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『光が死んだ夏』とんでもない“恐怖”×苦しいほどの“萌え”。アニメ放送前にその異質な魅力をBLオタクが紹介する

2025年7月5日(土)より、アニメ『光が死んだ夏』の放送が開始されます。新進気鋭の作家・モクモクれんが手掛ける本作は、“青春ホラーBL”という独自ジャンルを確立し、原作漫画は現在までに200万部以上を売り上げる大ヒットを記録しています。

「次にくるマンガ大賞2022」では、海外での人気を象徴するGlobal特別賞【繁体字】を受賞。さらに、舞台化も決定するなど、近年主流になりつつあるBLジャンルの中でも、その異質な魅力で際立った存在感を放っている本作。

アニメ放送を目前に控え、今回はこの夏必見の話題作『光が死んだ夏』。「怖さ」と「萌え」が融合した新感覚BLの見どころをいま改めてご紹介します。
※記事の性質上、原作の内容に触れています。

TVアニメ『光が死んだ夏』公式サイトより

BL界トップクラス! あ、ガチのホラーなんだ…と驚愕する恐怖描写


原作漫画『光が死んだ夏』はWeb媒体「ヤングエースUP」で連載中。あらすじは以下の通り。

田舎町で暮らす少年・よしきは、とある事件をきっかけに親友の光の中身が“別のナニカ”にすり替わってしまったことに気付く。見た目は光と瓜二つでありながら、人間離れした能力や奇妙な言動を見せる「ヒカル」。失われた本物の光への執着と、目の前のヒカルへの愛情の間で葛藤するよしき。二人の奇妙で共同生活を描く。

『光が死んだ夏』1巻(KADOKAWA)

同作の魅力のひとつは圧倒的なホラー描写。「BL×ホラー」という作品は今や珍しいわけではないですが、『光と死んだ夏』のホラー描写はダントツ「怖い」のです。

主人公・よしき達が暮らす田舎町には触れてはいけない禁忌があり、ヒカルの出現によってその均衡が崩壊。怪奇現象がゆっくりと日常を覆っていく様がめちゃくちゃ不穏。反射的に驚かせるような“ジャンプスケア”的な演出ではなく、じわじわと追い詰めてくる恐怖。

作中では理不尽な呪いによって村人が次々と命を落としたり、異形の化物たちが容赦なく登場。「ホラーと言いながらも、まあBL漫画だしな……」と侮っていると、極限まで研ぎ澄まされたホラー描写に痛い目を見ます。
個人的にはいち早くヒカルの正体に気付いた人が速攻で殺された瞬間に「あ、コレはガチのホラー漫画なんだ……」と驚愕しました。

『光が死んだ夏』2巻(KADOKAWA)

「集落に根付く古いしきたりが怪異を巻き起こす」という、ホラー界隈で流行りのいわゆる「因習村」系の要素もたっぷり含まれています。ストーリー自体も伏線が幾重にも張り巡らされていて、謎解き要素も豊富で村の謎などについて考察するのも楽しい。

アンテナをビンビンに張り詰めて、作中に散りばめられた謎を解き明かすカギを拾って読み進めるのもアリです。BLに馴染みがないけれど、ホラー好きという方にもおすすめしたい作品です。


ヒカルとよしき、ふたりの関係は「激重な恋」そのもの


…と、BL初心者におすすめとは言ったものの、BLとしても濃度高く楽しめるのが本作。
性的描写や甘い恋愛表現などはほぼないので、一見ブロマンス的な漫画に見えるかもしれません。ですが、よしきとヒカルの唯一無二の絆を感じる関係性は「激重な愛」そのもの。「愛」という表現が正しいのか分からないほど、大きな感情をお互いに向けあっているのです。

小説『光が死んだ夏』1巻 特装版(KADOKAWA)

ヒカルが偽物だと気付いたよしきは、恐怖と絶望にのまれながらも「どちらにせも光はもうおらんのや……それやったらニセモンでもそばにいてほしい」と願ってしまう。

ヒカルはヒカルで、化物である自分を苦しみながらも理解しようとしてくれるよしきに「めっちゃ大好き」と好意を寄せる。本物の光がくれなかった「好き」という言葉をくれるヒカルに、よしきも共依存に陥ってしまいます。

お互いが何事にも変えがたい存在だからこそ、何を犠牲にしても隣にいることを選ぶ。そんな二人の存在こそが尊い……!

小説『光が死んだ夏』2巻 特装版(KADOKAWA)

また、「これは性的描写より濃いのでは?」というような二人ならではの表現も必見。作中では、ヒカルが自分の肉体を割いてよしきの手を体内に取り込み、“自分の核の部分”に触れさせる衝撃的なシーンが存在します。

しかもヒカルは自分の核の半分をよしきに渡したりして、もう愛が激重。いちBLラバーとしては、「え~! これって、性描写とかより濃密なシーンなのかも!」とテンションが上がります。ぜひ見てほしい名シーンです。


怪異側のヒカルも愛しい。苦しい葛藤や悩む姿に涙してしまう


よしき、ヒカルのどちらの心理描写も繊細で「大切な親友が未知のものになってしまった」側と、「人間に焦がれてしまった未知のもの」側のどちらにも感情移入できるのもポイント。

読む前は怪異側のヒカルに読者が寄り添うのは難しいように思えますが、そこは心理描写にも定評があるモクモクれん先生。ヒカルがよしきの傍にいるために思い悩む姿が愛しくて、「幸せになってほしい」と何度涙したか分かりません。

『光が死んだ夏』7巻 ラバーストラップ付き限定版(KADOKAWA)

二人は作中で「好きとは何か」「タブーを超えても相手が愛しい」のような障害について悩みながらも、ずっと一緒にいるために村の禁忌の解明に挑んでいきます。恋愛とホラーの要素が絶妙に絡み合っていて、読者は両局面でずっとハラハラさせられっぱなしです。

また、ストーリーの合間に挟まる二人の“普通の高校生生活”が垣間見えるのも萌え。本編とのギャップで、より可愛く思えます。変顔をやりあったり、「絶対転ぶ」との噂を確かめてみたり、「青春BL」の要素も散りばめられていて、その緩急も最高です。

性描写が少ないのでBL初心者も読みやすいですが、ヘビーなBLが好みの「BL玄人」の方にもブッ刺さるのではないかと思います。
苦しくなるくらいの葛藤やそれでもお互いにひかれている感情が丁寧に描かれており、むしろBL玄人になればなるほど、「『光の死んだ夏』は濃厚なBLだ!」と叫びたくなるほど、静かながらも確かな熱量が込められた作品なのです。


PVから伝わる名作アニメ感!温度感が伝わるクオリティに期待大


そんな新感覚BL『光の死んだ夏』ですが、実はアニメ化にあたり不安な声もちらほら。原作の画力が圧倒的かつ独特な雰囲気が魅力なので、「アニメ化することで見劣りしてしまうのでは?」と心配するファンもSNS上で見られました。

筆者的にも、「あの独特なエモくて陰鬱な雰囲気は、アニメでは再現が難しいのだろうな〜」と謎の上から目線で侮っていました。ですが、PVが解禁されて衝撃。ちょっとレトロな色彩は原作に忠実で、効果音や差し込まれるダークな映像などアニメならではの技術もあいまってクオリティが高い。

ホラー大好きな筆者でも夜見ると「ヒャ~!」となるほど怖くてエモい。原作の良さを活かしながらアニメにしかできない表現の数々に、期待度が爆上がりです。第一弾のPVには抱擁シーンが盛り込まれているが、BL漫画史上一番不穏なハグ。だがこれもアニメを一話でも見れば、とんでもない「愛のシーン」だと分かることでしょう。

現在公開中のPVには、ファンの人も「漫画の美麗な描き込み具合が表現されていて嬉しい」「見てるだけで湿度が感じられるようなクオリティ」と大絶賛。

さらに、OP主題歌はVaundy、EDはTOOBOEと今を時めくアーティストが担当。楽曲制作に当たって原作を読み込んだとのことで、アニメに新たな深みを加わえてくれています。

原作も最高ですが、アニメもきっとこれからBL史、いや漫画史に残る名作になる可能性を感じさせる『光が死んだ夏。暑ささえもスパイスになるような、夏の夜にこそ見てほしい作品です。

唯一無二のストーリーがとにかく面白い本作。ホラー好きでもBL好きでも、是非『光が死んだ夏』を一読、もしくはこれから放映されるアニメにぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。

(執筆:住岡)

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