
劇場版『ベルサイユのばら』を原作オタクが観たら、豪華絢爛さに目が潰れそうだった。アンドレのオスみ、苦しむフェルゼンもメロすぎる~!
18世紀・革命期のフランスに生きる人々の愛と人生を鮮やかに描き、テレビアニメ版や宝塚歌劇団による舞台版も大ヒットした池田理代子の名作漫画『ベルサイユのばら』。誕生50周年を迎え、今回新たに新作として劇場アニメ化。
そんな本作を、自分のオタク道がここから始まったと言っても大げさでないほどの原作ファンでもあるベルばらオタクライターが拝見。この不屈の名作を駄作にしたら許せないぞ……とスクリーンを睨みつけてきました。その感想をレポートします!

※2025.02.11に公開した記事を一部編集のうえ、転載しています
豪華絢爛な画面に目が潰れるッ…!さすが俺たちのMAPPA
上映開始早々、まず胸をブチ抜かれたのが豪華絢爛かつ繊細な作画! 不朽の名作、かつ原作の美しさを損なうどころか、マリー・アントワネット(CV:平野綾)が結婚のためフランスに輿入れしてくる美しく荘厳な馬車の車列を映し出す自由自在なカメラワーク。
それを警護するオスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ(CV:沢城みゆき)ら近衛兵たちの凜々しいさま、画面いっぱい溢れんばかりに舞い散る大量のバラの華やかさなど挙げればキリがないほどのまぶしさに、冒頭いきなりスクリーンを観ている目がつぶれるかと思いました。
現代の最新の技術と、原作の作画に忠実なキャラデザで完成したキャラクターたちも素晴らしく、本作でメインとして描かれた将軍家の跡取りで、“息子”として育てられた男装の麗人オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ。
隣国オーストリアから嫁いできた気高く優美な王妃マリー・アントワネット。 オスカルの従者で幼なじみの平民アンドレ・グランディエ(CV:豊永利行)。 容姿端麗で知性的なスウェーデンの伯爵ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン(CV:加藤和樹)。
この四人についても10代から30代までの変化が終盤にいたっても丁寧に仕上げられていてビジュアルが強すぎます! さすが僕たち私たちのMAPPA、抜かりはありませんでした。
さらにオープニングからずっとバラが無限に舞っていて雅なフランスを描いていたのが物語が進むにつれて曇りになったり平民が貧困にあえいでいたり状況がどんどん悪くなっていくシビアな描写部分も辛いけれど丁寧に施されていて見逃せませんでした。
アンドレの意外な“オスみ”と情熱に腰が砕けました
ベルばらといえばなんといってもフランス革命という激動の時代に翻弄されながらもそれぞれの人生と愛を懸命に生きぬいていく二組の恋。
自身の手で人生を選びとり自らの信念に従ってフランス革命へと飛び込んでいく、その美しい生き様に今なお世界中から共感と憧れを集めるオスカル。将軍家の跡取り“息子”として厳しく育てられたオスカルは、従者であり幼なじみのアンドレとまるで兄弟のように一緒に成長します。
そんなふうに痛々しいほどに懸命に生きるオスカルを、アンドレは文字通り“生涯と命を賭けて”愛し守り抜きます。まさに幼なじみ純愛そのもの。
幼い頃は良き相棒として育った二人ですが、平民のアンドレはオスカルの実らないフェルゼンへの片恋をじっと見守り、自身の秘めたオスカルへの熱い恋心に何年も耐え抜きます。その心情をモノローグとして吐露する場面はキャストの声の切なさも相まって、もどかしさとままならない身分違いの想いに、しんど過ぎて客席で絞ったタオルのように身悶えました。
後半、オスカルがアンドレの想い、“自分がどれだけ深く愛されているか”ということに気づき、アンドレへの愛が開花していく様子や伝説の名シーンである“二人が結ばれる”場面では、それまで光のオスカルを“影として”忠実に支えてきたアンドレの“思いがけないオスらしさと燃え上がる情熱”という意外な一面にドキッ!
あなたそんな顔するのね!?そんな言葉言うのね!?と、もうギャップにメロメロ。展開を分かっていてもその甘さに腰がくだけるかと思いました! 個人的にアンドレ推しなので本作はお宝映画認定です。
そのぶんクライマックスは辛すぎて涙があふれて嗚咽止まらず。情緒がジェットコースターで泣き疲れてエンドロールを茫然自失で眺めていたオタクです。
苦しむフェルゼンが美しいー! THE・ベルばらな耽美さ
ベルサイユ宮殿での窮屈な生活に飽きて、お忍びでパリの仮面舞踏会に行った王太子妃アントワネットは、そこで容姿端麗で知性的なスウェーデンの伯爵フェルゼンと運命の出会いを果たします。
美しく誇り高く、でも純粋なアントワネット、そして一途なフェルゼンは一瞬のうちに恋に落ちます。しかしそこは既婚者で王族であるアントワネット、スウェーデン独身伯爵のフェルゼンとは道ならぬ恋。正直、背徳感も相まってこの仮面舞踏会のシーンはキングオブ豪華にしてエモさMAXです!
ダメだとはお互い分かっていて、一度はスウェーデンに帰国してまでアントワネットと距離を置いたフェルゼンが、燃え上がる熱い想いを苦悩しながらオスカルに打ち明けるその場面は、血肉の通ったキャストの声が相乗効果で猛烈に切ない! 観ながら心の中では(ハァ-!フェルゼンの苦しむ姿美しい-!)と不謹慎な叫びを上げていました。
数多の葛藤をくり返した結果、ついにアントワネットとフェルゼンの想いは実ります。この場面での二人があまりにもロマンチックで麗しくウットリするような美しさです。昂ぶる感情を抑えきれず溢れるセリフ、美しい二人が美しい景色のなかで、背景のなかで愛を確かめ合う艶やかさ。どの部分をとってもこれぞ“THE・ベルばら”な耽美さを思いきり堪能できる場面でした。
最高に贅沢な環境、容姿、地位があってもこれだけは超えられないはずだったアントワネットとフェルゼンの恋。
理性では割り切れるものがこの二人の運命的な恋だけは引き裂かれずに実ったこと自体が、そして令和のこの時代に、たとえ悲恋だったとしても最高の状態で劇場アニメとして甦ったことが奇跡のように思えます。
ちなみに原作もですが、本作のフェルゼンはやっぱり中身も外見も、そして声も超イケメン。アントワネットをはじめベルサイユ中の貴婦人だけでなく、オスカルの初恋だけでもなく、令和の我々をも秒で沼らせる罪なほど男前な仕上がりとなっているので要注意!
澤野弘之氏、歌わせる気満々じゃん!大正解のキャラソン
そして本作で特徴的なのは全編にわたって豪華で贅沢な楽曲が際立つこと!
劇場アニメ化を知った当初はキャストも音楽担当もまだ発表されていなかったため、(この名作がいったいどんな作品になるんだろう?)と正直うっすら不安がありました。
その後音楽担当、キャストが発表になった段階で(歌わせる気満々キャストだし、天下の澤野弘之氏!)と制作の意図が見え、劇中どんなふうに仕上がっているのかワクワクで映画館に出向きました。
結論として大正解中の大正解、壮麗にして壮大な劇判に彩られたベルばらはさらに輝き、各場面でのキャラソンはまったく無理のない挿し入れ方で心震える感情をさらに倍増させてくれる仕上がりとなっています!
葛藤し苦悩する心情や、うちに秘めたる想いや、永遠の愛、パリ市民たちの奮起する思いなどを歌い上げ流れるさまは、本作を極上の名作へと押し上げているので必見です。
全編にわたって製作陣の(あの不朽の名作をいま完全新作としてリスペクトをもって復活させたい)と言わんばかりの熱量や、キャスト陣から溢れるほどのキャラクター愛が伝わってきた熱い本作。
一生分の愛を見たと言えるくらい「愛とは」が詰め込まれていて分かっていても高鳴る胸のときめきと、こらえきれない涙で号泣するのを止められなかった感動大作。このストーリーを、何度でもぜひ劇場で見てほしい!
(執筆:加藤日奈)
劇場アニメ『ベルサイユのばら』作品概要
■キャスト
オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ 沢城みゆき
マリー・アントワネット 平野 綾
アンドレ・グランディエ 豊永利行
ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン 加藤和樹
アラン・ド・ソワソン 武内駿輔 フローリアン・ド・ジェローデル 江口拓也
ベルナール・シャトレ 入野自由 ルイ16世 落合福嗣
ジャルジェ将軍 銀河万丈
マロン・グラッセ・モンブラン 田中真弓
ノアイユ夫人 平野 文
ルイ15世 大塚芳忠
ロザリー 早見沙織
ダグー大佐 山野井 仁
ブイエ将軍 大塚明夫
ジャルジェ夫人 島本須美
ロベスピエール 小野賢章
ルイ・ジョゼフ 徳井青空
マリー・テレーズ 田中美海
ラサール 田丸篤志
ジャン 山下大輝
フランソワ 鈴木裕斗
ピエール 寺島惇太
ド・ゲメネ 高木渉
ド・ローネー 近藤浩徳
ナレーション 黒木 瞳
■スタッフ
原作:原作:池田理代子
監督:吉村 愛
脚本:金春智子
キャラクターデザイン:岡 真里子
音楽プロデューサー:澤野弘之
音楽:澤野弘之、KOHTA YAMAMOTO
アニメーション制作:MAPPA
製作:劇場アニメベルサイユのばら製作委員会
配給:TOHO NEXT、エイベックス・ピクチャーズ
■後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
■主題歌 絢香『Versailles - ベルサイユ - 』A stAtion
■HP:https://verbara-movie.jp/
■X:@verbara_movie(https://x.com/verbara_movie/)
©池田理代子プロダクション/ベルサイユのばら製作委員会
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