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ガチ腐女子が身悶えした「音楽BL」漫画5冊を紹介する。リアルすぎるクズバンドマン、男前ギタリストに腰が砕けました…

暑い日が続きますが季節はそろそろ秋。芸術の秋には、音楽を感じるようなBLを傍に置いて漫画に浸っていたい……。

ということで、今回は「音楽を感じる」BLコミックをガチ腐女子ライターが5作品ご紹介します。

※2024.09.13に公開した記事を一部編集のうえ、転載しています


『ギヴン-given-』シリーズ  キヅナツキ:苦しいほどの青春の尊さ…!

『ギヴン』1巻(新書館)
『ギヴン』1巻(新書館)

好きだったはずのギターも、おもしろかったはずのバスケも、くすんで見え始めたある日。上ノ山は、壊れたギターを抱えた真冬と出会う。ギターを修理してやったら、とたんに懐かれるが、偶然聴いた真冬の歌が、上ノ山に刺さって――。キヅナツキが描く、裸のオルタナティヴ・ラブ!(コミックス1巻あらすじより)

奥まで刺さって、ぬける気がしない。真冬の声は、狂気で凶器だ。

【カップリング属性】
高校生離れした才能のギタリスト×印象的な歌声の高校生ほか複数CPあり

言わずと知れた音楽BLの代表作。アニメ化はじめドラマ化や舞台化、映画化とほぼすべてのメディアミックスで話題を呼んでいるギヴン。それらによってリリースされた実際の楽曲もエモさマックスで胸がしめつけられ涙があふれる本作。

物語は印象的な歌声を持つ佐藤真冬(さとう・まふゆ)や高校生離れしたギターの腕前を持つ上ノ山立夏(うえのやま・りつか)らが音楽でつながり、恋に揺れる姿を描く青春ラブストーリー。

この二人を軸に、高校生と大学生(大学院生)でのバンドの中の友情や恋模様や、真冬の置き去りにしたままだった過去の“とある”出来事、将来への葛藤、そして立夏と真冬以外の複数のカップルの様子を描く群像劇(シリーズ)となっていますが、それぞれが深い悩みと闘っていきながら共に成長するストーリーがリアルで、そのもがき苦しむ様子さえまぶし過ぎて青春の尊さに思わず泣いてしまいます…!

またバンドや音楽を通してみんなの感情の変化が描かれていたり、人と人との縁や絆、運命が音楽で繋がっていたりとキヅナツキ先生の冴え渡る感性と描写力は見事としか言えません。

『ギヴン』3巻(新書館)
『ギヴン』3巻(新書館)

本作はキャラクター一人一人の背景にしっかり物語があるので、誰に感情移入しても激しんどいのですが、複数CPのうち、とりわけ梶秋彦(かじ・あきひこ)×中山春樹(なかやま・はるき)with秋彦の元カレ村田雨月(むらた・うげつ)の三角関係がこじれまくりで辛すぎて読みながら身悶えしながら大泣きしました。

天才に嫉妬しながらも恋に落ち、追い求めるのに、みんな自分の気持ちの行き場がわからずお互いに傷つけあいながら右往左往。失われた過去への後悔、どう動けば良かったのか、人生と音楽が強烈にリンクしていくことへの怯えなど、それはメインCPの上ノ山立夏と佐藤真冬にも言えること。

読んでいると開いたページのコマから、音楽と恋の展開が燃え尽きそうなほどの情熱が吹き上げてくると共に、キャラクターそれぞれのガラス細工のように繊細な心情、一筋縄では理解しがたい、複雑にもつれた糸のような人間関係も大きな見どころのひとつです。

本編ギヴンは完結していますが、現在隔月刊連載本誌ではなんとギヴン10年後が連載されています! みんなが見たかった、知りたかったキャラクターたちの“その後”が次々と登場し、爆沸き必至。連載開始から10年余り経った今も、ギヴンには耳も目も心も奪われること間違いなしです。

『気まぐれなジャガー』シリーズ  ウノハナ:爆裂イケメンに腰くだけ注意。

『気まぐれなジャガー』1巻(ジュリアンパブリッシング)

音楽雑誌の編集者である新(アラタ)の元に、3ヶ月ぶりに椎名(しいな)が帰ってきた。天才ギタリストだが、日本の音楽業界からは半ば引退同然の身、しかし本人は一向に気にせず、自由奔放に国内外を行き来し、長い付き合いの恋人であるアラタのこともほったらかしだ。その気まぐれさに呆れながらも、戻ってきては自分にべったりと甘えて可愛くエッチをねだる椎名が愛おしいアラタだが…。(コミックス1巻あらすじより)

葛藤、劣等感、恋、セックス、贖罪、愛、音楽、夢、そして人生。

【カップリング属性】劣等感アリの年上音楽編集者×気まぐれな天才ギタリスト

設定と、実際に物語の始まりは気まぐれな天才ギタリストと、そんな彼に振り回される年上編集者という感じなのでそう思い込みそうになりますが、かなり早い段階で(あれっ、これもしかして違うな?)と気づくストーリー展開の面白さがとにかくすごい作品です。

現在から一気に過去にさかのぼることで、点と点をギャップで魅せ、あとからその合間を線で繋げてギャップを埋めていく。そうすることで登場人物たちの奥行きと魅力が増し、どんどんストーリーにハマっていく絶妙な仕掛け!

本物の「天才」を十代で目の当たりにして自分のギターに早々に見切りをつけざるを得なかったアラタが、「音楽が好きだ」「椎名が好きだ」の気持ちを捨てることなく音楽ライターの道を進んでいる経緯のネタバレはできませんが、アラタのロック野郎な熱さと青臭さは沼ること間違いなし! おまけにアラタ命な天才ギタリスト・椎名とのラブシーンでのアラタはちょっと余裕があって煽るような爆裂イケメン。椎名でなくても腰くだけ注意な男前です…!

また天才ギタリスト・椎名は無期限活動休止中の伝説的バンドPegのメンバーの一人。椎名の『とある』大きな理由で今は日本と海外を行ったり来たり、自由奔放にやっていますが、何をさておいても椎名は天才ギタリスト。世間が、聴く者すべてが放っておくはずがないのです。その描写をみるたびにコマを目で追いながら心拍数が上がるのを感じます!

『気まぐれなジャガー』2巻(ジュリアンパブリッシング)
『気まぐれなジャガー』2巻(ジュリアンパブリッシング)

バンド結成からデビュー、ライブシーンまでの疾走感はたまらない鼻息大興奮の極み。何度か作中で起こる“歴史的瞬間”にいったいどんな音が鳴り響いたのか、コマの中に見える観客たちの表情から伝わるその衝撃を想像しては、実際に耳で聴けないもどかしさにのたうちまわりました。主役二人の恋愛がしっかり描かれているだけでなく、彼らや彼らの周りでの音楽サイドもがっつり盛り込まれているので、興奮も倍以上!

唯一無二の“音”、その音圧、空気感、凄み、うねり出す観衆のパワー。こういったものを“画”で表現することの難しさを軽々と越えてくるウノハナ先生の表現力に、ただただ驚愕するしかありません。

さらにこの、恋愛と音楽がちゃんと繋がっている物語は最終話に近づくにつれて鳥肌が止まらず、もみあげの毛まで逆立つかぐらいの感動が待っています。この涙なしには読めないラストシーンは必見! 爆エモ過ぎて大号泣。自分から流れる大量の涙で軽く泳げます。

『世界でいちばん遠い恋』麻生ミツ晃:素晴らしさに祈りを捧げたい…

『世界でいちばん遠い恋 』1巻(海王社)
『世界でいちばん遠い恋 』1巻(海王社)

五十鈴歩(いすず・あゆむ)29歳難聴の投資家、壬生十嘉(みぶ・とうか)19歳バイオリニスト。音を知らない五十鈴(いすず)と音を奏でる十嘉(とうか)、偶然出会った二人は互いに“無いもの”を楽しむかのように距離を縮めていく。五十鈴に惹かれている自分に気づいた十嘉は臆することなく、真っ直ぐに感情をぶつけるがそんな十嘉に五十鈴は戸惑うばかりで…?(コミックス1巻あらすじより)

初めて知った。こんなに心をかき乱される感情を、恋を――。
【カップリング属性】孤高の大学生バイオリニスト×難聴の年上デイトレーダー

正反対の世界で生きる二人の、心震わす至高のラブストーリー。バイオリニストとしての才能にあふれ、けれど自身の音を見つけきれずに悩む十嘉の様子、感音性難聴でもバイオリンを演奏するさまを見て心を震わせる五十鈴の様子、ともに心理描写が繊細な一作

才能はあるが異端児で、周りから距離を置かれるけれど「自分にはバイオリンしかない」と足掻いている十嘉と、耳が聞こえないぶん自立しなくてはと必死に生きてきた五十鈴。
音に対して真逆な立場の二人で環境は正反対なのに、魂で惹かれあって一生懸命に対話し、交流を深めて互いを理解しようとするさまが尊くて涙が出てしまいそうになります。

しいてネタバレ回避で詳細を書けないのが辛いところですが、この主役の二人が惹かれ合う大きな原因となった過程でハッとさせられたのは「自分はふだん対話でちゃんと相手と向き合っているか」ということ。

バイオリニストの十嘉は自分の声も奏でる音楽も、ありのままを瞬時に届けることが出来ない五十鈴と接することで、初めて他人に何かを伝えるということの本質と向き合えるようになり、音楽人生に大きな影響を与える出会いとなったはず。

『世界でいちばん遠い恋 』2巻(海王社)
『世界でいちばん遠い恋 』2巻(海王社)

一方、難聴の五十鈴も耳で聞かない音楽と口でしゃべらない対話からでも、十嘉から色んな感情や状況を受け取り少しずつ見えてくる景色が変化していくように。

麻生ミツ晃先生は心が震えるような繊細な作風が持ち味で特徴的ですが、この作品も心理描写があまりにも丁寧で心に染み渡るように感情が伝わってきます。言葉で強引に設定を理解させようとせず、ひとつひとつのストーリーの過程で二人の内面を浮き出させてくれるのはさすがとしか言いようがありません。すべてのコマとセリフに意味が込められていて無駄がひとつもない素晴らしさには祈りを捧げたくなる気持ちに…!

まだ本作は完結を迎えておらず、この先二人がどうなっていくのか、十嘉にとってバイオリンで表現するとは何なのか、五十鈴にとって聞こえない音など越えて“感じ取ることができる十嘉のバイオリンの音”や十嘉から伝わってくる想いをどうするのか、などなど続きが待ちきれない大注目な作品です!


『隣のメタラーさん』マミタ:「メタル」への親近感が沸く!豆知識も楽しい

『となりのメタラーさん』(徳間書店)
『となりのメタラーさん』(徳間書店)

貧乏大学院生の遣斗(けんと)は大雪の日に家で凍死しかけたところを隣人の壮志(そうし)に助けられる。真っ黒な服を身に纏い、無口で強面な見た目は近寄りがたいけれど、表情を隠すように伸ばした髪からのぞく瞳は、何かを訴えるように揺れている。その日から毎日ご飯を作ってもらい、一緒に食べるようになって一年。この穏やかで幸せな時間が壊れていまうのが怖い――実は自分がゲイであることを隠し、膨らむ気持ちに蓋をしながら過ごす日々で…?!(コミックスあらすじより)

それは、俺と壮志さんが出会って2度目の春を迎えるまでの物語――
【カップリング属性】年下貧乏大学院生×寡黙で健気なメタルお兄さん

小さい頃から言葉が上手く出て来ず、人と話すのが怖くて周囲から孤立してきたメタル好きの青年・壮志が、極寒の雪の日、凍死しそうになっていた隣室の貧乏大学院生・遣斗を救ったことがきっかけで、朝夕のごはんを一緒に食べるご近所づきあいがはじまります。

遣斗はゲイで、寡黙でも親切な壮志にがっつり胃袋を掴まれて以降、壮志自身にも惹かれていきます。相手の好きなものを知りたいと、興味のなかったメタルのライブに一緒に行って、今までやったことのないことを体験してみるなど、他人と接するにあたって壁を作らないところがとても素敵で優しい印象を受けましたが、ここでマミタ先生の表現力と設定が冴えていることに気づきます。

言葉がつっかえてしまう壮志は上手く話せないのですが、遣斗は幼児教育の研究をしている大学院生なので落ち着いて壮志に耳を近づけて話してくれるのをゆっくり待ちます。人に思いを伝えるのがうまく出来ない、すぐにいっぱいいっぱいになってしまう壮志に合わせたペースで寄り添える遣斗はさすがプロの対応。子どもにも好きな人にも寄り添える遣斗のキャラ設定はとても良く活かされていて、胸がホッコリ。穏やかで優しい遣斗に胸キュンです。

た、カバー下のあとがきにもギッチリ書き込まれていましたが、マミタ先生が大のメタル好きということもあり、作中に出てくるメタル情報やメタルライブ参戦のたしなみなども、分からない読者向けに丁寧に分かりやすく解説してあり、メタルについても思いきり楽しめます。

ちなみにメタルを聴くと元気になるので寒い北欧の方たちは老若男女メタルを聴いている、などの豆知識も得られ、一気にメタルへの親近感も湧きました。

無口で口下手で目つきが怖い壮志には、なぜメタル好きになったのか、髪の毛を伸ばしてせっかくキレイな顔を隠しているのか、あえてネタバレを避け詳細は控えますが切なくて哀しい理由があります。途中で何度も涙が出そうになりますが、この穏やかで切なくてポカポカな温かい気持ちになれる作品の世界観を実際に読んで味わって頂きたい。読み終えたあとの感動と心の余韻も優しく、オススメの一作です…!


『よるとあさの歌』はらだ:臨場感モリモリでおったまげました。

『よるとあさの歌』(竹書房)
『よるとあさの歌』(竹書房)

女にモテたくて仲間とバンドを始めた朝一。そんな朝一がボーカルを担当している弱小バンドにサポメンで入ってきたヨル。ライブの後のちょっとした「お遊び」の時に起こった一度のアヤマチ。それをきっかけに、ヨルは朝一への想いを明らかにしていく。「男同士なんて気持ちワリィ…」と嫌悪感しかなかったはずの朝一なのに、衝撃的なヨルの歌声に思わず欲情しカラダを求める日々へと変わる。朝一を一途に想い続けるヨルを軸に、めまぐるしく加速する欲望、暴走する嫉妬、それぞれのキモチの行方は……?(コミックスあらすじより)

アイツの歌声を聴いてから、うるさく響く心臓、滾る欲望。
【カップリング属性】ゲスでヘタレなボーカル×一途な美人才能アリなベース

出ました進化し続ける鬼才・はらだ先生、本作はバンドもの! はらだ節炸裂の絶好調っぷりでイキイキと下衆攻め×一途な健気受けが鮮やかに描かれています。

攻めの朝一はびっくりするほどリアルなクズバンドマンです。少々リアル過ぎて、バンドやライブ、バンドマンと出待ち常習ファンや貢ぎ物上等認知厨ファンとの関係を見事に描ききっていて、実際に小さい箱のライブに行ったことのある人間にとっては読んでいてその場にいるかのような臨場感におったまげるかと思います。

弱小バンドのボーカル朝一のコンプレックスは、才能に溢れるヨルが自分よりみんなからモテること。このように根っこの部分が下衆で小心者の朝一は、ともするとあまり共感が得られなくなりそうで、下衆攻めには賛否両論あるようですが、どれだけゲスくても思わず情が湧くようなキャラを描けるのがはらだ先生の素晴らしいテクニック。

若さゆえの自信過剰・イキがりとともに(どんなに魅力的でも男(ヨル)なんかに堕ちるなんで絶対に認めない!)という強がりも巧妙に描かれていて面白いです。

『よるとあさの歌 Ec』(竹書房)
『よるとあさの歌 Ec』(竹書房)

一方、受けのヨルは美人系長身イケメンで天然、憂いのある色気があり一途で奇跡の歌声を持ち、たまらなく魅力的なキャラ。ライブ中の格好良さと、大好きな朝一の前では恋する乙女のような態度のギャップもまた可愛らしい!

中盤まで攻めである朝一がクズ過ぎるのでどうしようかと思いましたが、こういう脇アマでイージータイプがどんどん魅力的な受けであるヨルに堕ちていく姿は最高ですね。滾ります。はらだ先生の作品が大好きで、特にはらだ先生作品特有の薄暗さであったり、ねじ曲がった人間の汚いところや、ぐちゃぐちゃな部分が好きな人にはたまらない場面もあります。これも読み応えと、醍醐味のいち部分だとも思えます。

また、ヨルは元々のバンドでボーカルをしていたので、歌うシーンは圧巻。艶やかな表情と眼差しでマイクに向かう姿は魅入ってしまうほど!いったいどんな声なのかとコマを凝視して聴きたい欲求をひたすら想像で補うしかないのが残念です。

はらだ先生持ち前の表現力は本作でも存分に発揮され、「男も女も惚れる歌声」という設定によって、ライブ感、躍動感はもちろんのこと、飛び散る汗、なびく髪、むき出しの歯や舌、涙、体から出るものすべてが勢いよくほとばしっていて生々しい!

これでもかと迫力のある歌声や演奏シーンが描かれて、どの描写ひとつとっても、読み手に臨場感モリモリで伝わってくるところが最高の一作です。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

以上、上記5作品を「音楽を感じるBL」としてピックアップしてみました。コマから噴き出してきそうなほどの熱い音楽の情熱を感じる作品や、どんな音なのか知りたくてのたうち回った作品、ポカポカ癒やされ作品等々、音楽BLにももっともっと色んなタイプの作品があるのでは? 

さらに調べたくなってくだされば幸いです。

(執筆:加藤日奈)

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