帆さんInstagramより)

――好きな気持ちを言語化することのメリットはどんなところにあると思いますか?

好きなものを通して自分自身を知ることができますし、結果として自分の好きなものを好きな人が増えたらさらに嬉しいですよね。例えば私は本が好きなのですが、自分にとって本を好きとはどういうことかを深掘りすると、結局自分のことがわかってくる。それは大きなメリットかなと。

――いまは、多くの人が好きなものをSNSなどで気軽に紹介できますしね。

そうですね。ただ、自分がいいと思ったものを言語化する前に、他の人の感想を読んでしまうと、その言葉に影響されたり、自分の意見にブレが出てしまう。なので、そういった感想を見る前にメモすることをオススメしています。その詳細のテクニックは、この本を参考にしていただければと思います。

「布教」する際は相手のことも理解すること

――ポジティブに影響されることもありますか?

もちろん、あります。最近は読んだ本を記録するアプリがあるんですが、友達が登録している本に興味を持って読むこともすごく多いですね。先日は池井戸潤さんの『半沢直樹』シリーズを読み直したんですが、ドラマの内容をほぼ覚えていなかったので、あらためて楽しめました。

――それも“布教”のひとつですよね。友だちに自分の好きなものを教えたいときに大事にするポイントを教えてください。

まずは、相手がどんなふうにそれと接しているか、を理解することが大事だと思います。相手が嫌いなものについて無理やり話せば、人間関係は上手くいかなくなる。

本のなかでは、“パクチーを嫌いな人に良さを伝えるなら”と例題を取り上げているんですが、まずは「あなたはパクチーが嫌いだと思うんだけど」とひと言をはさむ工夫をするだけで、相手のことを考えているというサインを出せると思うんです。

『「好き」を言語化する技術 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』P83より


それがアイドルグループであれば、相手がよく知らないことを理解したうえで、「こういうグループがいて…」と丁寧に説明する姿勢が重要だと思っています。

対面イベントで推しに上手く伝えるコツは?


――推しと実際に会えるイベントなどで大事にすることを教えてください。

対面イベントなどでは、コンサートやテレビ番組などを見て“ここが楽しかった”とか“このセットリストがよかった”など、細部を教えてもらえた方が嬉しかったり、オリジナリティがでるのではと思っています。それはファンレターも同じで、具体的に良かったことを細かく上げていくと、ネタも尽きないと思いますし、書きやすいと思います。

とはいえ、言葉が出ないことも、それはそれで素敵なことではありますよね。それくらい何かに夢中になってる、ということだから。もし推しが目の前にいて、頭の中が真っ白になったとしても、それは決して悪い事ではなく、素敵な思い出として捉えてもいいはずです。

『「好き」を言語化する技術 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』P121より

――三宅さんは推しを目の前にして伝えられなかったことはありますか?

私は宝塚が大好きなんですが、公演を見た後は感想がスラスラ出てこないことがよくあります。そういった時は時間が経って、頭を整理してから感想を言語化しています。

――興奮状態だとなかなか出てこないのは仕方のない事ですからね。さて、三宅さんがいま、推しているものを教えてください。

最近はtimeleszさんにハマっています。オーディションの“タイプロ”こと新メンバーオーディション「timelesz project」に夢中になってました。チーム内でも、そしてオーディションを受けている側も、言語化をすごく大事にしているオーディションで、見入ってしまいました。

――もしいま、彼らに直接会えるとしたら、どんなことを言語化したいですか?

「頑張ってください、応援してます」しかないですよ(笑)。自分の感想を作者さんや推し本人に伝えたい、とあまり思わないタイプなんですよねえ。それよりも、自分が推しの魅力を第三者に発信することによって応援になればいいな、と思っているのかも。

自分の中にある言葉と、友達に話す言葉は違う

――推し活だけでなく、三宅さんが誰かと話すときに大事にしているのはどんなことですか?

相手のテンションに、できるだけ合わせるようにしています。相手が疲れないために。基本的に相手が心地よくいられるように話すことを大切にしています。

「ひうらさとるの漫画と温泉 展覧会」にて撮影(三宅香帆さんInstagramより)

――それは学生時代からですか?

そうですね。以前から、自分の中にある言葉、日記や家族に発する言葉と、友だちと話す言葉は違うなと思っていて。

――直感的に思う正直な言葉と、冷静になって整えた言葉ということでしょうか。

はい。なので、自分の日記を読み返すと、どの時代もずっと同じことで悩んでいるんです。それを振り返るのも面白いので、日記を書くことはすごくオススメしたいですね。

「本当に湧いてきた言葉」であれば上手い下手を超えた素晴らしさがある

――推し活を始めたばかりの人達にアドバイスをお願いします。

SNSを見ていて、自分よりも言語化が上手い人によって、同じコンテンツの感想を書いているのを見ると、自分の言葉に自信を持てなくなってしまう……そんなこともあるかもしれません。

でも、言葉や感想って、実は「本当にその人の中から湧いてきた言葉」であれば上手い下手を超えた素晴らしさがあるものなんです。なので、誰かの言葉よりも手前で、自分の価値観や感情を楽しく言語化をするためにも、他の人の感想を見る前にメモをとってみてほしいです。

――言語化すると、頭の中が整理されますしね。SNSを見ることで、そこまで辛いと思っていなかったスキャンダルなども、“これって辛いと思わなくちゃいけないんだ”と思うこともありますしね。

本当は自分がどう思っているのかが重要なのに、他人に流されて辛さが倍増しちゃうこと、ありますよね。推し活は楽しい一方で、推し活の仲間と比べることで疲れてしまうこともいっぱいあると思うんです。

そんな時に、自分の気持ちを言語化することが、一歩立ち止まるきっかけとなったり、“私はこういう所が好きだから悲しまなくていいんだ”と気持ちを整理する場になってくれると嬉しいですね。いい推し活ライフを送るためにも、言語化する技術をうまく使ってみてほしいです。

撮影/小石謙太

――それができるようになると、推し活関係なく、嫌いなものに対しても何が嫌いなのか、苦手なのかが細分化されてメンタル的にもいいかもしれないですね。

本当にそう思います。自分がやりたくないことも言語化してみると、一旦しんどいものから距離を置くこともできる。何に対しても、自分の感情を大事にしてあげることが、楽しく暮らせる秘訣なのではないでしょうか。

(取材・執筆:吉田可奈、企画:三鷹むつみ)

書籍情報


『「好き」を言語化する技術 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』

タイトル:『「好き」を言語化する技術 推しの素晴らしさを伝えたいのに「やばい!」しかでてこない』
著者:三宅香帆
刊行:ディスカヴァー・トゥエンティワン
仕様:新書判並製/264ページ


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