昨年12月20日に公開された映画『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』（以下、『最強の軍師』）は、すでに観客動員数100万人、興行収入15億円を突破し、大ヒットを記録しています。今後もさらに観客動員を伸ばしていくのは間違いありません。

『忍たま乱太郎』は長寿アニメシリーズであり、約13年ぶりの劇場版ということでファンからの大きな期待を集めていました。その一方で、本作をきっかけに『忍たま』熱が再燃したファンも少なくないようです。また、本作からファンになった人もいるでしょう。

『最強の軍師』は非常に丁寧に演出されており、事前にほとんど何も知らなくても十分に楽しめる作品ではありますが、映画を観る前、あるいは観た後にでも履修しておくと、さらに映画本編が楽しめるTVアニメのエピソードがいくつもあります。ここであらためて紹介します。

※2025.01.23に公開した記事を一部編集のうえ、転載しています

「土井先生ときり丸の段」土井先生の“おかえり”が温かい

『最強の軍師』は、忍術学園の土井半助先生をめぐるストーリーです。なかでも土井先生と教え子のきり丸の絆が中心になっています。ふたりの関係を描いたTVアニメのエピソードが「土井先生ときり丸の段」（19期90話）です。映画の公開に合わせてYouTube特別配信が行われました。

なぜ土井先生がきり丸の世話をしているのかが、土井先生自身の口から語られます。理由は「同じような育ち方してるからかな」というものでしたが、その先は言いませんでした。戦で家も家族もなくした幼少期のきり丸の様子は『最強の軍師』で描かれています。

「わが家」と言ってくれたきり丸を嬉しそうに見つめる土井先生や、「ただいま」と言って家に入るきり丸に「おかえり」と優しく声をかける土井先生など、見どころがたくさんある心温まるエピソードです。

3月発売のDVD「すぺしゃるの段　其の一」に収録が予定されています。

「一緒に帰るの段」きり丸と土井先生の楽しそうな暮らし！

「一緒に帰るの段」（32期60話）も土井先生ときり丸の関係を描いたエピソードです。原作者の尼子騒兵衛先生がプロットを作成しています。映画公開直前の12月9日に放送されました。

長期の休みになり、土井先生ときり丸の家に乱太郎としんべヱが泊まりに行くことに。道中、きり丸は土井先生の家を初めて訪れたときのことを思い出します。遠慮していたきり丸に土井先生は「部屋が汚れてるから掃除のアルバイトを頼みたい」と声をかけていたのです。

土井先生の配慮かと思ったら、本当に部屋は汚れていました。しっかり者のきり丸は食事や洗濯の世話をするどころか、財布の紐までがっちり握ります。

でも、ふたりの暮らしは本当に楽しそうです。現在はNHKオンデマンドなどで配信されています。

「おかえりなさいの段」若かりし土井先生と12歳の利吉

『最強の軍師』では、土井先生と山田伝蔵先生の強い信頼も描かれています。「おかえりなさいの段」（20期90話）は土井先生と山田先生一家の出会いのエピソードです。

教師になる前の若かりし頃の土井先生（まだ先生ではありませんが）が任務に失敗して敵に追われていたとき、家族と一緒にピクニックをしていた山田先生が追手を追い払います。ピクニックが台無しになって怒っていた山田先生の息子・利吉はまだ12歳でした。

そんな話を土井先生が1年は組のみんなに話していると、ドクタケ忍者隊の稗田八方斎と山田先生が戦っているところに出くわします。乱太郎の作戦で八方斎を退けると、みんなで利吉と山田先生の奥さんが待ってる山田先生の家に向かいました。

山田先生の優しさと頼もしさが伝わってくるエピソードです。3月発売のDVD「すぺしゃるの段　其の一」に収録が予定されています。

「思い出した手当の段」利吉の“お兄ちゃん”がエモい

『最強の軍師』では利吉が土井先生を「お兄ちゃん」と呼ぶシーンが話題になりました。「思い出した手当の段」（30期35話）は土井先生と利吉の思い出のエピソードです。「おかえりなさいの段」ともつながっています。

土井先生と保健委員の乱太郎のもとへ、利吉が傷だらけの突庵望太を連れてきました。傷の手当をされている突庵を見て、土井先生は利吉と出会った頃のことを思い出します。山田先生に助けられた傷だらけの土井先生（まだ先生ではありませんが）を、まだ12歳だった利吉が手当してくれたのです。

ケガが癒えた土井先生は、利吉とキャッチ手裏剣やカニ取りで一緒に遊びます。そんな様子を見た山田先生の奥さんは「教師に向いている」と口にします。家に帰る途中、利吉は思わず「お兄ちゃん」と声をかけていました。

利吉が土井先生を慕っているのがよくわかるエピソードです。現在はNHKオンデマンドなどで配信されています。

「若い人の段」“半人前の半助”土井先生が教師になるまで

「若い人の段」（32期63話）は土井先生が忍術学園の教師になるまでを描いたエピソードです。こちらも尼子先生がプロットを作成し、映画公開直前の12月13日に放送されました。

山田先生の奥さんのすすめで忍術学園に教師として勤めることになった若き日の土井先生。安藤夏之丞先生に名前を尋ねられますが、抜け忍の土井先生は答えられません。事情を察した安藤先生は「若い人」と呼ぶことを提案します。

学園長に1年生（今の6年生）を教えるよう言われた土井先生ですが、なかなか心を開くことができません。いつも乱太郎たちに「教えたはずだ！」と言っている土井先生ですが、ここでは山田先生に同じことを何度も言われます。山田先生は土井先生に「半人前の半助」と名付けました。

山田先生と奥さんが土井先生の恩人だとよくわかるエピソードです。現在はNHKオンデマンドなどで配信されています。

「利吉の教材攻撃」諸泉尊奈門が土井先生を襲うけど…！？

こちらは土井先生と利吉、そして土井先生と『最強の軍師』の冒頭で戦っていた諸泉尊奈門とのエピソードを見られるのが「利吉の教材攻撃」（30期66話）is.

試験の採点をしていた土井先生は、「土井半助のベストコンビ投票」というファンイベントのような紙を目にします。結果は3位がタソガレドキ忍者の尊奈門、2位が5年い組の豆腐小僧・久々知兵助、そして堂々第1位はフリー忍者の利吉でした。

そんな折、土井先生のもとへ利吉が現れます。利吉は土井先生にチョークや出席簿による教材攻撃が見たいと懇願し、土井先生もそれに応えて利吉に教材攻撃を繰り出します。兵助に豆腐の作り方を習いに来ていた尊奈門が土井先生に襲いかかりますが……。現在はNHKオンデマンドなどで配信されています。

「土井先生の災難の段」土井先生が語る“忍者の本質”とは

「土井先生の災難の段」（19期46話）は土井先生に挑戦を続ける諸泉尊奈門のエピソードです。どうしても戦いたいと迫る尊奈門ですが、土井先生はあらゆる手を使って逃げようとします。

土井先生は逃げながら尊奈門に、「忍者は戦うものじゃないよ。そんなことは武士に任せておけばいい。忍者の本質は、逃げて生き延び、やるべき任務をまっとうすることだ」と語りかけます。

土井先生は学園長に尊奈門を倒すように命じられますが、どうしても戦いたくありません。しかし、逃げながら結果的に尊奈門を倒してしまいます。 その後、またまた果し状が届きますが、土井先生は「いい加減にしてくれ！」と逃げていってしまいました。土井先生と尊奈門の因縁がわかるとともに、土井先生が語る忍者の本質が印象的なエピソードです。DVD第19シリーズに収録されています。

今回はTVシリーズのエピソードを紹介しましたが、映画『劇場版アニメ 忍たま乱太郎 忍術学園 全員出動！の段』も多くのキャラクターが登場するほか、忍術学園とその他の城との複雑な関係が描かれており、『最強の軍師』とあわせて観るとより楽しめると思います。

掘れば掘るほど沼にハマっていく『忍たま』の世界をどっぷりと味わってください。

（執筆：大山くまお）

『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』

『土井半助』失踪、『天⻤』襲来。
タソガレドキ忍者・諸泉尊奈門との決闘に向かった後、消息を絶ってしまった土井先生―
山田先生と六年生による土井先生の捜索が始まる中、担任不在の一年は組では、タソガレドキ忍軍の忍び組頭・雑渡昆奈門
と、尊奈門が教壇に立つことに!
そんな中、きり丸は偶然、土井先生が置かれた状況を知ってしまうのだった。
一方、土井先生捜索中の六年生の前に突如現れたのは、ドクタケ忍者隊の冷徹な軍師・天⻤。
その顔は、土井先生と瓜二つで―
忍たま達に立ちはだかる最強の敵を前に、今、強き「絆」が試される。
果たして乱太郎、きり丸、しんべヱたちは、土井先生を取り戻すことができるのか―!?

■キャスト・スタッフ

出演:高山みなみ 田中真弓 一龍斎貞友 関俊彦

監督:藤森雅也
脚本:阪口和久
音楽:馬飼野康二
キャラクターデザイン:新山恵美子
副監督:根岸宏樹
アクション作画監督:関根昌之
美術監督:川口正明
撮影監督:林コージロー
色彩設計:村田恵里子
編集:坂本雅紀
音響監督:大熊昭
音響効果:庄司雅弘
音響制作:AUDIO PLANNING U
アニメーション制作:亜細亜堂
配給:松竹
製作:劇場版忍たま乱太郎製作委員会
公式 X:@nintama_eiga
c尼子騒兵衛/劇場版忍たま乱太郎製作委員会