
ドイツの「推し活」事情を調査! コスプレやイベント参加がメイン、アクスタやぬい撮影は恥ずかしい? 日本人オタクのマナーに感心する声も
自分の好きなアニメのキャラクターやアイドル、俳優など自分が夢中になっている対象「推し」、そんな推しを応援する活動「推し活」。空前の推し活ブームの日本では、いまやオタクだけの概念ではなく一般的にも広く使われるようになりました。
では、海外のオタクはどのように「推し活」をしているのでしょうか? オーストリア在住のオタクライターがドイツ語圏の推し活事情を【前後編】で調査。【後編】の今回は実際の海外オタクたちに「推し活」のアレコレをリサーチTo do.

⇒【前編】オタク女がドイツで「推し活」してみたら…グッズ予約に敗北し、イベント視聴できずショックで寝込んだ。痛バつくるのもめっちゃ大変!
※2024.11.26に公開した記事を一部編集のうえ、転載しています
「推し、推し活」の理解は約6割。初めて聞いたという人も
さて、【後編】では実際に周りのドイツ人やオーストリア人に聞いた推し活・推しに対する理解や日本の推し活の印象などについて紹介していきます。
筆者の調査では、推し活・推しという日本語や概念を知っている人が6割、知らない人が4割といったところ。今回の調査で「初めて聞いた」という方もいました。

概念を「知っている」と答えた人に推し活をどのように理解しているかも問いかけたところ、「自分の好きなスターやキャラクターに、プレゼントで愛情を表現すること」といった惜しい回答から「キャラクターやアイドルを応援する活動」とシンプルかつ的確な回答も見られました。
「推しはずっと心に残って特別だと感じる存在のことだと認識してるよ。実際に存在しないキャラクターであっても、強い繋がりを感じるんだよね。そしてすごく共感できるキャラクターに出会ったりすると、コスプレで演じてみたくなったり、絵を描いてみたり、音楽を聴いたりといった欲求が出てくるんだ。キャラクターとその世界を知るのは楽しいよね」(29歳/男性)
「言葉は知らなかったけど、私には応援している人がいて(初音ミクとアンティック-珈琲店-のボーカル)、そのために彼らのCDを買ったりグッズを買ったり、定期的にライブを見たりしてるよ」(性別非公開/33歳)
「実際の日常でも使われている言葉だよね。推しに執着することで精神面で支えられることもあれば、実際の人間関係が希薄になることもある。アイドルはその側面を上手く利用して、長年ビジネスで活かしているんだよね」(40歳/男性)
アニメファンであれば、日本語を知る機会は恐らくアニメからがほとんどでしょう。よく考えてみると、「推し」は聞いたことがあっても「推し活」は実際アニメでもあまり聞かない言葉なのかもしれません。
例えば最近話題の作品『推しの子』は海外でも『Oshi no Ko』というタイトルで知られていますが、作中で「推し」という言葉は出てきても「推し活」という言葉は(筆者の覚えている限り)出てきていないはずです。
海外で「推しグッズと撮影」はちょっと恥ずかしい?
次に、推しがいると答えた人に「どんな推し活をしたことがあるか」を聞いてみました。
基本的には「グッズを買う」「ライブやイベントに足を運ぶ」「コスプレをする」という回答がほとんど。一般的に日本で代表的な推し活として考えられる活動と何ら変わらないようです。

「『ONE PIECE』のモンキー・D・ルフィが私にとってすごく特別な推しだよ。私の人生を導いてくれる存在で、作品を読んだり見たりすることは私にとってすごく意味のあることなんだ。
他にも好きなキャラクターはいるけど、ルフィは別格なんだ。 推し活ではコスプレやグッズの購入、アニソンの視聴やイベントの訪問はもう何年も定期的にやってるよ。最近はHATSUNE MIKU EXPOに行ってライブを見たりグッズを買ったりして楽しんだよ」(29歳/男性)
「私の推しは『呪術廻戦』の五条悟、『BLEACH』の黒崎一護、『ハイキュー!!』の影山飛雄。バンドだとSPYAIR、ONE OK ROCK、Eveが好きかな。推し活だとぬいやフィギュアとかのグッズを買ったり、推しキャラクターのコスプレをしたりしてるね。
今年のフランクフルトのイベントでは影山飛雄のコスプレをしたよ。ほかにも『鬼滅の刃』の竈門禰豆子と『文豪ストレイドッグス』の中原中也のコスプレもしたことがある。推しのバンドに関してはYouTubeやTikTokで追ってる。以前カッセルで開かれたアニメイベントでは春奈るなと佐咲紗花のライブを観たよ」(27歳/女性)
一方、日本だとかなり一般的となった「グッズとカフェなどで写真を撮る」という回答はほぼありませんでした。コラボカフェや推し活カフェがなくても、グッズを持って行ってレストランやカフェで写真を撮ることは物理的には可能では、と思う方もいるでしょう。
しかし、アニメファンではないドイツ・オーストリアの人にとってアニメや漫画はいまだ子ども向けのコンテンツ。普通のぬいぐるみでさえも、持っている大人は少ないと聞きます。そんななかで推しグッズやぬいを出して撮影するのは、かなり勇気のいることなのかもしれません。
オタクのマナーにびっくり!「礼儀正しさは驚くべきもの」
また、日本の「推し活」という概念を知っている人に、印象的だったことや驚いたことについて聞いてみました。
よく見られたのはコラボカフェやコンセプトカフェについての回答。やはりコラボカフェ系は日本独特の文化だと実感。しかし、筆者が住んでいるオーストリアには伝統的でかわいいカフェがたくさんあるので、コラボカフェとはまた違った楽しみ方が出来ると思います。ただ前述した通り白い目で見られるし、まぁそういうことではない……ってことですね。

回答のなかには「最近の日本の推し活は近代化しすぎ。昔のように、喜んで人との接触を図るべきだと思う」というモノも。
本人がバンドが好き、友人がアイドル好きだという方の回答のため、オンラインイベントを指しての感想のようです。また、推し活中の日本人の態度に感銘を受けたという回答も。
「日本はキャラクターとの繋がりが私たちの国よりも一般的だよね。こっちだとアニメ・漫画界隈でもその辺りを理解していない人もいるから。あと日本だとキャラクターや作品の愛着を深めるためのイベントや特別なカフェがあって、それを満喫できることに感銘を受けたよ」(29歳/男性)
「アニメ関連のカフェがすごく印象に残っているよ。アニメに関連したテーマパークとか鳥取砂丘コナン空港もすごく面白いよね」(27歳/女性)
「コンサート中の日本人の礼儀正しさは驚くべきもので、押したり押されたりすることがない。バンドメンバーが観客席に向かって投げたものに対してじゃんけんが行われるのもすごいね」(33歳/男性)
ドイツ人オタクにインタビュー! コスプレ写真も美しい
今回筆者は記事の調査のなかで、一人のアニメファンのドイツ人女性・ロキさんと知り合いました。話を聞いてみたところ、かなり熱心なオタクであることが判明! せっかくなので根掘り葉掘り聞いてみました。
――ロキさんの推しや好きなアニメは何ですか?
セーラームーンからオタクになったんですが、今は特に『ドラゴンボール』と『ONE PIECE』が熱いです! 私の魂に潤いを与えてくれる作品です! 『ONE PIECE』ではトラファルガー・ローとユースタス・キッドが私の推しなんですが、いいキャラが多すぎて正直決めるのが難しいです。あと、『僕のヒーローアカデミア』と『SPY×FAMILY』にもハマっています。
――ロキさんの推し活について教えてください。
私は25年以上前からアニメが大好きなんですが、数年前からグッズとフィギュアを飾るオタク部屋を2部屋作りました! コスプレもするし、漫画や同人誌も読みます。時々、推しの誕生日を祝うこともあります。あんまり上手くないけど絵も書いたり、推しグッズと一緒にレストランや買い物に行ったり……。

――わぁ、本当にたくさんグッズを持っているんですね! すごい! どこで手に入れているんでしょうか?
すべて日本の通販で購入しています。ドイツにはないグッズがたくさんあるので! 主にPlaza Japanやあみあみなど。フィギュアはドイツにも揃ってるんですが、キャラクターの誕生日グッズとか日本でも人気の色紙やタオル、缶バッジ、クリアファイル、アクリルスタンドなどは全然ないんです。メルカリやまんだらけで買うこともありますよ。
――ドイツの方がまんだらけを知っていることに驚きです!
まんだらけは私が欲しいものを探すときにいつも最初に見るサイトです!
――ちなみにあの……かなりの量のグッズを買われているようですが、推し活にかかる月々の出費っていくらぐらいか聞いてもいいでしょうか?
私はパートナーと一緒に推し活しているんですが、グッズを買ったり日本食を食べに行ったりなどで2人で月600~800ユーロくらい(現在のレートで約10万~13万円)でしょうか。実を言うと、ほぼすべてお金を推し活に費やしていて、それ以外の出費はほとんどありません。少し安く抑えられたときは、他のことに使ったりもしますけどね。
これまで一番高いと感じた買い物は缶バッジ55ユーロ(約9000円)かブランケット80ユーロ(13,000円)でしょうか。缶バッジは最近どんどん高くなっていて……缶バッジに50ユーロを払うドイツ人は普通いないでしょうね(笑)。私たちにとってアニメのグッズは本当に高いんです。

――アニメイベントに参加したこともありますか? ドイツのアニメイベントに日本の声優さんが来て、握手会などを開催することもあるみたいですが……。
イベントに参加したこともありますよ! AnimagiCとかHanami、Cosplay Daysとか。特にDoKomiは最高のイベントです! 同じ趣味の仲間を探しに行ってます。また同人誌はドイツではかなり珍しくて通販でも買えないんですが、イベントに行くと本当に時々売っているんです。
残念ながら日本の声優さんにお会いしたことはないですね。ドイツの声優さんだったらよくイベントで見かけるんですが。今年は山口勝平さんがドイツに来てくれて最高だったんですが、残念ながらお会いすることはできませんでした……。
「ドイツで“推し活”をするのは簡単じゃない」
――ちなみに「推し活」って言葉や概念は知っていましたか?
実は今回まで知りませんでした。でも日本人のアニメファンのインスタグラムを見ているため、いわゆる「推し活」として日本人がどんなことをしているのかは知っていました。
それを見て私もやってみたいと思って、それからカフェに行くのに推しのグッズを持って行ったり缶バッジをカバンに付けてみたり……痛バも作ってみたいと思ってます!
でもドイツで推し活をするのって正直あまり簡単じゃありません。周りには奇妙な目で見られるし、この前『ヒロアカ』の映画を観に行った時に父と遭遇したら「子ども向け映画を観たの?」と聞かれました……。

――ではドイツではロキさんのように推し活している人は少ないんでしょうか?
私の周りでは、グッズのコレクションだけをしている人がほとんどです。街中で時々アニメのシャツを着ている人も見かけますが、基本的にはアニメファンや漫画ファンであることを公にしたくないと思っている人が多い印象ですね。
――日本の推し活についてはインスタグラムでもご覧になっているようですが、印象的な日本の推し活や驚いた推し活などはありますか?
単純にまず、趣味やアニメ、キャラクター、バンドなどに注がれる愛情の深さにひたすら驚かされます! コンサートやカフェのほか、ドイツでは子ども向けだと思われている遊園地などでも推し活が楽しめて……日本人の情熱は本当にすごい!
ネットで見かける日本人は痛バを持って出かけたり、レストランやカフェで推しぬいと一緒にかわいいスイーツを楽しんだり……うらやましいです。
私も同じように推し活をしたいけど、周りの批判的な声や視線があって。私たちの街でManga-Mafiaという漫画ショップがオープンしたばかりの頃は、みんなおかしな目で見て通り過ぎて批判するだけで、すごく悲しかったのを覚えています。
私自身はまだ1度も日本に行ったことがないんですが、いつかぜひ行きたいですね。もし行けたら、驚きが止まらないと思います!
――ぜひ、いつか日本の推し活を満喫しに来てください。ありがとうございました!
推しを応援する気持ちは万国共通
ドイツ・オーストリアでは推し活という概念はなくても、日本のファンと同じように推しを出来る限りの推し活で応援しています。とはいえ、文化や考え方の違いから推し活の選択肢が広くないのも事実。
今回調査に協力してくださった方々でまだ日本に行ったことがない方には、ぜひ1度日本での推し活を体験してもらいたいものです。
(執筆:ヤマコシショウコ)
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