
結局『プロセカ』ってなに? DECO*27やAyaseらが彩るユニットの魅力を音楽ライターが解説します|『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』
2020年にサービスが開始され、以来大勢が楽しむアプリゲームとなっている「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク」。リリース5年目となる今も10~20代の若年層から非常に熱い支持を得ており、ゲームをプレイしたことはなくとも存在は知っている、という人も多いはず。
また従来から人気の高かった音楽ジャンル・VOCALOIDを中心とした楽曲ラインナップの音ゲー(リズムゲーム)アプリという点も、人気の理由のひとつ。
そんなプロセカによる、ボカロコンテンツ初となる劇場版作品が今年初旬に公開。『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』は公開直後から多くのファンが映画館に足を運ぶ作品ともなり、2025年2月上旬には興行収入10億円を突破しています。

今回の話題をきっかけに、「プロセカってどんな物語なの?」「いろんな曲もあるんだよね?」と、改めてコンテンツに興味を持った人も多いはず。
そこで今回は劇場版の話題にあわせて、プロセカに登場する5ユニットとその人気曲を、ガチオタ兼約15年のミュージシャン歴も持つ音楽ライター・曽我美なつめがご紹介。“プロセカ沼”入門編として、楽曲やキャラたちの魅力を改めて解説いたします!
※2025.03.05に公開した記事を一部編集のうえ、転載しています
「誰かの思い」から生まれた空間に初音ミクらが存在
プロセカの舞台となるのは、今の私たちが暮らす現代の日本・東京とよく似た場所。この世界には、普通の音楽と同じかそれ以上に、VOCALOID音楽を愛する人々がたくさんいます。
加えて大きな特徴となるのは、「誰かの強い思い・願い」から生まれた“セカイ”という異次元空間is.

セカイにはそれぞれの空間に応じた格好をした、初音ミクほかバーチャルシンガーたちの姿も。そんなセカイと現実を行き来しながら日々を生きる、さまざまな高校生たちを主役とした物語を、プロセカは描いています。
元々ボカロシーンでは、“○○さん家のミク”というような、同じ名前でも姿形の違う初音ミクほかボカロたちが同時に存在する、マルチバースな世界観が常識でもあります(『刀剣乱舞』の“弊本丸”と似た考え方ですね)。
だからこそプロセカで各セカイのボカロたちが同時に存在し、かつ彼らが違う人物であるという考え方は、多くのファンに当たり前に受け入れられているのです。
Leo/need:じん(自然の敵P)Eveらの疾走感あるバンドサウンドが力強い
物語で活躍するのは、主に5つのユニットで活動する高校生たち。まず本作の主人公格ユニットとなるのが、4人組ガールズバンド・Leo/needです。メンバーは全員幼馴染ですが、様々な事情から過去にすれ違い、4人は一度それぞれ疎遠な関係性となっていました。

ですが「またみんなで仲良くしたい」「4人でバンドをしたい」という本当の思いから作られた“教室のセカイ”の初音ミクたちのサポートもあり、再度仲直りできた彼女たち。
同時にプロのバンドとして活動するという夢を掲げて走り始め、その目標も無事達成。今はプロデビューしたガールズバンドとして、厳しい音楽の世界で力をあわせて奮闘している最中ともなっています。
そんなLeo/needを象徴する音楽となるボカロ曲は、じん(自然の敵P)「ステラ」やOrangestar「霽れを待つ」、halyosy「Flyway」など。爽やかで煌びやかなバンドサウンドが印象的な曲が、数多く提供されています。カバー楽曲もn-buna「ウミユリ海底譚」やEve「ドラマツルギー」など、バンドで演奏する姿が思い浮かぶようなボカロ曲が多数ありますね。
今回の劇場版プロセカでそんなLeo/need曲として書き下ろされた「SToRY」は、作詞作曲をDECO*27、編曲をバンド・PENGUIN RESEARCHとしても活躍する堀江晶太(kemu)が担当。
疾走感あるソリッドなサウンドと、傷つくことを怖れながらも一歩を踏み出す人の背を力強く支えるような、大勢に勇気を与えるナンバーとなっています。
MORE MORE JUMP!:ナユタン星人やEasyPopを歌うキュートなアイドル♡
女性アイドルグループとして活躍するMORE MORE JUMP!も、キラキラした姿で勇気と癒しを与えてくれるユニットのひとつでしょう。アイドルを夢見る1人の少女をきっかけに、様々な事情を抱える女の子が集まったこのユニット。
メンバーの大半は元々、過去にアイドルの道を諦めたことのある面々です。

彼女らのアイドルへの強い思いから生まれた、“ステージのセカイ”の初音ミクたちの後押しもあり、縁あって集まった彼女らは再度アイドルユニットを結成。事務所などに所属しないフリーのグループとして、トップアイドルを目指すべく夢へと走り出したばかりになっています。
そんなMORE MORE JUMP!を象徴する人気曲には、ナユタン星人「モア!ジャンプ!モア!」や、Mitchie M「アイドル親衛隊」、ナナホシ管弦楽団「パラソルサイダー」などがありますね。
またEasyPop「ハッピーシンセサイザ」やdoriko「ロミオとシンデレラ」といった、ポップでキュートなボカロ曲カバーもアイドル像にぴったり!
劇場版プロセカでは書き下ろし曲として、作詞・作曲:DECO*27、編曲:いよわの「Fun!!」が登場します。一度大きな挫折を味わい、再スタートからアイドルの夢を追い続ける彼女たちの<失敗してもダメじゃない>という歌に、たくさんの希望をもらったファンも多いのではないでしょうか。
Vivid BAD SQUAD:Ayaseやキタニタツヤ×はるまきごはんらのダンサブルなナンバー!
さらにプロセカに登場するのは、かわいい女性キャラだけではありません。
かっこよくて魅力的な男性キャラもいるグループのひとつ、それがストリートユニット・Vivid BAD SQUADis.

元々は女子高生ユニット・ViVidsと、男子高生ユニット・BAD DOGSとしてそれぞれ活動していた彼ら。伝説のライブイベント・RAD WEEKENDを超えるステージを作りたい、という共通の目標のため、ライバル同士だった2組がタッグを組んだチームでもあります。
大勢の友人やライバル、そして夢への強い思いから生まれた“ストリートのセカイ”の初音ミクらの協力も得て、チームは晴れて“RAD WEEKEND超え”を成し遂げたばかり。ですがその活躍はまだ終わりません。彼らは世界を標榜するユニットへと目標をチェンジし、まだまだ高みへの挑戦を続けている道の途中なのです。
そんなVivid BAD SQUADの曲には、Ayase「シネマ」やChinozo「Flyer!」、キタニタツヤ×はるまきごはん「月光」など、ダンサブルかつ力強く背中を叩いて応援してくれるような、勢いのある人気ナンバーが満載! ぬゆり「フラジール」や柊マグネタイト「マーシャル・マキシマイザー」などもユニットカバーされており、こちらも必聴となっています。
劇場版プロセカで新たに書き下ろされた新曲「ファイアダンス」を手がけたのは、作詞・作曲:DECO*27。編曲はこれまでもたびたびユニット曲に関わってきたボカロP・Gigaが担当しています。不安や悩みを抱える人を「大丈夫!」とグッと引っぱってくれるような、パワフルでエネルギッシュな1曲ですね。
ワンダーランズ×ショータイム:ピノキオピーやみきとPらが飾るエンタメ性抜群なキャッチーさ
またエンターテインメント性抜群のショーユニット・ワンダーランズ×ショータイムも、男性メンバーの所属するユニットです。
作中のテーマパーク・フェニックスワンダーランドを中心に活躍する彼らは、舞台役者や演出家といった、ミュージカルやショーにまつわる夢を追う高校生で構成されたチームでもあります。

彼らのテーマパークやショーにかける強い思いから生まれたのが、“ワンダーランドのセカイ”。もちろんここにも、独自の初音ミクらバーチャルシンガーが存在しています。
元々はテーマパーク内の劇団として活動していた彼らですが、現在はそれぞれの夢のため、みんなでテーマパークを飛び出し各地で一緒に演劇・舞台の修行中。最終の目標地点こそ違えど、夢に向かう同じ熱量で共に切磋琢磨し続けているんです。
そんなワンダーランズ×ショータイムの曲で人気なのは、ピノキオピー「セカイはまだ始まってすらいない」、sasakure.UK「トンデモワンダーズ」、Neru「potatoになっていく」などの、ファンタジー色全開な音楽たち。またみきとP「いーあるふぁんくらぶ」やjon-YAKITORY「混沌ブギ」などのカバー曲では、ポップでキャッチーなユニットの魅力もたっぷり楽しめます。
そして劇場版プロセカの新規曲「スマイル*シンフォニー」は、彼らの真髄でもあるミュージカル色がしっかり詰め込まれたにぎやかな1曲となっています。
作詞・作曲担当であるDECO*27、そして編曲担当の煮ル果実といった実力派ボカロPの作風も、贅沢に楽しめる事間違いなし!ですよ。
25時、ナイトコードで。:syudouやツミキらのダークな唯一無二な世界観
最後に紹介するユニットは、25時、ナイトコードで。彼女らたちは全員が作詞、作曲、イラストといった別々の役割を担当し、4人で制作した曲をインターネット上に投稿する音楽サークルとして活動しています。
これまでのどのユニットに比べても、やや異色めいた雰囲気があるこのチーム。その理由は、メンバー全員が一人ひとり、家庭環境や自身の価値観などに様々な問題・コンプレックスといった負の感情、闇と呼べる一面を抱えているからでしょう。

彼女たちが行き来する“誰もいないセカイ”は、そんなメンバー皆に共通するマイナスの強い思いから生まれた場所でもありました。生きることに疲れた。もう誰にも会いたくない。このまま心を閉ざしてしまいたい。
悲痛な叫びや痛みを抱え、それでも互いにそれぞれの悲しみや苦しみにそっと寄り添いつつ、彼女たちは音楽を作り続けています。
25時、ナイトコードで。のユニット代表曲といえば、かいりきベア「バグ」にツミキ「キティ」、なきそ「化けの花」といった、ダークで重い雰囲気の音楽が特に印象的ですね。
syudou「ビターチョコデコレーション」、きくお「愛して愛して愛して」などのカバー曲ラインナップからも、彼女たちの唯一無二な世界観をきっと感じられるはず。
それでも劇場版プロセカで公開されたユニットの新曲「そこにある、光。」は、真っ暗な闇に差し込む一筋の光を体現したような音楽ともなりました。
DECO*27が作詞作曲を、すりぃが編曲を担当した今作。無理に明るく元気なテンションで人々を励ますのではなく、悲しみや辛さにそっと寄り添い、背中を撫でてくれるような、彼女たちらしい曲だと感じた人も多いのではないでしょうか。
どのチーム&キャラも魅力満載!推しユニットは見つかった?
今回ご紹介した個性豊かな5つのユニットと、それぞれのセカイのバーチャルシンガーたちによって紡がれるプロセカの物語。気になるユニットやキャラクター、あるいはボカロ曲などはありましたか?
「あの子かわいい!ちょっと気になるかも!」「この曲すごい、めっちゃおしゃれ!」
そう思うポイントがあった方はぜひ、まだまだ上映中の劇場版やアプリゲームなど、いろんな入口からプロセカの世界観に触れてみては。知れば知るほど魅力が増える、まさに“沼”なセカイがきっとあなたを待っています。
(執筆:曽我美なつめ)
『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』作品概要
・公開日
2025年1月17日(金)
・イントロダクション
原作は、音楽を中心としたサブカルチャーが盛んな街「シブヤ」と、人々の"本当の想い"が映し出された不思議な空間「セカイ」を舞台に、少年少女の"本当の想い"そして「自分の歌」を見つける物語を描き、「初音ミク」たちバーチャル・シンガーも登場するアプリゲーム「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」(略称:「プロセカ」)。
本作では、ゲームには登場していない新しい「初音ミク」が、「プロセカ」のキャラクター達と出会い、成長していく姿を、アニメーションスタジオP.A.WORKSにより完全オリジナルストーリーとして描かれます。
・あらすじ
CDショップで聴いたことのないミクの歌を耳にした星乃一歌。彼女はモニターに、見たことのない姿の”初音ミク”を見つけ、「ミク!?」と思わず声に出す。その声に驚いたミクは、一歌と目が合ったものの、ほどなくして消えてしまう。
後日、路上ライブを終えた一歌のスマホに、以前見かけたミクが姿を現す。寂しそうに俯くミクに、一歌はそっと話を聞いてみると、歌を届けたい人たちがいるのに、いくら歌っても、その歌が届かないという。ライブで多くの人の心に歌を届ける一歌の姿を見て、彼女のことを知れば自分も同じように出来るのではと考えたミクは、一歌のもとにやってきたのだった。ミクの願いに「私でよければ」と微笑みながら一歌は答え、初音ミクと少年少女たちの新たな物語が始まる―。
■STAFF
原作:セガ / Colorful Palette / クリプトン・フューチャー・メディア
監督:畑 博之
脚本:米内山 陽子
キャラクターデザイン/総作画監督:秋山 有希
サブキャラクターデザイン/総作画監督:辻 雅俊
プロップ設定:牧野 博美
美術監督:鈴木 くるみ
美術設定:塩澤 良憲
撮影監督:岩井 和也
色彩設計:手嶋 明美
CGIディレクター:小川 喬右 鈴木 晴輝
編集:髙橋 歩
音響監督:明田川 仁
音響効果:上野 励
音響制作:マジックカプセル
音楽:宝野 聡史
アニメーション制作:P.A.WORKS
配給:松竹
製作幹事:サイバーエージェント
製作:「劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク」製作委員会
■CAST
初音ミク:ORIGINAL CV BY 藤田 咲
鏡音リン・鏡音レン:ORIGINAL CV BY 下田 麻美
巡音ルカ:ORIGINAL CV BY 浅川 悠
MEIKO:ORIGINAL CV BY 拝郷 メイコ
KAITO:ORIGINAL CV BY 風雅 なおと
星乃 一歌:野口 瑠璃子
天馬 咲希:礒部 花凜
望月 穂波:上田 麗奈
日野森 志歩:中島 由貴
花里 みのり:小倉 唯
桐谷 遥:吉岡 茉祐
桃井 愛莉:降幡 愛
日野森 雫:本泉 莉奈
小豆沢 こはね:秋奈
白石 杏:鷲見 友美ジェナ
東雲 彰人:今井 文也
青柳 冬弥:伊東 健人
天馬 司:廣瀬 大介
鳳 えむ:木野 日菜
草薙 寧々:Machico
神代 類:土岐 隼一
宵崎 奏:楠木 ともり
朝比奈 まふゆ:田辺 留依
東雲 絵名:鈴木 みのり
暁山 瑞希:佐藤 日向
■公式サイト
https://sh-anime.shochiku.co.jp/pjsekai-movie
■公式X
https://x.com/pjsekai_movie
©「劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク」製作委員会
※「VOCALOID(ボーカロイド)」および「ボカロ」はヤマハ株式会社の登録商標です。
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