「会いにKiTE!」「じゃぱかわんだほ~」…作曲家・めだんし、AI時代における音楽の価値を問う「感情やストーリーが乗らないものは単なる音に過ぎない」
「アナタの推しを深く知れる場所」として、さまざまな角度で推しの新たな一面にスポットを当てているnumanによる連載企画『AI時代を生き抜く、“沼”クリエイターの流儀』。第一線で活躍しているクリエイターの方々をお迎えし、制作におけるこだわりや、AI時代においても失われることのない“人間ならではの創作の意義”を深掘りします。
今回お話を伺ったのは、SNSで話題のiLiFE!「会いにKiTE!」や#らぶしっく「愛されフェイスでありたい」、パンダドラゴン「じゃぱかわんだほ~」など数々のアイドル楽曲を手がける音楽クリエイター・めだんし(Medansy)Mr.

アイドル文化特有のコールや口上を取り入れた、いわゆる“オタクに刺さる”楽曲は一度聞いたら中毒になること間違いなし。自身のYouTubeチャンネルに上げたオリジナルソング「可変三連MIXをおぼえるうた」は現在50万回再生を突破するなど、提供曲だけでなく自身の曲でも注目を集めています。
そのクリエイティブの裏側を紐解くと、音楽とは無縁の会社員生活から始まったという意外なキャリアや、自身もアイドルを応援していたからこそ分かる「ファンの感情にリンクする楽曲」の制作裏が明らかになりました。
さらに後半の有料パートでは、生成AIが発展する現代において「人間が音楽を作り続ける意味」を深掘り。AIが生み出す作品に対して抱く率直な想いを語りつつ、「感情やストーリーが乗らないものは単なる『音』に過ぎない」と力強く語るめだんしさんの言葉は、音楽の世界で生きるすべてのクリエイターに勇気を与えてくれるはずです。
<プロフィール>
めだんし/Medansy
音楽クリエイターであり、“圧倒的沸き曲メーカーオタク”。「iLiFE!」や「#らぶしっく」、「パンダドラゴン」、「FES☆TIVE」などのアイドルグループを始め、ホロライブ・にじさんじ所属のVTuber、歌い手などへの楽曲提供を中心に活動。■公式X/YouTube
何となく作った曲がバズり、一度は諦めた音楽の道へ
――まずは、クリエイターとしてのこれまでの歩みについて伺います。音楽に最初に触れたきっかけは何だったのでしょうか。
めだんし:
母親が実家でピアノ教室を開いていた影響で、幼い頃からピアノやヴァイオリン、チェロといったクラシック楽器を習い、常に音楽に囲まれる生活を送っていました。ただ、仕事として意識し始めたのは、学生時代のバンド活動がきっかけです。
大学生の頃はコピーバンドだけでなくオリジナル曲も作って演奏していたのですが、とある有名なバンドが地元のライブハウスに来た際、何度かオープニングアクトに出演させていただいたことがあって。そこで、「音楽で生計を立てている人たちはかっこいいな」と漠然と憧れを抱いたのが、音楽家としての出発点でした。
ただ、バンドだけで食べていくのは難しいと理解していたので、憧れはありつつも「現実は厳しいのかも」と冷静に見ている自分もいて。半ば言い聞かせるように、大学卒業後は一般企業への就職を選んだのです。
――就職したのは、音楽と関係のある企業だったのでしょうか?
めだんし:
いえ、まったく関係のない会社です。上司や先輩も良い方々ばかりだったのですが、どうしても心が満たされず、根底では「自分はやはり音楽が好きなんだな」と悶々とする日々を過ごしていましたね。
そんなとき、とある声優アイドルさんのライブに行ったことをきっかけにアイドルオタクになりました。学生の頃は2次元コンテンツにのめり込んでいたのですが、アニメ作品に紐づく声優さんのライブは観に行ったことがなくて。会社員になって初めて行ったら、すっかり魅了されてしまったんです。ちょうどモヤモヤしていた時期だったので、ライブのすさまじい熱量に圧倒されたのもあると思います。
当時特にハマっていたのが、某アイドルアニメから誕生した女性声優グループでした。ダンスや見せ方のクオリティがほかとは一線を画している気がして、衝撃を受けたのを覚えています。そこからさまざまなライブアイドルに興味を持ち、対バンや音楽フェスなどに足繫く通うようになりました。
――ライブの熱量に感銘を受けたことが、現在の活動につながるのですね。そんな会社員時代から、プロの音楽クリエイターとして活動を始めたきっかけは?
めだんし:
会社員時代も趣味として同人音楽を作っていたのですが、プロとして活動を始めたきっかけは、ありがたいことに「可変三連MIXをおぼえるうた」という楽曲がバズったことでした。
可変三連mixをおぼえるうた
— めだんし/Medansy (@medansy0125) February 7, 2026
of
本家 pic.twitter.com/r5DYm7cq1M
当時の僕は、日常の何気ない出来事を歌詞にして歌うことにハマっていて。例えば「歯磨き粉が切れちゃった」みたいな“あるある”を10秒ほどのメロディに乗せ、アコースティックギターで弾き語りしていたのですが(笑)、ちょうどその頃「可変3連MIX(※)」というコールがアイドルのライブで流行り始めた時期でもありました。なので、ある日「可変三連MIXをおぼえるうた」を弾き語りした動画を何となくX(当時のTwitter)にアップしてみたら、フォロワーのオタク友達がすごく面白がってくれて。それが思いのほか拡散されたのを見て、「もしかしたら音楽でやっていけるのではないか」と考えるようになったんです。
※「可変3連MIX」…アイドル現場でよく使われるコールの一つで、「人造ファイヤファイボワイパー」から始まる16小節のことを指す
実際に、その曲をきっかけに僕のことを知ってくれたセルフプロデュース系のアイドルさんや同人の歌い手さんから直接お仕事をいただくようになり、やがてアイドル事務所からも楽曲制作の依頼が舞い込むようにもなりました。
アイドル事務所に関しては、もともとほかの作曲家さんのお手伝いや、ライブ演出用のBGMなどを制作するといった裏方の仕事をしていた時期があったので、そのご縁から「作曲もできるなら、オリジナル曲も作ってほしい」と依頼をいただくことが多かったですね。
ライブで刺さるのは「率直で飾らない歌詞」
――クライアントからは普段どのような依頼を受け、制作していくことが多いのでしょうか?
めだんし:
いわゆる「リファレンス楽曲」と呼ばれる、ほかのアイドルさんの楽曲などを何曲か提示していただき、「こういう雰囲気の曲にしたい」というイメージを共有していただくパターンがほとんどです。
その中で、例えば「『病院』や『ナース』をテーマにアイドル楽曲を作ってほしい」といった明確なテーマをいただいたら、そのグループのカラーに合わせて、自分らしい言葉遊びなどのアイデアを加えて作り上げていきます。
――#らぶしっくの「すきっちゅおぺれーちょん!」やパンダドラゴン「じゃぱかわんだほ~」など、めだんしさんが制作した楽曲はワードセンスも秀逸です。“オタクに刺さる”楽曲を作る上で、特に意識していることは?
めだんし:
タイトルや歌詞を考える際に、大きく2つのことを意識しています。1つ目は、「オタクの目線を絶対に忘れない」こと。僕自身がアイドルをはじめ、アニメなど多様なカルチャーのオタクをしてきた経験があるので、「ファンはこういう言葉を使う」という肌感覚が身についているんです。男性向け、女性向け、あるいはVTuberやアニメなど、ファン層によって考え方や言葉遣いは微妙に異なりますが、それぞれに合わせたワードを取り入れることは常に意識しています。
2つ目は、歌詞であっても「気取った言葉にならないようにする」こと。あくまでSNSでふとつぶやくような、日常的な温度感の言葉遣いを心がけるようにしています。
――響きが美しい言葉よりも、あえて日常的な言葉を選ぶのには何か理由があるのでしょうか?
めだんし:
バラードなど、聴き手の感動を誘うような曲であれば話は別ですが、僕がよくいただくオーダーは「楽しくてみんなで盛り上がれる曲」が多くて。そうした曲だと、変にカッコつけたり、言葉を綺麗にしすぎたりすると、聴く人と歌う人との感情が離れてしまう気がするんです。
綺麗に整えられた言葉は、歌う側からすれば気持ちよく、美しい自分を見せられるかもしれませんが、聴いている側がそこに深く共感できるかというと、実はそうでもない。
例えば、「会いたい」「好き」という気持ちを詩的に表現したとしたら、確かに響きとしては良いかもしれませんが、僕としては「次に会うまでに待ちきれないから、今から君に会いに行ってもいい?」といった素直な感情をそのまま歌詞にするほうが、心に刺さりやすいと思うんですよね。特にライブの最中って、自分もオタクなので分かるのですが、熱狂していると“思考停止”状態に近いので、飾らない言葉のほうが伝わるのではと考えています。
めだんし:
特に日本のアイドルさんは、K-POPなどの海外アーティストのように“完成されたものを見せる”ことだけが求められるわけではなく、“欠けている部分も含めて好きになってもらい、一緒に成長していく”というストーリー性が好まれる傾向がありますよね。だからこそ、そうした率直な言葉のほうが求められるのだと思います。
サビ以外にも“外し”を効かせ、SNSで愛される楽曲へ
――TikTokでは、楽曲が「音源」として拡散されることも多いです。SNSでも愛される曲を作るために、どのような工夫をしていますか?
めだんし:
現代において、TikTokなどのSNSで受け入れられるかどうかは避けられないテーマであり、「2秒で視聴者の心を掴めるか」どうかが勝負になります。ただ、「TikTokでの反響を狙いつつ、ライブで披露したときにコールで盛り上がるサビにしたい」という要望を満たそうとすると、どうしても構成が似てしまうんですよね。
なので、楽曲ごとに違いを出すという意味でも、AメロやBメロ、そしてイントロなどにも“外し”の効いたフレーズやメロディを組み込み、サビ以外のパートもTikTokの音源として使えるよう工夫をしています。
@info__paragon 4月30日に発売する新曲【じゃぱかわんだほ〜】です‼️ みんなも踊ってね🕺🏻✨ #じゃぱかわんだほー #パンダドラゴン #パラゴン #じゃぱかわ
♬ じゃぱかわんだほー - 🐼パンダドラゴン🐲
――おっしゃる通り、めだんしさんが携わった楽曲は複数のパートがTikTokでバズっている印象があります。SNSのトレンドを掴むためのインプットは、日頃どのように行っているのでしょうか?
めだんし:
TikTokは常にチェックしていますね。ただ、TikTokはユーザーの好みに合わせて動画がレコメンドされる仕組みなので、リサーチ専用のサブアカウントをいくつか作成して、なるべく幅広いジャンルのトレンドを把握できるようにしています。
また、PC作業中にYouTuberやVTuberの方々の配信を流すのも日課です。特にVTuberの方々はインターネットのトレンドに対するアンテナが広く、情報のキャッチアップも早いため、雑談配信を観ていると流行っているワードなどが自然と耳に入ってくるんです。
それに加えて、配信でファンがどのようなコメントをしているのか、ファン同士がどのような言葉遣いでコミュニケーションを取っているのかもよくチェックしていますね。
――VTuberと言えば、めだんしさんは兎田ぺこらさんや白銀ノエルさんなどにも楽曲提供をされています。アイドルソングとそれ以外とでは、制作においてこだわるポイントは異なるのでしょうか。
めだんし:
僕の場合は「コールで盛り上がれる曲」というオーダーをいただくことが8~9割を占めるので、基本的なことは変わりません。ただ、VTuberさんや歌い手さんは「声」でファンの方々を魅了している側面があると思うので、セリフパートを取り入れたり、明るいだけでなくあえてダークな曲調も入れてみたりして、聴き手には多彩な声を楽しんでいただけるように工夫しています。
アイドルさんの場合は、どうしてもメンバーの卒業や加入がつきものなので、どんな体制になっても“グループの曲”として成立するような歌詞やメロディにしています。歌い手さんやVTuberさんなどの楽曲はそういった制約がなくなるので、思いっきりその方の個性にフォーカスした、キャラクターソング的な作り方をすることが多いですね。
感情が乗らない音楽は、ただの「音」でしかない
――ここからは、現在のクリエイター業界が直面している「生成AIとの向き合い方」についてお話を伺います。生成AIが急速に普及する中で、音楽領域での脅威は感じていらっしゃいますか?
めだんし:
音楽の分野においてはまだこれからの段階だとは思いますが、「時間の問題」だとも感じています。
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