
浅沼晋太郎らの悪役が見事!『仮面ライダーガヴ』は“あの有名映画”のような世界観が楽しい。一方、原点回帰を感じる部分も
2024年9月から放送が始まり、早2か月あまり。「令和仮面ライダー」6作目にあたる『仮面ライダーガヴ』もそろそろ全体像がハッキリしてきました。放送開始当初は、その世界観はベールに包まれ、主人公の存在感も若干謎めいていたことから、なかなか物語についていくのが難しい作品なのか?という印象だった本作。
しかしながら、回を重ねるごとにその魅力が開花されていき、物語の行く末を考察するファンが急増。今では毎週の放送が待ち遠しく感じてしまうほどに、筆者もドハマりしてしまいました。なぜ『仮面ライダーガヴ』は人々を惹きつけるのでしょうか?その魅力に迫ってみましょう。

※2024.11.24に公開した記事を一部編集のうえ、転載しています
仮面ライダー史上初!カラフルでポップな「お菓子」の世界観
『仮面ライダーガヴ』の物語は、異世界から謎の青年・ショウマ(知念英和)が人間界へとやってくることから幕を開けます。お腹が減りすぎて倒れているところを少年に救われたショウマは、もらったお菓子をあっという間に平らげていきます。すると、不思議なことに、お腹から次々と「ゴチゾウ」と呼ばれる小さくて可愛らしい生命体が生まれてきました。実はショウマは「赤ガヴ」と呼ばれるガヴを腹部に宿しており、仮面ライダーガヴへと変身することができるのでした。
未知なる敵・グラニュートたちによって次々と襲われる人間たちを救うために、ショウマは仮面ライダーへと変身し、自身の過去に秘められた謎を追い求めながら、様々な仲間たちと出会い、一人の人間として成長していきながら、日々、グラニュートたちとの熾烈な戦いに身を投じていくのでした……。
「仮面ライダー」シリーズは、2000年に放送が始まった『仮面ライダークウガ』を皮切りに、日々進化を遂げ、毎年新機軸を打ち立てることで視聴者のマンネリ化を避けてきました。「令和」の時代に入ると、そういったスタイルはより顕著になっていきます。
初の女性ライダーがメインライダーに起用された『仮面ライダーゼロワン』、男女問わず多人数のライダーたちが一堂に会する『仮面ライダーセイバー』と『仮面ライダーギーツ』、主人公ライダーが2人存在する『仮面ライダーリバイス』と、その見た目や変身アイテムだけでなく、多様性の時代に相応しい実に多種多様な物語や設定が盛り込まれた作品が毎年登場してきています。前作『仮面ライダーガッチャード』もまたCG背景と実写を組み合わせた映像表現を駆使しながら主人公たちの学園生活を描き切るという新鮮な描写で楽しませてくれた作品でした。
そして令和ライダー6作目となる『仮面ライダーガヴ』は、史上初めて「お菓子」の力を使って変身する仮面ライダーが主人公。
これまでにもフルーツであったり、炭酸飲料を使ったりといった仮面ライダーは存在しましたが、老若男女問わず誰もが大好きな「お菓子」を変身アイテムとして昇華させたのは今回が初めて。それだけに、劇中の世界観はカラフルでポップ、非常に可愛らしいものになっています。
チョコの“ワクワク感”も再現。まるでティム・バートン監督作品のよう
主人公ショウマの服装を初め、仮面ライダーもまたパープルを基調にイエローやブルーといったカラフルなカラーリングが目を惹きます。さらに戦い方に関しても、ポップな印象を大いに与え、変身プロセスでは身体にグミが纏わりつくような過程を辿り、パンチやキックを繰り出すとジューシーなグミが弾けるようなエフェクトで演出。
極めつけは戦いによるダメージでボディのアーマーが崩れ落ちると、ゴチゾウの力で欠落部分が再生されるという、斬新な戦闘スタイルが非常に印象的です。基本フォームのポッピングミフォームは「グミ」をモチーフにしていますが、その他にも「ポテトチップス」をモチーフにしたザクザクチップスフォーム、「マシュマロ」をモチーフにしたふわマロフォーム、「キャンディ」をモチーフにしたグルキャンフォームなどが存在。
さらに2号ライダーは「チョコレート」をモチーフにした仮面ライダーヴァレン(チョコと言えばヴァレンタイン!)で、顔や身体に板チョコが貼りついたようなフォルムになっています。変身プロセスの中で板チョコの銀紙を剥がす“あのワクワク感”を表現しているのは、個人的に天才的発想だと思いました。
そんな可愛らしい世界観の本作は、現在、巷で大きな話題となっており、変身アイテムとして使用される「ゴチゾウ」は売り切れ続出の状態に!
あまりにも可愛すぎるデザインであることから、たくさん集めて並べたいというファンが多数出現。中でも女性ファンの割合が多いように感じ、先日、筆者自身もとあるおもちゃ売り場へゴチゾウを求めて赴いた際、何人かの女性ファンたちが目をキラキラさせながら抱えるようにしてゴチゾウたちをレジへ連れていく姿がありました。
そういった意味でも、本作は新たなファン層の獲得にも成功している作品と言えるのかもしれません。お菓子がテーマの作品ということで、さながらティム・バートン監督作品、特に『チャーリーとチョコレート工場』や『アリス・イン・ワンダーランド』を彷彿させる部分も多いですね。
改造人間の悲哀も…。古参ファンも惹かれる原点回帰
しかしながら、作品全体がポップな雰囲気で覆いつくされているわけではありません。中にはとてつもなく重い、シリアス描写までも組み込まれています。例えば、主人公のショウマは異世界から人間界へとやってきた存在であり、人々は仮面ライダーという存在にも慣れていません。
そのため、しばしば周囲から化け物や怪物と揶揄される場面があり、その都度苦悩する姿を見せるのです。
「平成2期」以降の仮面ライダー作品では、仮面ライダーを絶対的なヒーローとして君臨させることが多く、こういったネガティブな描写は少なかった印象です。
そう考えると、本作は「仮面ライダー」の原点に立ち返った作品とも言えるわけです。とりわけ仮面ライダーたちが一種の改造人間であるという設定は、原点回帰を感じさせる部分でもあります。「平成」以降の仮面ライダーたちのほとんどは、変身ベルトを〇〇ドライバーと呼び、アーマーを身に纏うといったような設定の下で戦ってきました。
しかし、元々仮面ライダーというのは、悪の組織によって改造された「改造人間」。自らも敵組織によって生み出された怪物であるという自覚を持ち、人類の自由と平和を守ってきたのです。今回の仮面ライダーガヴには、そんな昭和ライダーイズムを存分に感じさせる場面が多く、新規のファン層を開拓しながらも、古参のファンをも惹きつける魅力が備わっていると言えるでしょう。
知念英和の笑顔がキュート! 浅沼晋太郎や滝澤諒らの存在感にも注目
そして何と言っても『仮面ライダーガヴ』は、キャストも魅力的! 主人公ショウマ役を演じる知念英和さんは、屈託のない笑顔を武器に、ショウマの純粋無垢な魅力を体現してくれています。特に初めて食べるお菓子を口にする際のキラキラした笑顔が堪らなくキュート! 思わず観ている視聴者まで嬉しくなってしまうほどです。
そんな可愛らしい表情をいくつも魅せてくれる知念さんですが、時折見せる苦悩の表情もまた自然体で素晴らしい。自らが化け物であるという悲哀を見事に体現した演技の数々は、仮面ライダーらしいものですし、笑顔とのギャップがまた魅力的なのです。今後、1年間にわたってどのような成長を遂げていくのか楽しみしかないほどです。
そんな知念さん演じるショウマとは対極に位置するクールな2号ライダー、辛木田絆斗役を演じる日野友輔さんは、ミステリアスな雰囲気も携えた演技を披露。彼の存在が、本作をさらに面白くしていると言っても過言ではないほどに、物語をかき乱してくれる存在として今後も期待大です。
声優としての印象が強い浅沼晋太郎さんと、2.5次元舞台ファンから人気の滝澤諒さんAlso非常に独特な存在感を放ってくれています。
絆斗を仮面ライダーヴァレンに改造するグラニュート研究家の酸賀研造役を演じる浅沼さんは、まだまだベールに包まれた部分が多いものの、どこか信用しきれない怪しさ満点の表情や声色を魅せていますし、滝澤さんはマニキュアが非常にお似合いで、まさに水を得た魚のような活き活きとした悪役像を体現しているように映りました。
登場人物とキャストの相性が抜群なのも本作が魅力的な作品に仕上がっている要因なのではないかと思います。塚本高史さん演じるランゴを初めとしたストマック家の活躍にも期待したいですね。
筆者は「仮面ライダー」シリーズを「昭和」「平成」「令和」と時代を股にかけて、すべての作品を視聴してきましたが、これまでのシリーズにおいても上位にランクインするほどにドハマりしてしまっている『仮面ライダーガヴ』。
ポップとシリアスの融合で、物語がどういったところに着地するのか楽しみ過ぎます。ぜひともお菓子片手に楽しんでみてください。
(執筆:zash)
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