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イラストレーター・うごんば、AI時代に描き続ける意味を問う「“推していてよかった”と思われる絵を描きたい」

「アナタの推しを深く知れる場所」として、さまざまな角度で推しの新たな一面にスポットを当てているnumanによる連載企画『AI時代を生き抜く、“沼”クリエイターの流儀』。
第一線で活躍しているクリエイターの方々をお迎えし、制作におけるこだわりや、AI時代においても失われることのない“人間ならではの創作の意義”を深掘りします。

今回お話を伺ったのは、圧倒的な画力と卓越したファッションセンスで、多くの女性ファンを虜にしているイラストレーター・うごんばさん

にじさんじ所属VTuber・緋八マナや『フラガリアメモリーズ』、『BOYS be MAID!~御曹司メイドボーイ部の日日~』などの人気コンテンツで原画・キャラクターデザインを手掛けるだけでなく、オリジナルBL作品『泉月と聡一』も展開。今年(2026年)には台湾での初個展も開催するなど、今や海外からの注目を集めています。

そのクリエイティブの裏側を紐解くと、同人活動から始まったという意外なキャリアや、二次創作に打ち込んでいた頃からの「推しを魅力的に描きたい」という切実な欲求の原点が明らかになりました。

さらに後半の有料パートでは、生成AIが発展する現代において「人間が描き続ける意味」を深掘り。AIが生み出す作品に対して抱く率直な想いを語りつつ、「この時代に“自分で考えて描く”という選択をしたこと自体に価値がある」と、すべての表現者を勇気づける言葉を贈ってくれました。

AI時代に筆を執るべきか迷いが生じている人、絵を描くモチベーションを保てずにいる人……すべてのクリエイター必見の内容です。

取材・執筆/柴田捺美

プロフィール:うごんば
イラストレーター・漫画家。オリジナル作品『泉月と聡一』のほか、Vtuber「緋八マナ」(にじさんじ)、『フラガリアメモリーズ』(クラークステラ、ルタールステラ)、『BOYS be MAID!~御曹司メイドボーイ部の日日~』の原画・キャラクターデザイン、『FouRTe Project』キービジュアルなどを担当。■公式X

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クリエイターとしての初仕事は「二次創作」がきっかけ

――まずは、クリエイターとしてのこれまでの歩みについて伺います。美術コースのある高校を卒業後、一般の大学に進学されたとのことですが、大学時代も絵は描き続けていたのでしょうか。

うごんば:
趣味として絵を描き続けていました。好きな作品のイラストを描いてネットに上げたり、二次創作で同人活動をしたり……あくまで趣味の範囲に収まる形で、絵を描いていましたね。

――そこから、どのようにしてクリエイターとしてお仕事をするようになったのでしょう。

うごんば:
最初に絵の仕事をいただいたのは、確か社会人になってからだと思います。とある作品のコミカライズを担当してほしいというご依頼だったのですが、当時描いていた二次創作漫画を見てお声がけいただいたんです。同人誌イベントに出展したときか、あるいはそのあとにメールでコンタクトをいただいたのか……あまり覚えていないのですが、編集の方から「コミカライズしませんか?」という打診があり、お引き受けしたのが始まりだったと記憶しています。

今は主にイラストレーターとして活動していますが、(クリエイターとしての)最初のお仕事は漫画が中心でした。大学生のときだけでなく、社会人になっても同人誌を作ったり二次創作の漫画をネットに上げたりしていたので、それを見てお声がけいただくことが多かったです。

――ということは、当時本業としてはイラストや漫画と関係ないお仕事をされていたのでしょうか。

うごんば:
そうですね。絵とはまったく関係のない仕事に就いていました。副業としてしばらくコミカライズなどの仕事を続けていたのですが、2022年に「絵の仕事一本でやろう」と思って退職し、フリーランスになりました。

――フリーランスになってから、お仕事の内容に変化はありましたか?

うごんば:
漫画ではなく、イラストのお仕事が増えたかなという印象です。コミッションサイトの「Skeb」で納品した絵をSNSに上げるようになってから、それをきっかけにお声がけいただくことも多くなって。「Skeb」自体は大学生の頃からやっていたのですが、最近ではそこからイラストのお仕事をいただくことが増えましたね。

また、フリーランスになって数ヶ月後くらいに「オリジナル作品を描こう」と思い立ち、『泉月と聡一』というオリジナル作品を描き始めました。

――以前(うごんばさんがキャラクターデザインを務める)『BOYS be MAID!』の企画原案者にインタビューした際、「『泉月と聡一』のイラストを見てオファーを決めた」とおっしゃっていました。オリジナル作品をきっかけにお仕事も増えていったのですね。

うごんば:
本当にありがたいことですね。自分の好きなものを好きなように描いていたら、素敵なお仕事が舞い降りてくるというのは、とても幸せなことだと毎日感じています。

時間と手間をかけるポイントは「顔」と「布」

――ここからは、作品制作のこだわりについて伺います。見る人の“心に刺さるクリエイティブ”として、特に意識しているポイントは?

うごんば:
やっぱり「顔」ですね。どんなお仕事でも、男性を描くときも女性を描くときも、顔にはどうしてもこだわってしまいます。人物のイラストを見たとき、最初に目がいくのは顔だと思っているので、描き手としても一番大事にしたい。どんな人が見てもかっこいい、あるいは綺麗だと思ってもらえるように、考えながら描いていますね。

だからこそ、描くときに一番時間をかけてしまうのも顔なんです。一度「これでいこう!」と思っても、ほかの部分を描き進めているうちにまた気に入らなくなって、顔のパーツの位置調整をしたり、全部描き直したり……細々とした調整を繰り返すので、どうしても時間がかかってしまうんです。

数日間かけて1枚のイラストを制作すると、翌日に気になるところが出てくることもあって。「何で昨日は気付かなかったんだろう?」って毎回思うのですが、こればかりは時間を置いてみないと気付けないんです。

――全体感やストーリー性ももちろんこだわっているかと思いますが、それよりもディテールの方に目が行くタイプなのでしょうか?

うごんば:
イラストのお仕事の場合は、背景やシチュエーションが決まっていることがほとんどなので、その上でディテールにこだわりたいという気持ちがあります。

絵を見てくださった方から「ストーリー性を感じる絵ですね」と言っていただけることがあるのですが、そこはほとんど無意識で。たぶん、今まで漫画を多く描いてきたからだと思うんです。だからこそ今は、足りない部分ばかりに注目してしまって。得意なことを伸ばした方がいいと思うのですが……どうしても、できていない部分に時間をかけてしまうんです。顔以外にも、体のバランスなど「何か違うな」と思って描き直したり、位置を微調整したりすることは多々あります。

ほかにこだわっている部分で言うと、「布」の表現でしょうか。自分が「気持ちいいな」と思えるような服のシワを描きたいなと思って、今も努力している最中です。空いた時間に写真を参考にして、シワの付き方や影の落ち方を勉強するようにしています。

――以前SNSでアップされていたメイキング動画では、最初に色や明暗のアタリをつけてから服のシワなどの細かい部分を描き込まれているのが印象的でした。描く手順について、こだわりはありますか?

うごんば:
まずは大まかに色を置いていって、全体の明暗や色の調子を見るように進めています。カラーラフの時点で「何か気に入らないな」と思ったまま進めると、結局気に入らない絵になっちゃうんですよね。

なので、最初に大まかな完成を見据えた上で色合いを決め、それから細かい部分を描いていったり、顔のパーツや比率などを合わせていったりしています。

――大胆に色を置いてから少しずつ書き込んでいくというのは、一般的に油絵を描く方法に似ている気がするのですが、高校の美術コースで学んだ経験が生きていたり……?

うごんば:
今初めて気付きましたが、確かに油絵を学んだ経験が今につながっているのかもしれないです。当時は油絵に触れる機会が圧倒的に多かったですし、完成図を見たときに「塗り方が油絵っぽい」と言われるのも、そのあたりに理由があるのかもしれません。

「推していてよかった」と思える絵を描き続けたい

――うごんばさんが描くキャラクターたちは、衣装やアクセサリーなども非常に魅力的です。創作において、日頃どのようなインプットをしているのでしょうか。

うごんば:
実は、意識的にインプットしていることはないんです。「イラストの勉強のために」という感覚はなく、常に観たい映画を観て、読みたい作品を読むという感じで。

衣装に関しても積極的に情報収集しているわけではないのですが、アパレルブランドのコレクションなどをぼんやりと眺めながら、「こういう布の使い方があるんだな」と参考にすることはあります。

自分自身が服を着たり集めたりすることに興味があるわけではなくて、モデルさんがいて、その方が服の魅力を引き立たせるように着こなしている姿を見るのが好きなんです。なので、「このモデルさんがこういう風に着ていたら素敵に見えるだろうな」とスタイリスト的な視点で選ぶかのように、自分のキャラに服を着せていますね

きっとそれは、フリーランスになる前、同人活動していた頃にハマっていた作品の影響が大きいかもしれません。世界観がすごくおしゃれで、推しているキャラクターもファッションが好きだったので「推しが着るならダサいのは嫌だな」「こういう服が似合うんじゃないか」と常に考えていたんです。

――「推しを魅力的に描きたい」という欲求が、今の創作活動にも活きているのですね。

うごんば:
そう思います。かつて自分がキャラクターを“推す側”だったからこそ、“推している側”がどんな気持ちになるかが分かるんです。大好きな推しがかっこよく描かれていなかったら、悲しいですから。「『推していてよかった』『見ていて楽しい』と思える絵にしなきゃいけない」という想いが、今の私の軸になっています。

――SNS上では、『泉月と聡一』のぬいぐるみと一緒に写真を撮るなど「推し活」をしているファンの方をよく拝見します。

うごんば:
オリジナルキャラクターを愛してくださるのは、本当にありがたいことだと思っています。かつて私は二次創作をする側でしたが、今は自分の生み出した作品を推してもらう立場になり、改めて感慨深さを感じています。

台湾で個展をさせていただいたときも、グッズを持って写真を撮ってくれたり、ファンアートを描いてくれたり、すごく愛してもらえて。いまだに不思議なんですよね、自分の好きなように作ったキャラクターたちを、自分以外の誰かにも愛してもらえるというのは。こんなにも“推してもらえる”幸運に恵まれて、本当にありがたいなと思っています。

生成AI時代、人間が描き続ける意味とは?

――ここからは、現在のクリエイター業界が直面している「生成AIとの向き合い方」について、お話を伺います。生成AIが急速に普及する中で、“人間にしか作れないもの”とは何だとお考えですか?

うごんば:
まず前提として、今の生成AIのデータ収集における著作権侵害の問題などは一旦置いておいて、表現の観点のみでお話ししますね。

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