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「かっこいい」は理想化、「かわいい」は守りたい親密欲求から?【オタクの“あるある”を心理学で解説 #1】

偏愛カルチャーWEBマガジンとして、さまざまなコンテンツの魅力を届けているnuman。この度、オタクが推し活の中でなんとなく感じている“心の不思議”を紐解く新連載、「オタクの心理学~オタクの“あるある”を解き明かす~」をスタートします。

「なぜ推しに惹かれるのか?」「この感情の正体は何なのか?」――そんなオタクの心の内を、臨床心理士・公認心理師である二宮有輝先生の視点で紐解いていく本連載。今回は、「かわいい」と「かっこいい」の解釈の違いについて聞きました。

自分でも気づかなかった感情の正体や心の仕組みを知ることで、毎日の推し活がさらに楽しく、味わい深いものになるはず!

<プロフィール>
二宮有輝(にのみや・ゆうき)
臨床心理士・公認心理師/名古屋市立大学大学院 人間文化研究科 講師。学生相談や公立中学校の常勤スクールカウンセラーでの勤務を経て現職。主に青年期の精神的健康およびwell-beingに関わる諸現象などについて研究を行っている。

「かわいい」の正体は“赤ちゃん要素”とギャップ萌え?

――第1回目のテーマは、推しに対する「かわいい」と「かっこいい」の解釈の違いについて。例えば、とある男性アイドルAくん(仮)に対して「かわいい」と思うファンがいる一方で、「かっこいい」と思うファンもいます。このような場合、ファン自身の心理にはどのような感情が働いているのでしょうか?

二宮有輝(以下、二宮):
私の生徒で推し活をしている子からも、「対象(推し)が同じであってもファンによって解釈が大きく異なる」という話はよく聞きます。やはり他人に対して抱く思いは人それぞれ異なりますから。

これに対して、私はその推しの外見的・内面的特徴だけが関係しているというよりかは、推しを見ている人、つまりファン自身が「推しとの関係で何を求めているか」、あるいは「推しとの関係でどう心が満たされるのか」が大きく関係していると考えています。

推しに対して「かっこいい」と思う人は、どちらかというと憧れや理想化といった感情のほうが大きく、例えば推しが誰かに対してはっきりと意見を言う姿や、人前で堂々とふるまう姿勢などを見て、「自分もこんなふうになりたい」と感じているのでしょう。推しを自分の理想像として、「こういう人になりたい」と重ねているのだと考えられます。

心理学においても、無意識のうちに自分と他者を重ね合わせてしまう「同一化」や、対象を過剰に美化してしまう「理想化」がありますが、それらに近い心の働きだと言えます。つまり、自分の上に推しという存在がいて、彼・彼女を尊敬する感覚に近いですね。

――「かっこいい」推しは、自分にとっての憧れや尊敬の対象だと感じている人が多いのですね。では、「かわいい」と感じる場合はどのような心の働きがあるのでしょう?

二宮:
「かわいい」と感じる場合の心の働きは少し異なると考えており、「推しを近くに引き寄せて守りたい」「愛おしい」といった感情が大きく関係しているのだと思います。

「かっこいい」は自分の上に推しがいる、つまり少し距離を置いているイメージだとすれば、「かわいい」はもっと身近な存在だと感じていることが多いでしょう。理想化というよりは、母性や情緒的なつながりを持ちたいという欲求、すなわち「親密欲求」の要素が強いと感じます。少し未熟な部分や隙(すき)があるところ、一生懸命頑張っている姿を見て「愛おしい」と感じる働きです。

――母性も関係しているとのことですが、男性ファンと女性ファンとでは「かわいい」と思う心の働きにおいて違いがあるのでしょうか?

二宮:
男女どちらでも違いはありませんが、女性のほうが最初から「かわいい」「愛おしい」などといった感情を抱きやすい印象はありますね。

あくまでも私の見解になりますが、男性が男性アイドルを見た場合、まずビジュアルから「かっこいい」と推し始め、次第に「かわいい」という感情も抱くようになる方が多いような気がします。恐らく、ここには性役割の違いが影響しているのではないでしょうか。今はジェンダー平等の時代ですが、男性は生来「しっかりしなければならない」という意識が強いため、自分のなりたい理想像に惹かれる傾向があるのだと考えています。

ただし、男性が女性アイドルを推す場合は、最初は「かわいい」から入ったものの後から「かっこいい」と感じる、逆のパターンも大いにありますよね。

――そもそも、人が他人やモノに対して「かわいい」という感情を抱く因子として、心理学的には何があると考えられているのでしょうか?

二宮:
心理学的には、幼く小さいものや、少し未熟で完璧ではないものに対して「守ってあげたい」、推し活でよく使われるワードで言うと「応援したい」「育ててあげたい」と感じやすい傾向があります。

外見的な要素でいうと、目が大きくほっぺたがふっくらしているといった、赤ちゃんのようなふんわりとした身体的特徴を「ベビースキーマ」と呼び、人は本能的にかわいいと感じます。ですので、こういった特徴が強いアイドルや俳優、キャラクターにおいては、ファンになるきっかけが多いのかもしれません。

また、外見的特徴とは別に、その人の人間らしい部分を見たときに「かわいい」と気持ちが動くこともあると思います。普段はクールで完璧な推しが、緊張していたり不器用だったりする姿を見たときの「ギャップ萌え」ですね。もちろん、アイドルの完璧な部分だけを見たくて、そうした人間っぽさを見たくないファンもいるとは思います。

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