古参vs新規、グッズの量でマウント合戦…オタク同士の対立はなぜ起こる?【推しへの“愛”を心理学で解説 #3】
偏愛カルチャーWEBマガジンとして、さまざまなコンテンツの魅力を届けているnuman。この度、オタクが推し活の中でなんとなく感じている“心の不思議”を紐解く新連載、「オタクの心理学~推しを愛する心の裏側~」をスタートします。
危険な行動を取ってしまう心理や、推し疲れと消費の心理――そんなオタクの心の内を、オタク文化を網羅的に分析した書籍『オタク・スペクトラム : オタクの心理学的研究』の著者であり臨床心理士・公認心理師の山﨑尚彦先生のご知見を交えて紐解いていく本連載。今回は、「オタク同士の対立が起きてしまう理由」について聞きました。
自分でも気付けなかった感情の正体や心の仕組みを知ることで、自身の推しへの向き合い方や、推し活をするうえでの注意点についてより深く理解できるはず!
<プロフィール>
山﨑尚彦(やまざき・なおひこ)
臨床心理士・公認心理師として、精神科臨床や学生相談など、主に医療・教育分野の臨床に携わる。帝京大学医学部付属病院脳神経内科にて高次脳機能障害の研究に従事し、東京藝術大学・関東学院大学などで非常勤講師も務めつつ、筑波大学大学院人間総合科学研究科ヒューマン・ケア科学専攻3年制博士課程を修了。
■『オタク・スペクトラム : オタクの心理学的研究』
(山﨑尚彦/福村出版)
定量的データと膨大なコンテンツ紹介でオタク文化を網羅的に分析する。心理臨床支援にも役立つオタク論。■公式HP

推し活は感情を“質”で表しにくいため、“量”で勝負してしまう?
――推しが急に世間からの注目を浴びるようになったとき、しばしば古参・新規ファンの対立が起こります。心理学的に、なぜこのようなことが起きるのだと思いますか?
山﨑尚彦(以下、山﨑):
どのファンコミュニティにも言えることですが、古参は「自分のほうが界隈の歴史を知っている」という優越感を感じることが可能です。また、人の性(さが)として「自分がこれまで楽しんできた環境のままであってほしい」という懐古的な感情も古参は感じやすいかもしれません。
一方で新規ファンはそんな事情は知ったことではないため、過去にこだわる古参と、「今この瞬間を好きなように楽しみたいのに」と感じる新参がお互いの振る舞いを不快に感じるとき、両者の対立が起こりやすいのだと思います。
――推してきた歴史だけでなく、所持しているグッズの量などでマウントを取り合うケースもよく耳にします。
山﨑:
グッズの量で競い合うような行為も、前回お話しした「自己愛」が大きく関係していると思います。「自分がどれだけ推しを好きかアピールして一目置かれたい」「ほかのファンより優位に立ちたい」という欲求がある場合、グッズの量がマウントの手段になるのは自然な流れと言えます。
現実の恋人であれば、「どのように深く支え合っているか」といった個別の精神的なつながり、いわば“質”で他人との差を感じることができますよね。それに比べて推し活は、「一方的かつ表面だけを知っていて、同じ人を好きである」というファン全員の共通点を越えて、質で差を出すことは難しいでしょう。だからこそ、目に見える“量”で差異をアピールせざるを得ず、その中で自己愛が発揮されることでマウントが生まれやすくなるのだと考えています。
――グッズの個数に限らず、ライブや握手会に行った「回数」も同じことが言えそうですね。ちなみに同担拒否とは逆に、「他人の推しを貶(けな)して自分の推しを持ち上げる」人もいると聞きますが、これも自己愛が影響しているのでしょうか?
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