なぜオタクは「尊い」と言ってしまうのか。語彙力を失う理由を聞いてみた【オタクの“あるある”を心理学で解説 #6】
偏愛カルチャーWEBマガジンとして、さまざまなコンテンツの魅力を届けているnuman。この度、オタクが推し活の中でなんとなく感じている“心の不思議”を紐解く新連載、「オタクの心理学~オタクの“あるある”を解き明かす~」をスタートします。
「なぜ推しに惹かれるのか?」「この感情の正体は何なのか?」――そんなオタクの心の内を、臨床心理士・公認心理師である二宮有輝先生の視点で紐解いていく本連載。今回は、推しに対して「尊い」と言ってしまう理由について聞きました。
自分でも気づかなかった感情の正体や心の仕組みを知ることで、毎日の推し活がさらに楽しく、味わい深いものになるはず!
<プロフィール>
二宮有輝(にのみや・ゆうき)
臨床心理士・公認心理師/名古屋市立大学大学院 人間文化研究科 講師。学生相談や公立中学校の常勤スクールカウンセラーでの勤務を経て現職。主に青年期の精神的健康およびwell-beingに関わる諸現象などについて研究を行っている。
「尊い」とは、ポジティブな感情が圧縮された結果である
――オタクは感情が高ぶると「尊い」しか言葉が出なくなり、語彙力が低下することがよくあります。これについて、心理学的な専門用語などはあるのでしょうか?
二宮有輝(以下、二宮):
明確な名称は思い浮かびませんが、心理学的には、感情が非常に強く高ぶっていて、それを言葉として整理する処理が追いついていない状態なのだと思います。
ただ、それは推し活に限らず、普段の生活でも起こり得ることですよね。すべての感情を言語化できるわけではなく、“何とも言えない気持ち”になることはよくあるはずです。 特に「尊い」という言葉になるときは、「好き」「かわいい」「かっこいい」「まぶしい」、あるいは「推しが生きていてくれてありがたい」といった様々な気持ちが一気に押し寄せて、それが圧縮された結果として「尊い」という一つの言葉になっているのだと思います。
――「尊い」とは、さまざまな感情が圧縮された結果なのですね。その中にはネガティブな要素も含まれているのでしょうか?
二宮:
「好きすぎてつらい」「まぶしすぎて苦しい」といった感情も含まれているかもしれませんが、それも言うならばポジティブなものですよね。ですので、「尊い」という言葉は、やはりポジティブの塊のようなイメージがあります。
――ポジティブな感情に限らず、ネガティブな感情が重なったときにも言葉が出なくなる状態は起こり得るのでしょうか?
二宮:
そうですね。ネガティブに関しても、感情が溢れると言葉が出てくる前に体のほうが先に反応してしまうことがあります。悲しくて胸がいっぱいになったり、言葉より先に涙が出たり、叫んだり、誰かに当たってしまったりしますよね。言葉や声が出なくなるということは、「尊い」というポジティブな感情以外にも、ネガティブな感情を強く抱いたときにも起こることなのです。
――本来「尊い」は神聖なものに対して使われる言葉ですが、なぜオタクは「好き」を超えた感情を表す際にこの言葉を選んでしまうのでしょうか?
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