
関智一は11人を演じ分け!? ウルトラマン、仮面ライダー、スーパー戦隊…“三大特撮”を制覇した声優たち。神谷浩史、杉田智和etc.
「ウルトラマン」「仮面ライダー」「スーパー戦隊」いわゆる日本の三大特撮と呼ばれる作品たち。これまでに星の数ほどの俳優たちが、特撮作品に出演してきていますが、この‘‘三大特撮制覇’’という偉業を成し遂げ、歴史に名を刻んだ者たちはそう多くありません。
そんな長きにわたる特撮の歴史において非常に稀有な存在として数えられている俳優の中には、声優として名を馳せている実力者たちもいるのです。
本稿では、そんな三大特撮作品を制覇した6人の声優をご紹介します。
※ネタバレを含む可能性があります。
浅沼晋太郎:『仮面ライダーガヴ』では俳優として出演も
現在放映中の令和仮面ライダー6作目にあたる『仮面ライダーガヴ』にて、物語序盤のキーパーソンとして活躍した酸賀研造=仮面ライダーベイク役で印象を残した浅沼晋太郎さん。グラニュート研究家という善悪の見分けがつかないキャラクターを素晴らしい演技で演じ切り、最終的には仮面ライダーに変身する姿まで見せてくれました。
同作では顔出し出演という形で、今までとは少し異なる声優の在り方のようなものを魅せてくれている浅沼さんですが、実は彼は他にも特撮作品で印象的な存在感を放っているのです。
記憶に新しいところで言えば、2021年に放映された「スーパー戦隊」シリーズ第45作『機界戦隊ゼンカイジャー』のジュラン役の声。
同作は、人間が一人しかおらず、あとの4人はキカイノイドで構成されるという異色の作風で大きな話題を呼んだわけですが、浅沼さん演じるジュランは、渋めな雰囲気を出しながらも、実はパーティー好きのパーリーピーポー気質のあるキャラという非常に面白い存在。恐竜をモチーフにした見た目とは裏腹に、人間臭い人情味あふれる一面を魅せてくれる瞬間も最高でした。
「ウルトラマン」シリーズで言えば、2017年放送の『ウルトラマンジード』でシャドー星人ゼナ役の声優として存在感を放ちました。
地球で蔓延る宇宙人の侵略や怪獣災害を調査し、影ながら対処する秘密組織AIBのエージェントとして登場したキャラクターですが、人間に変装している際の姿を演じたのは、ウルトラマンジードのスーツアクターでもある岩田栄慶さん。
岩田さんは表情を全く変えず、口を開かない設定だったため、その声を演じる形で浅沼さんは出演しました。宇宙人らしい無機質な声色がとにかく印象深い役どころでした。
そのほかにも、『ウルトラマンメビウス』や『動物戦隊ジュウオウジャー』、『仮面ライダーガッチャード』などにも出演しています。
杉田智和:もはや「スーパー戦隊」に欠かせない存在
「スーパー戦隊」シリーズ50周年記念作品である『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』にて、敵組織ブライダンの参謀隊長Mr.シャイニングナイフ役を演じている杉田智和さん。同キャラクターは、Mrs.スイートケークとの愛が深すぎて融合してしまったという何とも愉快な設定が組み込まれた敵幹部ですが、杉田さんの深みのある声色が非常に活きた印象を大いに受けます。
そんな杉田さんは、これまで『魔進戦隊キラメイジャー』オラディン王役などでも存在感を示しており、「スーパー戦隊」シリ―ズにおいては重要な役どころを演じることが多い声優さんでもあります。
「仮面ライダー」シリーズに目を向けると、やはり特に印象的なのが2008年放映『仮面ライダーキバ』のキバットバットⅢ世役。主人公の紅渡が仮面ライダーキバに変身する際に、力を貸しているコウモリ型の変身アイテム。渡に寄り添い、常に気遣う様子などがとても沁みるキャラクターでしたね。
ほかに、『仮面ライダー鎧武』や『仮面ライダーガッチャード』の敵怪人役としても存在感を発揮しています。
「ウルトラマン」シリーズでは、2013年より放送を開始した『ウルトラマンギンガ』のウルトラマンギンガ役。宇宙の神秘に包まれたウルトラマンというキャラクターたちの中でも特に謎多きウルトラマンであるギンガのどこか達観した雰囲気を見事に表現した演技を披露してくれました。同作における杉田さんは、ラスボスであるダークルギエル役も演じており、正義と悪の双方を見事に演じ分けている点も素晴らしいの一言に尽きます。
関智一:11人を演じ分け、特撮ファンも喝采!
声優界きっての大の特撮ファンとして知られる関智一さんも三大特撮を制覇している声優の一人です。
2010年公開の映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』にて、後にゼロと共に「ウルティメイトフォース」というチームを組むことになる炎の戦士・グレンファイヤー役を演じ、その熱き闘志を体現した燃え上がるような声色で特撮ファンに鮮烈な印象を残します。
続く、2011年放映の『海賊戦隊ゴーカイジャー』ではナレーションと変身アイテム・モバイレーツなどの声としてファンから愛される存在に。
そして、特撮における関さんの存在を大いに知らしめた作品が、2015年公開の映画『スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号』is.
劇中で関さんは、ナレーションを務めるほか、仮面ライダーV3、仮面ライダーアマゾン、仮面ライダーストロンガー、仮面ライダースーパー1、仮面ライダーW、ショッカー首領、シオマネキング、etc…と、ライダーから怪人に至るまで実に一人11役ものキャラクターを見事に演じ分け、一人スーパーヒーロー大戦に! これには特撮ファンも拍手喝采!
その後も2015年放映の『仮面ライダーゴースト』では15人もの偉人たちを演じたこともあり、「仮面ライダー」における関智一多用案件は特撮ファンの間では語り草となっています。
ちなみに関さんは、2023年放映の『ウルトラマンブレーザー』では顔出し出演しており、怪獣に襲われそうになりました。
神谷浩史:『仮面ライダーリバイス』では本人役で登場!
映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』にて印象を残した声優と言えば、神谷浩史さんもいます。ゼロの頼れる仲間であるジャンバード/ジャンボット役を演じました。関さん演じるグレンファイヤーとは対照的に、冷静沈着かつヒロインであるエメラナ姫を守ることに心血を注いでいるキャラクター。その後のシリーズでは、グレンファイヤーとの小気味いい掛け合いも見どころの一つとなりました。
そんな神谷さんは、「スーパー戦隊」シリーズでも大きな存在感を放っています。2016年放映の『宇宙戦隊キュウレンジャー』では司令官のショウ・ロンポー役を好演。
竜をモチーフにしたキャラクターでありながら、どこか抜けているテキトーな司令官をおとぼけ感たっぷりに演じてくれました。『進撃の巨人』リヴァイ兵長とは全く異なるキャラクター性を発揮しており、ファンであれば絶対に見逃せない!
さらに2024年放映の『爆上戦隊ブンブンジャー』では敵組織ハシリヤンの幹部であるマッドレックス役を熱演。内に秘めた熱い闘志を滲ませながら、寡黙でクールなキャラクター性も混在させた見事な声色を披露し、劇中で最も愛すべき悪役像を築き上げてくれました。
そして「仮面ライダー」シリーズでは、2021年放映の『仮面ライダーリバイス』に本人役で出演しているほか、2008年公開の映画『劇場版 さらば仮面ライダー電王 ファイナル・カウントダウン』にもイマジン役として出演しています。
諏訪部順一:“敵役”といえばこの人! 圧倒的な諏訪部ボイス
特撮作品の敵役として存在感を示した声優と言えば、諏訪部順一さんも忘れてはいけません。諏訪部さんも神谷さんと同じく『爆上戦隊ブンブンジャー』にて、ハシリヤンのサンシーターの一人であるデコトラーデ役を演じています。
同作においては、いわばコメディリリーフ的な役割を果たすキャラクターですが、神谷さん演じるマッドレックスを心の底から慕っており、マッドレックス様のためとあれば、命さえも差し出す覚悟で頑張る姿はもはや感動もの! 敵キャラでありながら、なぜか応援したくなる魅力的なキャラクター像を体現してくれました。
「仮面ライダー」シリーズでは、やはり2016年放映の『仮面ライダーエグゼイド』におけるラヴリカバグスター役。人間態の外見は小手伸也さんが演じ、声を諏訪部さんが演じるというパターンでしたが、そのあまりにもセクシーな声色に思わずドキッとしてしまうこと請け合い。イケボな諏訪部さんにピッタリの役どころでした。諏訪部さんは同作のナレーションも担当しており、劇中いたるところで諏訪部ボイスを堪能することが出来ます。
「ウルトラマン」シリーズでは、配信限定作品『ウルトラギャラクシーファイト』シリーズも必見。
ラスボスとでも言うべき存在であるアブソリュートタルタロス役を熱演しています。黄金に輝くボディを身に纏った巨人で、ウルトラマンさえも圧倒するほどの強大なパワーを秘めた敵キャラクターを、存在感たっぷりに演じてくれました。
諏訪部さんは三大特撮すべての作品で、主要な悪役を演じた稀な例と言えるでしょう。
M・A・O:『海賊戦隊ゴーカイジャー』では女優としてレギュラー出演
かつて「スーパー戦隊」シリーズに女優としてレギュラー出演し、その後、声優として三大特撮を制覇した数少ない例もあります。
M・A・Oさんは、2011年放映の『海賊戦隊ゴーカイジャー』にて、市道真央としてルカ・ミルフィ=ゴーカイイエロー役を演じました。劇中では頼れる姉御キャラを好演し、力強い演技を披露。
その後、声優へと転身し、M・A・O名義として『宇宙戦隊キュウレンジャー』に出演。ルカ役とは打って変わり、乙女チックな性格のラプター283=ワシピンク役を好演しました。「スーパー戦隊」シリーズにおいて、2度にわたり初期メンバーを演じた例は過去になく、史上初の快挙となりました。
そして、M・A・Oさんは2019年放映の『仮面ライダーゼロワン』ではAIの声を演じ、2021年放映の『ウルトラマントリガー』ではメトロン星人マルゥル役を演じたことで、見事、三大特撮を制覇しました。
後者では、渋い魅力を放っていたメトロン星人に、可愛らしさという新たな可能性を見出すことに成功した抜群の演技を魅せており、今後の星人キャラにおける新境地を開拓したと言えるのではないでしょうか。
中村悠一(番外編):制覇しているとも言えるけど…惜しい!!
非常に惜しい形で三大特撮制覇を未だ達成していない声優もいます。『呪術廻戦』五条悟役や『僕のヒーローアカデミア』ホークス役などで知られる人気声優の中村悠一さんです。
特撮界隈における中村さんと言えば、ご存じ、2015年放映の『ウルトラマンX』にて、ウルトラマンX役を演じたことで有名です。主人公である大空大地とユナイト(一体化)するウルトラマンとして、紳士的かつ人間味のある声色を披露し、実にユニークなウルトラマン像を築き上げてくれました。
劇中最強オレ様キャラを演じることの多い中村さんのキャリアにおいても、その謙虚なキャラクター性は珍しいものであると言えるでしょう。
さらに「スーパー戦隊」シリーズにおいては、2012年放映の『特命戦隊ゴーバスターズ』ビート・J・スタッグ=ビートバスター役を演じたことでも知られています。
これまでに特撮2作品において変身ヒーローを演じてきた中村さん。残すところは仮面ライダーのみなのですが、なぜ番外編という形で紹介させていただいたかというと、実は中村さんは「仮面ライダー」に出演経験していた過去が。2020年に発売されたゲーム『KAMEN RIDER memory of heroez』において、大道克己=仮面ライダーエターナル役を演じているのです。
もはや三大特撮を制覇していると言っても過言ではないのですが、未だ本シリーズにおける出演がないということで、今後、「仮面ライダー」にて中村さんが素晴らしい演技を披露してくれることを期待して、本稿は結びとさせていただければと思います。
ちなみに中村さんは、仮面ライダーを題材としたスマートフォン向けゲーム『ライドカメンズ』でも声優を務めています。惜しい!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
‘‘三大特撮制覇’’を成し遂げるということは、タイミングなどにも左右されることから、相当難しいことは明らか。だからこそ、長きにわたる特撮の歴史上に、彼らはその名を刻んでいるわけです。
そんな偉業を成しえた者だけが見ることのできる景色というものもまた存在するのかもしれません。
(執筆:zash)
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