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【インタビュー】台湾BLドラマ『看見愛』キャスト&制作陣に聞く!「オーディションで全てがひっくり返った」撮影&制作秘話

10月23日(水)より日台同時配信中の台湾BLドラマ『看見愛(カンジエンアイ)~See Your Love』。 これまでnumanでも何度も取り上げてきた台湾BLドラマ『奇蹟』『正負之間~Plus & Minus』『Be Loved in House 約・定~I Do』の制作陣が再び手掛ける作品とあって、日本でも大注目のドラマの一つではないでしょうか。

聴覚障害を持つ青年、ジアン・シャオポン(姜紹朋)と、家族の愛を渇望する富豪の三代目、ヤン・ズーシアン(楊子翔)が徐々に心を通わせる恋模様と、御曹司に仕える優秀な秘書、チョン・フォンジエ(成豊桀)と、秘書を御曹司と間違えて狙う天然なおバカ不良、ワン・シンジア(王信家)の偶然と打算から発展する恋──2つのラブラインが展開され、毎週続きが気になってたまりません!

numanでは、姜紹朋を演じるジン・ユン(金雲)さん、楊子翔を演じるリン・ユー(林宇/ライデン・リン)さん、成豊桀を演じるリン・ジアヨウ(林家佑)さん、王信家を演じるリン・ヨンジエ(林詠傑/エドウィン・リン)さんの4人にインタビュー!
撮影時やオーディションでのエピソードや役作りについて伺いました。

さらに、本作の監督・チーフプロデューサーであるアニタ・ソン(宋鎵琳)さん、脚本とプロデューサーを兼任するリン・ペイユー(林珮瑜)さんにもインタビュー。 本当はシャオポン(紹朋)と、ズーシアン(子翔)の役柄は逆だった?など、制作秘話を大公開。

これからクライマックスに向けてどのような展開が待っているのでしょうか? 今からでもまだ間に合う!『看見愛』について、大ボリュームでお届けします!

※2024.12.23に公開した記事を一部編集のうえ、転載しています


『看見愛』の見どころは?「ベッドシーンをおすすめしたいです!(笑)」


写真左から、成豊桀を演じるリン・ジアヨウ(林家佑)さん、王信家を演じるリン・ヨンジエ(林詠傑/エドウィン・リン)さん、楊子翔を演じるリン・ユー(林宇/ライデン・リン)さん、姜紹朋を演じるジン・ユン(金雲)さん
写真左から、成豊桀を演じるリン・ジアヨウ(林家佑)さん、王信家を演じるリン・ヨンジエ(林詠傑/エドウィン・リン)さん、楊子翔を演じるリン・ユー(林宇/ライデン・リン)さん、姜紹朋を演じるジン・ユン(金雲)さん

──まずは、本作の魅力はどんなところだと思いますか? 見どころやぜひ注目して欲しいポイントをお聞かせください。

ジン・ユン(金雲):
怒りや好き、そして心配といった気持ちを手話で伝えるところに注目していただければと思います。ドラマを見ながら手話の勉強にもなるので、ぜひ一度ご覧いただけたら嬉しいです。

リン・ユー(林宇):
本作に登場するキャラクターには、それぞれに背景があり、問題を抱えています。でも彼らが自身の問題に直面したときは「こんな背景を持っているから、たぶんこうだろう、こう考えるべきだろう」と予想される対応ではなく、別の思考や対処をするんです。みんなそれぞれ別なんです。その点がすごくクールだな、と感じました。ぜひそういった点も気に留めていただけたらと思います。

リン・ジアヨウ(林家佑):
聞こえる人、聞こえない人との間でどのようにコミュニケーションをし関係を築くかについて、知らない方のほうが多いかと思います。私たちなりの方法でそれを表現しました。見る価値のあるドラマだと思います。

リン・ヨンジエ(林詠傑):
僕はベッドシーンをお勧めしたいです!はい! (4人大爆笑)

──本作では聴覚障害が描かれるにあたり、手話での演技など役作りも大変だったのではないでしょうか。殺し屋や敏腕秘書などそれぞれに個性が際立つキャラクターが描かれています。演じるにあたってどのように役作りをされましたか?

ジン・ユン(金雲):
まずは聴覚障害者関連の映画やドラマをたくさん見ました。
それからとても静かで閉鎖的な空間に長時間閉じこもって音のない環境に自分を置いてみたり、撮影中や待ち時間ではヘッドフォンをして静かな空間にしたりと、物理的にも姜紹朋になりきろうと努力しました。

リン・ユー(林宇):
姜紹朋は手話を通じて楊子翔とコミュニケーションをとり、楊子翔も後半から一部手話を用いて姜紹朋と会話をします。
つまり2人がコミュニケーションをとるためには、相手の手話をしっかりみて、そしてその意味をちゃんとキャッチしなければいけません。この点は、目から鱗でした。

というのも、台本でセリフは決まっていますし、相手役のセリフが終わったら、自分のセリフをしっかり伝えればいいと思っていたんです。相手役が何を伝えようとするのかなど、見ていませんでした。でもこういう演技のやりかたでは演技力の積み重ねができないんだと気づきました。

手話の要素があったことで、今回気づけたと思います。現場で監督からいただいた「相手の手話をよく見て理解し、そして自分の中に溶け込ませてから自分の感情を表現する」というアドバイスも今では完全に理解できています。

リン・ヨンジエ(林詠傑):
王信家は少しおバカな自称殺し屋です。彼を演じるにあたって、彼のおバカさの度合いをどう判断するか、どの程度愚かであるべきか、またはどれくらいならず者っぽくすべきなのか、その点が非常に難しかったです。ならず者に寄せすぎてもよくないですし、おバカすぎてもだらしなく見えてしまいます。

それで彼をもっと掘り下げてみました。台本から得た彼に関する情報をつなぎ合わせ、それから彼の背景、つまり彼の出身地や家族を追加し、彼が子どもの時から恐れていたことは何か、大人になるまで彼はどんな困難に遭ってきたのか、そして何が彼をどう変えたのか……。彼が生まれた時から現在に至るまでの人物像を作り、私が理解する彼を自分の表現方法で演じました。

リン・ジアヨウ(林家佑):
成豊桀は非常に有能な秘書です。人との距離をしっかり保っている人物なので、親しくなるにつれて感情の表現も変える必要があります。

姜紹朋とは仕事モードをどれくらい出せばいいのか、楊子翔との距離感はどれくらいか、そして物語が進むにつれてその度合いをどう調整すべきか、そこがこの役を研究するうえで一番難しく感じた部分です。なぜなら、彼は昼と夜とでまったく違うからです。昼……つまり仕事の時の彼は、掴みどころのない完璧で冷静な秘書で、誰とも一定の距離を置きます。

でも物語が進むにつれて、ほかのキャラクターとも親しくなっていき、仕事の時とは違うプライベートな一面も見せていきます。彼はまた、誰に対しても人当たりがよい八方美人なので、みんなにはそれぞれ違う自分を見せています。私はこの点を常に意識しつつ、すべての話数、すべてのシーンの前に時間をかけて彼について研究し、演技に取り入れました。

──本作に出演が決まったときはいかがでしたか。また、相手役への印象はどうでしたか?

ジン・ユン(金雲):
「まだいける」と最初に思いました。実は最初は楊子翔役でオーディションを受けていたんですね。その後、制作側との面談で姜紹朋役について聞かれ、「チャンスがあれば、紹朋役もぜひ挑戦してみたいです」と伝えました。

それから正式に配役が決まったときは「ああ、終わった!」「挑戦が始まるぞ!」と。 予想していなかったすごく大きな課題が目の前に現れたからです。 全力で頑張りました。気に入っていただけたら嬉しいです。

リン・ユー(林宇):
僕も同じで、オーディションで受けたのは楊子翔役ではありませんでした。 だから、楊子翔を演じると決まった時は自分が楊子翔のどこに似ているか分からず……もう、パニックになりました(笑)。

(全員・笑)

リン・ユー(林宇):
その時は本当に不安でした(笑)。 金雲への第一印象は、ちょっと近寄りがたいな……と。仕事の場だったので、服装もスタイリッシュな感じですごく輝いていました。それに背が高いでしょう?(※金雲さんは190センチ超の高身長!) もう彼に近づく勇気などありませんでした(笑)。

でも、本作の最終オーディションで再会して目が合った瞬間、最初のあのクールで近寄りがたい印象は打ち砕かれました。とても温かい人だろうなと感じました。 本当に仲良くなって互いに打ち解けたのは、撮影を通してですね。撮影が進むにつれて呼吸がぴったり合うようになってきたので、とても大事に思えます。

ジン・ユン(金雲):
林宇を初めて見たのは本作のオーディションの時です。あまり喋るタイプではないんだな、いつも笑顔で礼儀正しいなと思いました。 それから配役が決まり、撮影が終わった今ではすごく……うるさい子だなと思います(笑)

(全員爆笑)

ジン・ユン(金雲):
時々彼の口を塞ぎたくなります。本作の第1話みたいに、彼のおしゃべりを止めたい時があるんです(笑)。

リン・ユー(林宇):
あれ?そう? (ニヤリ)

ジン・ユン(金雲):
でも、時々彼はすごくかわいくて、愛されキャラですね。

リン・ヨンジエ(林詠傑):
僕もオーディションは楊子翔役で受けました。でもしばらく連絡がなかったので、落ちたと思っていたんです。その後もう一度来てほしいという話をいただき、王信家という役をもらいました。

実は2回目のオーディションで相手役として手伝ってくれたのは林宇だったんです。本当は金雲の予定だったようですが、席をはずしていたのでたまたま林宇が。

リン・ユー(林宇):
楊子翔もまだ分かっていないのに、成豊桀なんてもっと分からなかったから大変でしたよー!

(全員爆笑)

リン・ヨンジエ(林詠傑):
そう。めちゃくちゃでした(笑)。 合格を知った時はすごく緊張したけど、すぐに撮影が始まると聞いてすぐ台本読みや役作りに専念しました。

家佑の第一印象は、とても真面目だなと。台本を手にすごく緊張していたので。ちょっと近寄りがたい、話しかけにくい人なのかなとも思いました。でも今は、本音で話せる間柄です。

リン・ジアヨウ(林家佑):
最初にドラマの資料をもらったとき、成豊桀?なんて不思議な名前だろうと思いました。(※)

でも台本を読んだ後は、演じるのが楽しみになっていました。 『Be Loved in House 約・定~I Do』で私が演じた役の名前(慕囚良/ムー・チウリアン)もすごく変わっていたんです。ただその作品ではあまりキャラクターを見せられる機会がなかったので、今回の成豊桀役は、性格もよく似ているし、その時に披露できなかった演技も含めてやってみようと思いました。個人的にはとても満足しているキャラクターです。

ちょうどキム・スヒョンさんのドラマ『涙の女王(※2)』を観ていて、彼もヒロインの下で働く役だったので、勝手に親近感を覚えつつ、そういう頭の切れる仕事のできる役を演じることが楽しみでした。なので、オファーをもらった時は緊張よりも楽しみの気持ちの方が大きかったです。

詠傑は隣にいるだけで安心感を与えてくれて、まず優しい人だなと思いました。撮影を通じて一緒に過ごす時間は増えましたが、そうですね……第一印象から変わらず、とてもいい人ですね。彼の外見から受ける第一印象と、実際の性格はすごく似ているかも。

※「成豊桀」…もともとは成丰桀。台湾ではあまり使われない簡体字を使った珍しい名前なのだそう。逆に慕囚良の方はこれまた難しい名前らしく、日本名で例えると一(はじめ)さんと躑躅森(つつじもり)さんみたいな感じでしょうか(笑)。

※2『涙の女王』…韓国tvNにて2024年3月より放送されたドラマ。 財閥三代目の「デパート業界の女王」と田舎出身の「スーパーマーケットの王子」の夫婦を巡るロマンティックコメディ。

撮影時のエピソードは?

──オーディションやワークショップでの出来事やエピソードを教えてください。

リン・ユー(林宇):
最終オーディションでは、その時まで残った俳優達が一同に介して、演技指導の先生の指示に沿って演技をするというセッションがあったんです。僕は、金雲とは少し離れた場所に立っていましたが、先生から彼に向けて感情をむき出してほしいという指示があったので、そこで初めて彼と演技をすることができました。

1~7の数字だけを使って自分の感情を相手に表現するという内容だったのですが、僕は演技開始後すぐに涙が溢れて感情が爆発してしまいました。演技でこんな経験をしたのは人生でも初めてでした。言葉の制限があったので、手話で何かを伝える必要がある場合の状況と似ていて、このセッションでその感覚を深く感じられました。

ジン・ユン(金雲):
そうですね。僕もその時、林宇と合わせた演技がよかったので、その次のセッションからは無意識に林宇の方を向いていた気がします。磁場が合うとお互いを引きつけ合うのかもしれませんね。

──本作でも撮影前に合宿が行われたと伺いました。

リン・ジアヨウ(林家佑):
面白いのは、私たちの生活習慣が全く違うことです。(合宿の時は)いつも最初に起きるのは私でした。私が起きてみると……、

リン・ヨンジエ(林詠傑):
僕はまだ寝てる。

リン・ジアヨウ(林家佑):
そうそう。私には朝のルーティンがあるので、それらのルーティンが全部終わるころにちょうど彼が起きるんです。

詠傑は出かける前の支度が短いほうなので、そこからでも間に合っていました。部屋にはバスルームが一つしかなかったんですが、奪い合う必要もなくすごく相性がいい感じでしたね。全く異なる生活習慣を持つけど、お互い補っているというか、相性もよくて呼吸も合うなんてなかなか興味深いなと。

リン・ヨンジエ(林詠傑):
僕も同じです。みんなと一緒にスケジュールをこなすだけでも仲良くはなれますが、やはりこうして同じ空間で一緒に食べて、過ごすことで、違いや共通点に早く気付くし、互いへの理解も増える気がします。合宿の時は本当に素直にたくさん話し合いましたね。

──撮影時の思い出は? 印象に残っているエピソードがあったら教えてください。

ジン・ユン(金雲):
病院で涙を流すという非常に重いシーンを撮った日が印象に残っています。その日はたまたま自分の撮影シーンが多く、朝から泣いて、昼も泣いて、そして夜も泣き続けました。感情の消耗が激しく、自分が空っぽになってしまうんじゃないかと思うくらいでした。

でも、最後の泣くシーンを撮る時には、これで最後だと思うと幸せな気持ちになりました。こんな重いそして大事なシーンを演じ切ったという喜び、ちゃんと成し遂げたという嬉しさでいっぱいでした。いい思い出です。

大変だったのは、アドリブで演技をすることもあり、その場で手話をする必要があったことですね。手話の先生が毎日現場に来られるわけではなかったので、すぐに手話が合っているかどうかのチェックができず、その時は本当にプレッシャーを感じました。

リン・ユー(林宇):
最後のシーンの撮影はかなり時間がかかりました。屋外での撮影だったし夜だったので、僕の演技が決まらなければ、スタッフも含めてみんな帰宅できない、というプレッシャーもありました。何だか複雑な気持ちでした。

でも撮影が終わったら、彼ら3人が現れて、しかも金雲はケーキまで持っていたんです。すごく感動しました。大変だった気持ちが一掃されて本当に幸せを感じました。一番の思い出です。

リン・ヨンジエ(林詠傑):
オフィスでの撮影ですね。みんなは先に撮影を開始していて、僕はまだ撮影2日目だったんです。舞台しかやったことがなかったのでドラマ撮影に全く慣れていなくて。だから、ただ歩くだけでもその一歩一歩がことごとくカメラを邪魔していて、もう苦痛でした。

それからも立つ位置や動線を気にするあまり演技に集中できない、悪循環でしたね。その日は本当に落ち込みました。でもその日だけで、その後は順調でした。家佑がいろいろ教えてくれたんです。彼の助けでカメラの前でどのように動けばよいかが理解できました。失敗は成功の母ですね。

リン・ジアヨウ(林家佑):
自分の撮了日(すべての撮影を終えた日)が特に記憶に残っています。ケガをした楊子翔をお姫様抱っこするんですが、彼の「離して」という言葉に素直に手を放す……というシーンですね。(第1話)

撮影が終わったら、詠傑が花束を抱えて立っていました。金雲も林宇もその場にいて。その瞬間、すごくいい作品、そして自分が好きなキャラクターを演じきったという達成感が湧いてきました。ここいるみんなで一緒に成し遂げたという感激もありましたね。一方で、成豊桀を手放したくないという気持ちも強かったです。

一か月の撮影は長いと思ったこともありますが、何だかすごく短く感じました。楽しい現場でした。意見の衝突が起きる時もありましたが、それも作品のため、もっといい作品を作るためでしたね。本当に楽しかったし、あの日の感動は今も残っています。

──それでは最後に日本のファンに向けてメッセージをお願いします。

リン・ユー(林宇):
早く日本のみなさまと会いたいです。たくさん応援してください!

ジン・ユン(金雲):
ドラマを観ながら手話の勉強も真剣にお願いしますね。日本に行った時はテストしますよ?(笑)

リン・ヨンジエ(林詠傑):
私たちのこのドラマを通して、本当の愛と幸せを感じていただければ幸いです。

リン・ジアヨウ(林家佑):
このドラマが、私たちが積み重ねたこの愛がみなさんにも伝わりますように!

『看見愛』キャストインタビュー、いかがでしたか?
次ページからは、制作陣にインタビュー。 『看見愛』制作のきっかけや、競争が激しくなっているBLドラマ事情についても伺いました。

【制作陣に聞く】監督/アニタ・ソン(宋鎵琳)さん、脚本/リン・ペイユー(林珮瑜)さん

──「看見愛」は聴覚障害を扱っている点が大きなポイントだと思います。聴覚障害を描こうと思ったきっかけは?

アニタ・ソン(宋鎵琳):
2年前くらいかな。珮瑜と2人で話していて、障害がある人を取り上げるのはどうかというアイデアが出たんです。
珮瑜自身も右耳が聞こえないこと、また本作の監督の一人、ジアン・ビンチェン(姜秉辰)にも聴覚障害がある伯父がいて、本作の制作のきっかけになりました。 

監督・チーフプロデューサーを務めたアニタ・ソン(宋鎵琳)さん
監督・チーフプロデューサーを務めたアニタ・ソン(宋鎵琳)さん

リン・ペイユー(林珮瑜):
BLドラマではありますが、恋愛だけではないそれ以外のテーマも伝えたいと私達は考えています。そこで時間をかけて話し合い、本作のストーリーが作られました。

私たちが常に念頭に置いているのは、「愛があればどんな障害も超えられる」ということです。障害と言っても肉体的なものから社会的、精神的なものまで様々です。

今回聴力障害について調べていく中で、「聴こえない」ことを障害とするのではなく、手話を一つの言語と見立て「通じ合えない」障害を乗り越えていくという部分を描きたいと思いました。  

脚本とプロデューサーを務めたリン・ペイユー(林珮瑜)さん
脚本とプロデューサーを務めたリン・ペイユー(林珮瑜)さん

アニタ・ソン(宋鎵琳):
私たちが制作するBLドラマもそうですが、性別という障害、家族の障害、社会の障害、様々な障害を乗り越えるというストーリーは素晴らしいと思います。大好きな日本のドラマ『愛していると言ってくれ』や、珮瑜が脚本を担当したドラマ『幸せが聴こえる』もストーリーがとても面白いと感じました。(※)

聴こえない、見えないという要素があるからこそ、余計に登場人物はコミュニケーションを重ねる必要がある。そういった部分が話に深みを与えるのではないかなと。

※『愛していると言ってくれ』…1995年に放送された日本のテレビドラマ。聴覚障害者の画家と女優の卵が障害を乗り越えながら愛を深めるラブストーリー。2020年に再放送、2023年には韓国でリメイクされるなど、今でも評価の高い作品。

※『幸せが聴こえる』…(原題:聽見幸福)2015年に放送された台湾のテレビドラマ。事故で婚約者を失い、視覚障害を負ったファン・ジャンチェンとその下でヘルパーとして働くことになったチェン・ユーシーとのラブロマンスが描かれる。

──本作とバリアフリー演劇とのコラボについてもお話を伺いたいです。

アニタ・ソン(宋鎵琳):
制作にあたって聴力障害について調べていたのですが、その協力者に台湾の公共テレビの手話アナウンサーの方がいて。彼から聞いたエピソードを本作のストーリーにも取り入れています。

彼はこちらの唇の動きが読み取れるので、コミュニケーションにも支障がないんですね。 そこで彼に「台湾で何が一番不便ですか?」と尋ねたら、「舞台が観たい」と。一部の国では字幕付きの公演もありますが、台湾ではまだそれがない。

ちょうど友人が劇団をやっていたので、コラボしてみたら面白いのではと思いました。コラボの舞台(※)については、本作にも7話で少しだけ登場しているんですよ。

※…台湾の著名な劇団「曉劇場」とコラボを実現し、バリアフリー演劇「魚.貓」が今年10月に上演された。

本当は逆だった──オーディションで逆転したストーリー

──本作のキャスティングについてはいかがですか?

アニタ・ソン(宋鎵琳):
実は金雲も林宇も前作『奇蹟』のオーディションに参加していたんです。それから1年後、再び本作のオーディションで金雲が見せてくれた演技が素晴らしくて。思わず拍手を贈ったくらいだったんです。その場に居たプロデューサーたちもみんな「この一年何があったの?」と驚くほどでした。

彼はその時、楊子翔役で受けていたんです。その後、姜紹朋を演じてもらった時もすごく手話がキレイで感動しました。

リン・ペイユー(林珮瑜):
オーディションで金雲はどちらの役も上手く演じていました。
その時インスピレーションを感じたんですね。そもそも本作は、役柄を逆で考えていたんです。聴覚障害のあるキャラクターが愛される側でストーリーを描いていました。

でも金雲は背が高くて明るい印象があります。だから、逆にしてみたらよいのではないかと。聞こえるけれど心の弱さを抱えている人物、聞こえないけれども心の強い人物、というギャップを描いてみたいと思いました。

アニタ・ソン(宋鎵琳):
もう当時は結構ケンカしましたよ(笑)。 私は林宇がかっこいい御曹司のイメージにぴったりだと考えていて。 金雲と林宇、二人ともキャスティングしたい、でもそうすると受けがいないじゃない!って(笑)。

もう一度2人を呼んで確認した時に、攻めと受けを逆転すればいいのでは?となり……、

リン・ペイユー(林珮瑜):
結局全部の脚本を書き直すことになりました(笑)

撮影の2,3ヶ月前頃でしたね。 スポンサーもスタッフも、脚本にもう少し時間をかけたいという要望を叶えてくれてすごく感謝しています。

──林宇さんについてはいかがですか?

アニタ・ソン(宋鎵琳):
彼の第一印象は、すごく顔のキレイな男の子だな、と。とてもカッコいいけれどクールではなく、なんだか柔らかい感じを受けました。その柔らかさは、彼が人に対して細やかに気を使える気質だからこそ、かな。そういった繊細な部分が楊子翔と合うなと思いました。

……とはいっても、彼は姜紹朋役で受けていたのですが(笑)。

リン・ペイユー(林珮瑜):
再度脚本を書き直すにあたり、金雲と林宇が演じやすいようにそれぞれキャラクターも調整しました。当初予定していた姜紹朋と楊子翔に、金雲と林宇の要素が加わって、『看見愛』の姜紹朋と楊子翔になっていますね。

──サブCPを演じる、林家佑さんと林詠傑さんについては?

アニタ・ソン(宋鎵琳):
林家佑は、以前『Be Loved in House 約・定~I Do』に出演して、すごく素敵な俳優だなと。いつか彼をメインにしたドラマを作ってみたいなと思っていました。『奇蹟』の時も彼は最終選考まで残っていたのですが、上手くハマる役がなくて。

今回、彼の出演が決まったのはクランクインギリギリの頃だったのですが、彼のメガネ姿を見た途端「これだ!」と思いました。ドSっぽさが半端ない(笑)。もう運命ですね。

リン・ペイユー(林珮瑜):
林詠傑は、彼の純朴さが王信家にぴったりだなと思いました。田舎から出てきて、本当は気が小さいくせにわざと悪ぶってる感じ。彼のピュアな部分が、信家にすごく生かされているなと思います。

──林詠傑さんはドラマの撮影に慣れていなくて苦労したと仰っていましたが、その辺りはいかがでしたか?

アニタ・ソン(宋鎵琳):
彼は舞台中心に活動していたので演技は問題ないのですが、撮影はほぼ初めてだったんですね。やはりカメラがある分、ちょっと角度が違ったり、動線がズレたりするとNGになってしまいますから。 最初は撮影に時間がかかりましたが、後は家佑のサポートもあって順調に進みました。

ただ、撮影の時は家佑がサポートしてくれていることに私は全く気づいてなかったんですよ(笑)。あとから聞いて驚きましたし、感謝しています。

リン・ペイユー(林珮瑜):
ドSで腹黒な秘書ですが、心は温かいんです(笑)。

一番苦労した役者はスマホです!

──本作の制作で印象に残ったこと、苦労したことは?

アニタ・ソン(宋鎵琳):
今回、初めて映像監督を務めたことは大変勉強になりました。 本作では手話の演技がありますし、主演の二人はほぼ新人です。
金雲には手話を覚えてもらわないとならないし、林宇は金雲が話せない分だけセリフが増えることになります。だから撮影に入る前からとにかく時間をかけて彼らと一緒に練習しましたね。

二人の大事なシーンは舞台のように何度も何度も稽古をしたり。 本作では、いろいろなコミュニケーションの方法が出てきます。 手話だったり、携帯だったり、タブレットだったり、そしてもちろん口話もあります。

どうやってコミュニケーションするか、このシーンはどうやって作るか、みんなで話し合い、作り上げていきました。

リン・ペイユー(林珮瑜):
私にとっても2人の監督と一緒に制作することは初めての経験でした。映像制作に長けた姜秉辰監督、感情表現に長けた宋鎵琳監督と、2人の得意分野が上手く組み合わさったと思います。

私も舞台演出をやっているので、本作がまるで舞台制作かのように、みんなが一体となって演技を作り上げていけたことはとても幸せです。

アニタ・ソン(宋鎵琳): 撮影が始まって最初に苦労したのは、実は“スマホ”なんです。セリフを音声入力で画面に表示させなきゃいけないのに、上手く出てこない!って(笑)。

スタッフの声が入ってしまったり、予期せぬ画面になってしまったりね。最後はAIがちゃんと学習してくれて、完璧に音声入力ができるようになりましたが。

──BLドラマの制作は、最新のテクノロジーも使いこなせないとならないわけですね(笑)。 そもそも宋鎵琳さんが本作で監督を務められたきっかけは何だったのでしょうか?

アニタ・ソン(宋鎵琳):
これまでプロデューサーとして作品に携わる中でも、演出には関わっていました。例えばこれまでの全作品のベッドシーンの演出は私が担当しています。

編集する時に、「ああ、あの時撮っておけばよかった」という後悔を少しでも減らしたくて、それなら自分がやればいいのではないかと。学生時代は舞台演出を専攻していましたし、俳優たちと一緒に作品を作り上げていくことがすごく好きなんです。

──林珮瑜さんは『奇蹟』に続き脚本とプロデューサーを兼任されています。プロデューサーを務められるようになって何か変化はありましたか?

リン・ペイユー(林珮瑜):
一番大きな変化は、予算を考えるようになったことですね(笑)。 脚本だけを担当していたときには、予算は関係ないですから。もう自由。 なんだってアリです(笑)。

でもプロデューサーになると、制作の予算が見えてきます。ですから実現可能かどうかを脚本段階で考えるようになりましたね。とはいえ、制約がある中でも最大限よいものを目指していく部分は変わりません。

──宋鎵琳さん、林珮瑜さんのタッグは『隔離が終わったら会いませんか』『奇蹟』に続き三作目となります。これまで制作を続けてきて、BL作品に対する思いや環境の変化など感じたことはありますか?

アニタ・ソン(宋鎵琳):
やはり、多数の作品が出てきて競争が激しくなった実感はありますね。その分プレッシャーも感じます。

リン・ペイユー(林珮瑜):
たくさんの作品が制作されているので、もっと面白いテーマやストーリーを作らなくてはと思っています。アフターコロナという観点では、オフラインのイベントをどうするかも一つの課題だと感じています。やはりファンが求めている部分だと思いますし。

アニタ・ソン(宋鎵琳):
やはり『隔離が終わったら会いませんか』や『正負之間~Plus & Minus』の時期は、コロナ禍での制約がありました。『奇蹟』でようやく初めて、これまでの日常に戻れた、一般の制作と同じようにやれた、という実感があったんです。

そして今回、『看見愛』で私が強く感じたのは、結局ファンがかけられるお金はコロナに関係なく同じだということ。 外出の機会が増えてくれば、その分コンテンツにかける金額も減っていくでしょう?

それにいろいろな国のBL作品が増えて、観るものが多すぎる現状もあります。さらにBLだけでなくGLというジャンルも増えてきています。そういった中でオフラインイベントの面白さがとても大事になってくると思っています。

──確かにオフラインイベントの数も増えましたし、規模も拡大している傾向にありますね。チケット代も決して安くはありませんし。

リン・ペイユー(林珮瑜):
イベントも増えて競争が激しくなってきているので、もしかしたらこの先チケット代は落ち着いてくるのかもしれませんね(笑)。

──そうなると嬉しいです(笑)。

視聴者の予測を超えていきたい

──『奇蹟』に出演されたナット・チェン(陳柏文)さんは、『看見愛』では楊子翔の従兄弟・楊子誠を演じています。ほかにも「正負之間~Plus&Minus」に出演されたマット・リー(李見騰)さんなど、これまでのキャストによるゲスト出演も、ファンにとっては嬉しいサプライズですね。

アニタ・ソン(宋鎵琳):
これまでの作品に出演したキャストを登場させるのは、ひとえに彼らのまた別の姿を見たいからです。

リン・ペイユー(林珮瑜):
『奇蹟』でナットが演じたチェン・イー(陳毅)は、なかなかアイ・ディー(艾迪)の気持ちにも気づかない少し天然ぽさのある不良少年でした。今回は、彼の冷徹でサディステックな一面を見たいとこの役を入れました。

──この先の展開も楽しみです。

アニタ・ソン(宋鎵琳):
まだまだ言えないこともありますし、サプライズに関してはもう配信でご確認くださいとしか(笑)。

ですが、私たちはいつも、視聴者が予測できない展開を作りたいと願っています。これから先、どんなストーリーが待っているのか楽しみにしていてください。

──それでは最後に日本のファンに向けてメッセージをお願いします。

アニタ・ソン(宋鎵琳):
この数年で、BLというジャンルが一般的なものになってきました。もっともっとたくさんの方にBLを知ってほしい、観てほしい。そのために日本のファンのみなさんも一緒に頑張りましょう!

リン・ペイユー(林珮瑜):
ぜひ私たちと一緒に『看見愛』しましょう!今後の作品も応援してください。また日本で会えることを楽しみにしています! 日本でのイベント開催も、みなさんの熱いリクエストがあれば夢ではないかもしれません。ぜひ思いの丈をぶつけてください!

『看見愛(カンジエンアイ)~See Your Love』作品概要

僕は聞こえない。でも君の愛してるの声が見える—。

≪ストーリー≫
富豪の三代目として生まれ、台湾にビジネスのためにやってきた楊子翔。厳格な父と優秀な兄のプレッシャーが大きく孤独な青年で、唯一秘書の成豊桀だけに心を許している。街で突然暴漢に襲われたところを助けてくれた青年姜紹朋を雇い、自分の面倒を看させることにする。

姜紹朋には事故で耳が聴こえなくなり、就職に苦労していた。だが家族に愛されて育った姜紹朋は、楊子翔を疑いつつも、心配をさせまいと彼の仕事を受ける。成豊桀は、偶然出会った王信家に楊子翔と間違えられるが、彼が楊子翔を殺そうとしているのを知り、そのまま楊子翔になりすました。翌朝、酔って記憶のない王信家は、隣に寝ている成豊桀を見て驚き…。

【出演】
ジン・ユン(金雲)
リン・ユー(林宇)
リン・ジアヨウ(林家佑)
リン・ヨンジエ(林詠傑)

【チーフプロデューサー】アニタ・ソン(宋鎵琳)

【脚本/プロデューサー】リン・ペイユー(林珮瑜)

2024年/台湾/25分×13話
原題:看見愛

X公式アカウント:https://x.com/seeyourlove_ofc I
nstagram公式アカウント:https://www.instagram.com/seeyourlove2024/

【配信情報】毎週水曜日21時より最新話公開

*RakutenTV https://tv.rakuten.co.jp/content/490870/
*ビデオマーケット作品ページ https://www.videomarket.jp/title/41503J

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