SUPER★DRAGON、10年の軌跡。“バラバラなまま 手を繋いで”歩み続けてきた9人の絆と踏み出す一歩
数多くのボーイズグループやガールズグループが誕生し、“アイドル戦国時代”とも言われる現代。推し活の市場規模は何兆円にも上るとされ、「推し」を持つことが一般的となっています。ですがその反面、情報の多さに「オタク」な私たちでさえ追いきれないという側面も…!
そこで、長年音楽シーンを追ってきたライターの吉田可奈さんが注目のグループを1組ずつ解説。今回は10周年を迎えるSUPER★DRAGONの軌跡と魅力を紹介します。

「選び続けてきた」彼らの絆と決意は強い
超特急やM!LKが在籍する、スターダストプロモーションに所属するアーティスト集団、EBiDAN。そのなかでも、より異彩を放つ9人組ボーイズグループ、SUPER★DRAGONが今年、結成10周年を迎えた。
結成から10年が経った2025年の彼らの平均年齢は、若干23歳。最年少のメンバーは小学生の11歳の頃からSUPER★DRAGONに在籍し続けていることになる。
さらに驚くことに、この10年、一度もメンバーが欠けることなく、思春期、成長期、進学、10代の青春、すべての選択を迫られたときに、メンバーの伊藤壮吾の言葉を借りて言えば「SUPER★DRAGONを選び続けてきた」のだ。この事実は、自身の10代を振り返って見れば、どれだけ難しかったことかが分かるはず。
なによりも、試練のように降りかかってきたコロナ禍をはさみ、決して順風満帆だったとは言えない期間、無限に広がる自分への可能性をすべてこのSUPER★DRAGONというグループに捧げ、支え合い、前に進み続けてきたからこそ、9人の絆と決意は、とても深く、強い。
とはいえ、先日開催されたツアー「SUPER★DRAGON LIVE TOUR 2025『SUPER X』」のファイナル公演では、池田彪馬が、“メンバーが10年間で一度も欠けていないことだけにフォーカスされることに対して複雑”という素直な気持ちを話し、話題となった。
もちろん、彼らの魅力はそこだけではない。彼らの魅力は何かと聞かれ、まず最初に伝えたいのは、圧倒的な楽曲の良さだろう。
HIP HOPをベースに、ジャンルレスなサウンドを次々取り入れアグレッシヴに挑戦し続ける楽曲は、より多くの音楽ファンに届くべきクオリティの高さを保ち続けている。これまでリリースされたアルバムから、少しずつ紐解いていきたい。
泥臭さとピュアさが同居する名盤『2nd Emotion』ファンを驚かせ続ける楽曲
平均年齢15歳、2017年にリリースされた1stアルバム『1st Impact』には、その年齢とその当時のビジュアルに似つかわしくない、ハードな楽曲が並ぶ。
なかでも『hide-and-seek』などで、すでに彼ららしいミクスチャーサウンドが提示され、固い絆を持ち続け、歩み続ける未来を歌う、今も節目ごとに大事に歌われている『BROTHERHOOD』も収録。まさに自己紹介的なアルバムとなっている。
その2年後にリリースされたアルバム『2nd Emotion』には、イントロが始まった瞬間からフロアの温度が上がる代表曲、“チャブマ”こと『Untouchable MAX』や、会場の一体感が楽しめる『LRL-Left Right Left-』を収録。

より攻撃的で、10代特有の怖れることのない未来へ突き進む力は泥臭さとピュアさが同居する、この時代だからこそ生まれた名盤となった。
ちなみに、アルバムにはRemixが収録されている『ワチャガチャ』のオリジナル曲は、当時の年代にフィットしたキャッチーさが中毒性たっぷりなのだが、コンセプト的に現在の彼らのライブでなかなか聞くことができないのが残念。先日、企画色が強い『DRA FES 2025』にて披露したときは大きな歓声が上がった。
2019年にリリースした『3rd Identity』では個人プロデュース曲を9曲収録。この頃から自らがクリエイティブに積極的に参加するようになり、グループとして大きく成長。当時、K-POPでは当時から制作に深く関わるグループが多く存在していたが、日本のボーイズグループには、まだまだセルフプロデュースができるグループが少なかった。

そんな中、それぞれの個性を全面に出した楽曲をリリースし、ファンを驚かせたのだ。
なかでも彼らの代表曲にも昇華した、ラテン×EDMの『La Vida Loca』は松村和哉が制作に関わり、そのセンスを開花。さらに9人いれば九者九様。
攻撃的な『La Vida Loca』とは対極な、伊藤壮吾がプロデュースをしたキャッチーで心躍る『雨ノチ晴レ』、切なく美しいピアノのイントロと、ドラマティックな展開のクラブサウンドが胸を打つ、柴崎楽がプロデュースした『Remedy For Love』など、タイプの異なる楽曲をしっかりと“スパドラ色”に染めパフォーマンスするそのレンジの広さも、彼らの魅力のひとつだろう。
その後、コロナ禍となり無観客でのライブなどを経て、試行錯誤をするなか発売した4枚目のアルバム『Force to Forth』では、初めて海外のクリエイターとタッグを組み、メンバーはほとんどの楽曲の制作に参加。

BLUE(ファンネーム)に会えない期間に、何をするべきか、どうするべきかを語り合い完成した今作を、当時のメンバーは「名刺代わりの1枚」と強く語る。自分たちの音楽制作能力もどんどん上がり、脳内にある音楽をしっかりと具現化できるようになった彼らは、とても強い。
幕開けとなる『Welcome to my hell』には、“これから何が始まるのだろう”というワクワク感と共に、全体的に漂う緊張感が中毒性を持つ。さらにタイの人気アーティストであるAnatomy Rabbitとコラボした『love or like (Tokyo) w/Anatomy Rabbit』でも、これまでにない彼らの可能性を引き出すことに成功した。
自分たちの理想を形にした『SUPER X』は、意外性で溢れた一枚
渾身作をリリースした彼らの音楽への熱は冷めることなく、2022年は毎月新曲をリリース。
“スパドラとは”という自分たちとしっかり向き合い作り上げた『mirror』には、壮大な『Revolution』や笑顔で歌う姿が想像できる『Pretty Girl』や、彼ら絶対的な信頼を受けるYockeが、池田彪馬と古川毅がサウンドのリファレンスを受け作曲し、松村和哉とジャン海渡がラップパートの歌詞を書いた『Tap tap tap!』も収録。
疾走感あふれるサウンドの中から強い言葉で突き進む決意を歌うこの曲からは、彼らの絶対的なエネルギーを感じることができるはずだ。
そして2025年。10周年イヤーにリリースされたアルバム『SUPER X』は、コンペをせずに、自分たちが一緒にやりたいクリエイターと共に、すべての制作を担当。より自分たちの理想を形にするために、それぞれが憧れのクリエイターに声を掛けて夢を叶えながら制作した今作は、意外性で溢れた楽曲で満ちている。

なかでもリード曲となる『NPC』はSnail’s Houseと手を組み、RPGを題材に制作。
ゲームのなかの登場人物に恋をするというかわいらしい歌詞世界は愛おしく、そのほかには古川毅がプロデュースをしたラウドな『Omaejanai』は田中洸希がシャウトに挑戦したり、松村和哉がHIP HOPのヒットメイカーであるVLOTと共に作り上げた『DOG』は、心地よいビートチェンジとたたみかかえるラップでありながらどこか温かさを感じる仕上がりに。この表現力の幅も、努力と経験を積み上げ、手に入れてきたものだろう。
異なる魅力と個性を持つ=「9個」の入り口がある
9人それぞれの音楽性がまったく異なるように、キャラクターもまったく違うのも大きな魅力。
アクロバティックなダンスと相反する、みんなの愛されキャラ、最年長の志村玲於は、グループの振り付けも担当し、メンバーだからこその個性をしっかりと引き出している。

俳優としても多く作品に出演する古川毅ののびやかな歌声はとても力強く、その歌唱力、表現力は増していくばかり。意外と天然な場面もあり、そのギャップは大きな“沼”。
トルコと日本のハーフ、ジャン海渡は、グループではラップや作詞を主に手掛けながらもソロ名義“jjean”としても活動。グループとは全く異なる、グルーヴィでクラブライクな楽曲を歌い上げている。サービス精神旺盛な性格でつねに笑いを欲している姿との温度差に驚く人も多いはず。
一見穏やかな飯島颯は、正確なダンスと豊かな表情で圧倒的なパフォーマンスを魅せるなか、マイペースさが際立ちその行動にメンバーが驚くことも。最近は俳優としても精力的に活動をし始め、新たな才能を開花させている。
ベビーフェイスでかわいらしさと温かさをまとう伊藤壮吾は、自他共に認める生粋の鉄オタ。鉄オタ側からの認知度も高く、バラエティ番組でその知識を発揮するだけでなく、先日はJR九州のオリジナルツアー“第6弾”として、九州新幹線を博多~熊本間で貸切運行するイベントを開催。車掌を模したMCは定番中の定番。
ヒューマンビートボックスを使いこなし、セクシーなボーカルと攻撃的なラップなどで魅了するオールラウンダー、田中洸希は、俳優としても活躍中。尖りの10代を超え、いまは優しさと艶やかさでグループの華として発光。

どんな曲でも歌いこなす抜群の歌唱力と、ミステリアスな魅力に引き込まれる池田彪馬は、慶応義塾大学在学中の“才色兼備”。才色兼備とは、一般的に男性に使う言葉ではないが、美しく博識である彼にピッタリの言葉だろう。
そして、最年少ラインでありながら、圧倒的な風格を持つ松村和哉は、迫力のある低音ラップでスパドラの楽曲を支えている。ソロプロジェクト“Cuegee”としても活動し、よりプライベートで深い世界観を表現。実際にアンダーグラウンドでの活動もしてより自信をつけた彼が生み出す音楽は、しっかりとSUPER★DRAGONにも還元されている。
群を抜いたモデルスタイルと世界観を持つ最年少ダンサーの柴崎楽は、そのスタイルを活かしながらも雰囲気のあるダンスパフォーマンスで視線を奪う。最近は“かわいい”を極め、猫耳ヘアやキュートな表情でBLUE(と田中洸希)を魅了。

9人、全く異なる魅力とビジュアルを持つ彼ら=9個の入り口を持っていることになる。そして、それぞれの入り口に入った先に、このメンバーがこよなく愛する“SUPER★DRAGON”というグループの沼が待っているのだ。
“バラバラなまま手を繋いで” 新たな一歩を踏み出すSUPER★DRAGON
そんな彼らの音楽は、つねに時代と共に流行のジャンルを飲み込み、しっかりとスパドラ流に昇華させ、その時々の想いをしっかりとリリックや歌詞に乗せて歌い、パフォーマンスで引き込み、聴き手をその世界観へと染めてきた。

コンスタンスに楽曲をリリースし、リリースイベントでBLUEと笑顔を交わし、徐々に、でもしっかりとライブ会場の規模を広げていったSUPER★DRAGONの歩みはマイペースで、他の人から見れば少し遅く見えるかもしれない。
でも、確かに、悩みながらも、SUPER★DRAGONというグループを、メンバーを信じながら続けてきた10年間は、何物にも代えがたく、深く、力強い。そんな彼らの想いが込められたのが、2025年のツアー、「SUPER★DRAGON LIVE TOUR 2025『SUPER X』」のファイナル公演の日に配信された『笑い話』だろう。
メンバー全員が作詞をしたこの曲には、彼らいわく“内輪の話”が赤裸々に詰め込まれている。
それはBLUEであったとしても解読しきれない場所がたくさんありながらも、彼らは“説明するつもりもない”と笑って話したが、曲を聞けば、彼らのこれまでの葛藤や、SUPER★DRAGONを守ろうとする気持ち、メンバーという、友だちでも仕事仲間でもない、家族でもないのに、誰よりも大事な存在への気持ちが手に取るように伝わってくる。
この曲にある、“バラバラなまま手を繋いで”というフレーズは、まさにこれまでの10年のSUPER★DRAGONを力強く感じることができる。こんなにもタイプの異なる9人が、10年もの間意見をぶつけ合い、それでも一緒に進もうとした、そして進み続けている今は、決して偶然でも、当たり前でもない、奇跡と言って間違いないだろう。
彼らはいま、さらに新たな一歩を踏み出している。12月3日には、新たな挑戦に満ちた新曲『Concealer』も発売。現在、彼らが所属するEBiDANへの追い風も強く吹く中、大きくブレイクするのは時間の問題だろう。そんな彼らの軌跡をいま一度、しっかりと堪能してもらいたい。
(執筆:吉田可奈)
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