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常識をぶち壊す?『仮面ライダーガヴ』が“異様な空気感”を放つわけ。中盤から漂う「闇」や不穏な展開にニヤリとさせられる

2024年9月より放送をスタートさせた「令和ライダー」6作目の『仮面ライダーガヴ』。月日が経つのは早いもので、間もなく放送開始から半年が経過しようとしています。

例年の「仮面ライダー」であれば、若干この辺でマンネリが目立つようになり、仮面ライダーをさらに強化させるような形で、視聴者の興味を引いていこうとするのですが、今回の『仮面ライダーガヴ』に関しては少し様子が異なるようです。

『仮面ライダーガヴ』テレビ朝日公式サイトより
『仮面ライダーガヴ』テレビ朝日公式サイトより

本作は常に新鮮な印象を与えるストーリーやマンネリを防ぐ新要素が事あるごとに投入されているのです。

一体なぜ『仮面ライダーガヴ』は、ここまで飽きさせずに視聴者を惹きつけられるのか、そこにはキャラクターたちの魅力が関係しているように思われます。

※記事の特性上、ストーリーに触れています。


視聴者を飽きさせない「驚き」の仕掛けだらけ

『仮面ライダーガヴ』の物語は、グラニュートの世界からやってきた青年・ショウマ(知念英和)を主人公に展開されます。ショウマが人間界で様々なことを経験しながら、共に戦う良き仲間たちと出会い、成長していく姿を描き出しています。

実はショウマは、敵怪人が住まう「グラニュート界」を牛耳る家族・ストマック家の末っ子。主人公が敵怪人側の人間…という設定も驚きですが、仲間たちと仲たがいする場面もありつつ、その心優しい性格から自身を信じてもらうことが出来ました。

しかし、そんなショウマたちの前に、第3の仮面ライダーである仮面ライダーヴラムが出現。変身していたのは、なんと敵怪人である「グラニュート」だったという衝撃的な展開が訪れます。

怪人が「仮面ライダー」の一人になるなんて…!

通常、仮面ライダーは変身を繰り返すたびに怪人へと近づいていくといったように元々は人間である確率が高いのですが、今回のヴラムは正真正銘根っからの「グラニュート」で、場合によっては怪人態のまま変身するといった荒業を披露します。

仮面ライダーヴラムに変身するラキア(庄司浩平)は当初、大勢の人々を襲っていたことから、敵組織・ストマック家と共謀しているかと思われました。後々、ラキアはかつて弟の命を何者かに奪われたという悲しい過去があり、その人物の特定と復讐のために、単身、人間界へとやってきたという事実が判明します。

要するに、ストマック家の悪だくみを止めたいというショウマたちと利害が一致しているわけで、次第に協力関係を結ぶようになったということなのですが、登場したばかりの頃はグラニュートが変身する仮面ライダーということで、視聴者に大きな衝撃を与え、その異様な存在感が際立っていたのです。

ヴラムが「異様な存在感」を放っているわけ

加えて、そのフォルムや戦闘スタイルもまた強烈かつ斬新でした。『仮面ライダーガヴ』に登場する仮面ライダーたちはグミやチョコレートといった「お菓子」をモチーフにしており、仮面ライダーヴラムのモチーフとなっているのは、プリン。

ベルトにどっプリンゴチゾウをセットすると、上空からプリンのカップが落ちてきて、その中で変身…という過程もさることながら、変身後の姿も上半身はプリン一色。黄色とカラメル色で構成されており、耳の部分にはスプーンが刺さっています。

文字だけで表現すると、かなりシュールなフォルムなのかと思いきや、これが意外にもカッコいい! プリンを仮面ライダーのデザインに落とし込むという異次元のアイデアであるにもかかわらず、ここまでカッコ良くなるとは驚きです。

そんな可愛らしいモチーフとは異なり、ヴラムの戦闘スタイルはとにかくワイルド。もともとは復讐者という設定であることから、相手のことなど意に介さず、乱暴な攻撃で攻め込んできます。

クラゲ型グラニュート態の持ち味である触手を活かした攻撃で周囲もろとも破壊。アクロバティックなキックやパンチを繰り出す桁違いの強さを見せつけました。

変身を物理で阻止するってアリなの!?

衝撃的だったのはそれだけではありません。そもそも怪人が仮面ライダーに変身するという荒業を披露しているラキアですが、最も驚いたのは、ガヴに変身しようとするショウマのベルト(本作の設定上は腹部の口のガヴ)を掴んで持ち上げ、変身させないようにするという掟破りまで披露。

「仮面ライダー」の概念をぶち壊す存在だということを改めて実感させられました。

ただ、それでも弟を失った悲しみを抱えた仮面ライダーということで、キャラクターとしての魅力は抜群。

仮面ライダーに変身するキャラクターたちがそれぞれ胸の内に深い闇を抱いており、物語の中盤にきて、そういった闇を浮き彫りにしていくことで、マンネリ化を防ぎ、視聴者を飽きさせないことに成功しているように感じました。

偽者ショウマ=ビターガヴの登場で不穏さに加速が…

概念をぶち壊しているという点では、第21話「ビターすぎるガヴ」より猛威を振るっている偽のショウマ=ビターガヴの存在も見過ごせません。

突如、どこからともなく現れたビターガヴは喫茶店や駄菓子屋を襲撃。欲望のままに、食べ物を喰らいつくす姿が、とても恐ろしい雰囲気を漂わせていました。

当初はショウマ本人の可能性も否定できない状況下でしたが、次第にショウマとは別物の存在であることが明らかに。腹部のガヴがショウマのものとは異なり黒く、変身後の姿もブラックを基調とした姿となっています。

このビターガヴの描写で何とも驚いたのは、初変身時の蛮行です。なんと駄菓子屋を襲い、店内の駄菓子を喰らうだけでは飽き足らず、店主のおばあさんを突き飛ばし、袋たたきにするという、驚きの行動に出たのです。

通常は仮にも子供向け番組でもある「仮面ライダー」において、ここまで露骨な暴力シーンは描かれないのですが(その昔『仮面ライダークウガ』というすごい作品もありましたが…)まさかここまでするとは思いもよらず、文字通り、開いた口が塞がりませんでした。

可愛らしさの中に不穏さを混在させていた作風が、ビターガヴの登場により、一気に不穏さが加速。その影響で、マンネリどころかより一層の興味を湧かせる新鮮味を視聴者に提供することになったと言えるでしょう。

このビターガヴ、巷では映画『スパイダーマン3』(2007)で、主人公のピーター・パーカーが宇宙からやってきたシンビオート(ヴェノム)に寄生された際の豹変してしまった姿と重ねられていることもしばしば。確かにビターガヴの変身後の姿はヴェノムと酷似していますよね。

主人公が一番の悪者では?とさえ疑ってしまう

思えば『仮面ライダーガヴ』という作品は、どうにも掴みどころがないというか、突然、豹変したかのような様相を呈することがあります。

中毒性の強い「闇菓子」を流通させる敵がいたり、子供が敵怪人に変身したり、女性を水槽の中に突き飛ばしたりと、衝撃的なシーンがいくつも存在しており、これは本当に『仮面ライダー』なのかと疑ってしまうほどの異様な空気が流れています。

筆者のような大人の視聴者は「おいおい大丈夫か?」と思いつつも、どこかニヤけてしまうような作風になっているのです。

そうした異様な空気感を損なわないためにも、ラキアやビターガヴといった新たなキャラクターたちの導入が良いフックとなり、視聴者を引き付けて離さない要因になっていると言えるでしょう。

上記のような理由から、本作は、近年、マンネリ化しつつあった「令和仮面ライダー」シリーズへのテコ入れが施されているような印象を大いに受け、今までとはどこか違う新鮮な空気感を漂わせることに成功しているのではないでしょうか。実は主人公が一番の悪者なんじゃないか?とさえ疑ってしまいます……。

しかしながら、ご安心ください。本作は、ただただ怖いだけの作品ではなく、まるでおもちゃ箱のような楽しさと可愛らしさも詰まった作品というのを大前提にしています。

浅沼晋太郎演じる酸賀研造もまだ油断ならない

季節に合わせた様々なお菓子が登場しており、クリスマスにはクリスマスケーキやブッシュドノエルをモチーフにした強化フォームが登場し、バレンタインデー周辺ではチョコレートをモチーフにしたヴァレンがフォーカスされました。

今後もアイスをモチーフにしたブリザードソルベフォームの活躍を初め、これからの季節にピッタリのお菓子ライダーたちの活躍を観られそうで、思わず舌鼓を打ってしまいそう!

物語は折り返し地点を迎え、ますます盛り上がりを見せることは請け合いで、目下の注目ポイントは、浅沼晋太郎さん演じる酸賀研造の存在。当初は怪しげな雰囲気を漂わせながらも、絆斗を改造しヴァレンにしたことから善玉キャラなのかなとも思っていましたが、どうにも裏がありそうな予感…。

ショウマのDNAを採取し、ビターガヴとも関係していそう。彼の存在がさらなる盛り上がりに欠かせないキーパーソンとなるのは明白で、これからの動向から目が離せません。そんなキャラクターたちの新登場や変化が魅力的な『仮面ライダーガヴ』をまだまだ楽しんでいきましょう。

(執筆:zash)

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