大好きな推しが一瞬で“蛙化”…「好き」が憎しみに反転する心理とは?【推しへの“愛”を心理学で解説 #4】
偏愛カルチャーWEBマガジンとして、さまざまなコンテンツの魅力を届けているnuman。この度、オタクが推し活の中でなんとなく感じている“心の不思議”を紐解く新連載、「オタクの心理学~推しを愛する心の裏側~」をスタートします。
危険な行動を取ってしまう心理や、推し疲れと消費の心理――そんなオタクの心の内を、オタク文化を網羅的に分析した書籍『オタク・スペクトラム : オタクの心理学的研究』の著者であり臨床心理士・公認心理師の山﨑尚彦先生のご知見を交えて紐解いていく本連載。今回は、「『好き』が憎しみに反転する心理」について聞きました。
自分でも気付けなかった感情の正体や心の仕組みを知ることで、自身の推しへの向き合い方や、推し活をするうえでの注意点についてより深く理解できるはず!
<プロフィール>
山﨑尚彦(やまざき・なおひこ)
臨床心理士・公認心理師として、精神科臨床や学生相談など、主に医療・教育分野の臨床に携わる。帝京大学医学部付属病院脳神経内科にて高次脳機能障害の研究に従事し、東京藝術大学・関東学院大学などで非常勤講師も務めつつ、筑波大学大学院人間総合科学研究科ヒューマン・ケア科学専攻3年制博士課程を修了。
■『オタク・スペクトラム : オタクの心理学的研究』
(山﨑尚彦/福村出版)
定量的データと膨大なコンテンツ紹介でオタク文化を網羅的に分析する。心理臨床支援にも役立つオタク論。■公式HP
“アンチ化”の裏には「自分を守りたい」心理があった?
――推しの些細な欠点や失敗を見ただけで一気に冷めてしまったり、逆に激しい攻撃性を向けてアンチと化すケースも耳にします。大好きだった推しを全否定してしまうような極端な思考の裏には、何があるとお考えでしょうか?
山﨑尚彦(以下、山﨑):
決して1つの要因だけが関連しているわけではないと思うので、考えられる要素をいくつか挙げてみましょう。まず1つの視点として、古典的な精神分析には「スプリッティング(分裂)」という概念があります。これは、自分を満たしてくれる側面と不快にさせる側面を合わせ持つ同一の対象を、実感レベルでまったくの別人だと捉えてしまう未熟な対人認知のことです。
赤ちゃんを例にとると、母乳を与えてくれる“良いお母さん”と、おむつを替えてくれず不快な思いをさせる“悪いお母さん”を、同じ人物であったとしても実感レベルでは別の存在として捉えてしまうようなイメージです。
空想の中で推しが過度に理想化されている場合もこれに近く、ほんの少しの欠点を見ただけで一気に悪へと反転し、まるで別人のように感じられてしまう。そんな対人認知のクセが、激しい攻撃性を向けるようなアンチ化の要因の1つと考えられます。
――1つの欠点があるだけで、全体がダメに見えてしまう。「0か100か」の思考なのですね。
山﨑:
はい。ただ、この精神分析的な考え方は有名ではあるものの、何でも身体的・性的な欲求に還元して説明するために雑に使われてしまう傾向もあり、それだけでは正確とは言えないので、別の視点も提示してみましょう。
ここから先は
¥ 150
よろしければ応援お願いします! より読者の皆さんへ喜んでもらえるコンテンツ作りに還元します!
