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『左ききのエレン』原作者かっぴーが語るAI時代の創作論「挑戦しない理由は“はずい”だけ」

「アナタの推しを深く知れる場所」として、さまざまな角度で推しの新たな一面にスポットを当てているnumanによる連載企画『AI時代を生き抜く、“沼”クリエイターの流儀』。第一線で活躍しているクリエイターの方々をお迎えし、制作におけるこだわりや、AI時代においても失われることのない“人間ならではの創作の意義”を深掘りします。

今回は、2026年4月よりTVアニメ放送がスタートする『左ききのエレン』の原作者であり、株式会社なつやすみ代表のかっぴーさんにインタビュー。原作者としては異例となるアニメ製作委員会への参加の裏側や、キャスト決定の秘話、そしてアフレコ(声の収録)現場で見つけたマニアックな気づきについてたっぷりと語っていただきました。

そして後半の有料パートでは、次々と夢を叶える中で直面した「燃え尽き症候群」のリアル、生成AIが進化する現代において人間が創作する意味、さらには挑戦のハードルが下がり続ける現代で、誰もが抱える「恥ずかしさ」というハードルに迫ります。

(取材・執筆:阿部裕華)

TVアニメ『左ききのエレン』作品概要
<放送情報>
4月7日(火)深夜24時〜テレ東系列ほかにて放送開始
テレ東系列 4月7日(火)から毎週火曜深夜24時
AT-X 4月10日(金)から毎週金曜夜9時 リピート放送:毎週火曜朝9時/毎週木曜午後3時

<配信情報>
Prime Videoにて、4月7日(火)より毎週火曜 深夜24時30分~見放題最速配信
その他動画配信サービスでも、4月12日(日)より毎週日曜 深夜24時30分~順次配信
※その他の配信情報はアニメ公式サイトをご確認ください。
※配信開始日は予告なく変更となる場合がございます。詳しくは各動画配信サービスの情報をご確認ください。

<キャスト>
朝倉光一役:千葉翔也
山岸エレン役:内山夕実
加藤さゆり役:石川由依
岸あかり役:関根明良
神谷雄介役:興津和幸
三橋由利奈役:天海由梨奈
柳一役:遊佐浩二
朱音優子役:結川あさき
流川俊役:新垣樽助
佐久間威風役:松田健一郎

<スタッフ>
原作:かっぴー「左ききのエレン」
監督:鈴木利正
シリーズ構成:岸本卓
アニメーションキャラクター原案:後藤隆幸
キャラクターデザイン・総作画監督:福地祐香、玉井あかね
色彩設計:関本美津子
美術監督:佐藤豪志
美術設定:小幡和寛
撮影監督:有村駿
編集:増永純一
音響監督:明田川仁
音楽:パソコン音楽クラブ
オープニングテーマ:ALI「FUNKINʼ BEAUTIFUL feat. ZORN」
エンディングテーマ:紫 今「New Walk」
アニメーション制作:シグナル・エムディ/Production I.G
製作:アニメ「左ききのエレン」製作委員会
©かっぴー/アニメ「左ききのエレン」製作委員会
公式 HP:https://eren-anime.com/
公式 X:https://x.com/eren_anime_PR
公式 TikTok:https://www.tiktok.com/@eren_anime_pr

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「全部やる」と決め、原作者が製作委員会へ異例の参加

――いよいよTVアニメ『左ききのエレン』の放送がスタートします。今回のアニメ化にあたって、これまでのドラマ化や舞台化などと比べて、関わり方に違いはありますか?

かっぴー:
全く違いますね。今回のTVアニメにはかなり関わっています。一番分かりやすいところで言うと、アニメへ出資をして製作委員会のメンバーとしても参加しているんです。委員会のメールのやり取りもすべて見ていますし、毎回の打ち合わせにも参加しています。通常、原作者がここまで深く関わることはないと思うのですが(笑)

――なぜ、アニメ制作へそこまで深く関わろうと決めたのでしょうか。

かっぴー:
ドラマ化などの際は完全に現場へお任せして、ご挨拶に伺う程度でした。ただ、今回のTVアニメは「全部やる」と決めて臨みました。両方の関わり方を経験して、どちらが良い作品を生み出せるか試してみたかったという思いがあります。

――原作者自ら出資までされて、製作委員会に入られるのは本当に異例のことだと思います。

かっぴー:
僕が責任を持って出資から携わり、アニメが盛り上がって結果的に本が売れることで、nifuniさんや『少年ジャンプ+』編集部に還元したいと考えました。みんながハッピーになれる形を目指して、今回は「全部やる」と決めたんです。

「アニメは声が大事」アフレコ全参加で貫いた“言葉”への責任

――「全部やる」ということは、アフレコ現場にも参加されているのでしょうか?

かっぴー:
アフレコ現場にはほぼすべて参加しています。そこは自分でやろうと思っていました。アニメは「声」がすごく大事じゃないですか。ですから、アフレコ現場で、演技や気持ちの部分を直接汲み取れたらと思ったんです。僕はもともと“セリフの人間”なので、原作者として絵よりも言葉やセリフに対してはしっかりと責任を持ちたいなと。

一方で、絵に関しては全面的に信頼しています。大好きなアニメをたくさん作られている制作会社さんが担当してくださっているので、ある種信用してお任せしているという感じです。僕自身は、主に言葉周りに関して責任を持とうと思って関わっていましたね。

――「僕はもともと“セリフの人間”」とお話されていますが、『左ききのエレン』は言葉の力が強い作品です。キャストを決める際、悩まれたのでは……?

かっぴー:
エレンの声は非常に悩みました。最終候補に残った数名のサンプルボイスを聴かせていただいたのですが、当然ながら皆さん本当に素晴らしいんです。ただ、エレンは一面的なキャラクターではありません。冷たい孤高の天才という側面もあれば、ダメな部分や子どものような部分も持ち合わせています。見る人によってイメージに幅やブレがあるキャラクターなので、「どのエレンにフォーカスして声優さんを選ぶべきか」と大いに迷いました。

一方で、朝倉光一役の千葉翔也さんは、声を聴いて「光一だ!」と思ったんですね。だからこそ、エレン役に関しては千葉さんとの相性も吟味した上で、強い意志を持って「内山夕実さんにしよう」と決断しました。結果として、世界観にすごく合っているなと思います。

――アフレコ現場では、ディレクションも行われたのでしょうか。

かっぴー:
結果的に、アフレコ現場でそこまで口を出すことはありませんでしたね。より良くなるためのコメントは少しお伝えしましたが、基本的には良い距離感でやらせてもらっています。

とはいえ、原作者が現場にいることで、制作陣に迷いが生じた際、「こっちのパターンでいきましょう」と即座に判断できるのは、少しばかりですが進行がスムーズになって良かったのではと感じています。

――そこまで深く関わったアニメの完成映像をご覧になって、いかがでしたか。

かっぴー:
自分で生み出したキャラクターたちの魅力を、改めて発見できたと感じています。これまで、天才の才能や美人の美しさを、自分の画力の限界がある中で、演出やセリフを駆使して表現してきました。ですが今回、シンプルに「アニメの最大の魅力はビジュアルのインパクトだな」と感動したんです。

ストーリーは100回以上読んでいるので知っているはずなのに、自分が生み出したキャラクターが動く姿を見てすごく胸が熱くなりました。子ども時代、思春期に初めて『新世紀エヴァンゲリオン』の綾波レイを見て、興奮して眠れなくなった夜のように、ずっとエレンのことを考えてしまいましたね。「アニメ版のエレンのビジュアルがプリントされたTシャツが欲しいな」と思ったくらいです(笑)。 これまでnifuniさん作画のリメイク版、ドラマ版や舞台版など、何人ものエレンが存在してきましたが、また新しいお気に入りのエレンが加わって、とてもハッピーな気持ちis.

専門用語が飛び交うアフレコ現場は“取材”の宝庫

――かっぴーさんは広告代理店を経て、マンガ家としてデビューされているので、さまざまなコンテンツ制作に携わってきたかと思いますが、アニメ制作の現場での新たな気づきや学びはありましたか?

かっぴー:
まだ制作が終わっているわけではないので、咀嚼しきれてはいないのですが……アフレコ現場に行って一番良かったと思うのは、アニメ業界の専門用語を学べたことですね。僕はものづくりが好きで、さまざまな制作現場を舞台にしたマンガをずっと描いてきているので、現場に行くたびに耳慣れない専門用語が出てくると必ずメモをしています。広告代理店の人たちが使う言葉については、誰よりもうまく描ける自信があるのですが、アニメ業界の言葉はまた新鮮で。

具体的には、台本に出てくる「ボールド(※喋り始めと終わりの目安)」や、「別線(※キャラクターのセリフが被る時に別々に録音すること)」といった用語です。単に言葉の意味を調べるだけでなく、現場でどういう文脈で「別線で対応しよう」と使われているのかを観察しています。「別線ください」「オンリー(※一人だけの声)ください」といった言葉が飛び交う際の、トーンやニュアンスまで細かくメモしています。取材という観点からも、本当に面白い経験ですね。

――いつか、アニメ制作の現場をテーマにしたマンガを描く可能性もあるのでしょうか。

かっぴー:
そうですね……。ただ、アフレコの収録ブースって機械がものすごく多いので、作画の負担が大きすぎて自分ではたぶん描かないです(笑)。もし描くとしても、背景を描きたくないから「Zoomでアフレコに参加している」というシーンにすると思います。原作を担当しているときは好き勝手な要望を言えますが、自分で作画するとなると「こんな複雑な場所、描けないよ……!」となってしまいますからね。その点、アニメは背景が贅沢に描かれていて素晴らしいなと思います(笑)。

夢が叶うたびに陥る「燃え尽き」のリアル

――過去にはインタビューでアートディレクターという第一志望の夢に破れたご経験を語られていましたが、外から見ると「マンガ家としての夢」は次々と叶えられているように見えます。ご自身の現状をどう感じていらっしゃいますか?

かっぴー:
「夢が叶っている」という感覚は、結構早い段階からずっとありました。独立したときなんて、『少年ジャンプ+』のようなメジャーな媒体で連載できるとは夢にも思っていませんでしたから。当時決まっていたのは、週刊誌の「SPA!」と「cakes」というWEB媒体での連載だけだったんです。

だから、1年目の夢は「集英社から1冊でもいいから本を出したい」ということでした。「JC(※ジャンプコミックスの略称)」のロゴを背負った作品を1冊でも出せたら、50歳になっても一生自慢してやるって本気で思っていたんです(笑)。

――最初は、「ジャンプコミックスから1冊出すこと」が夢だったのですね。

かっぴー:
でも、実際に夢が叶いはしたものの、最初全然売れなかったんですよね。担当編集者から「ちょっと売れ行きが芳しくない」というLINEをもらって。そこから今度は「重版しなきゃ」と、「重版すること」が夢になりました。1年かけてようやく重版したときには、すでに単行本を4冊くらい出していて、「まだ連載は続くぞ」という状況でした。

そうなったときに、「まあ無理だろうけど、やっぱりマンガ家になったからには100万部かな」と、1個夢が叶うと「もう1個、もう1個」と目標が更新されていって、やがてドラマ化も叶いました。

ただ、毎回わかりやすく、夢が叶うたびに緊張の糸が切れているんですよ。100万部を超えてドラマ化が重なったすごいタイミングがあったのですが、そのときに本当に燃え尽きたようになってしまって。「何もやる気が起きないし、描く気もなくなって、夜中に散歩している」という日記を書いたことがあるくらい、毎回毎回しっかり萎えているんです。全然意志が強くないんですよ(笑)。

――では、アニメ化が決まった現在はどうなのでしょうか……?

かっぴー:
ここ最近もやばかったですね。過去形ですけど、アニメ化が目前に迫っていて、とにかくやることが多いから萎えている暇なんてないはずなのに、忙しすぎて逆に冷静になっちゃって。

今、全巻重版がかかってちょうど400万部に届くタイミングなのですが、「アニメ化してうまくいったら500万部とか行くのかな」と思ったときに、「でも400万部も500万部も、どっちもすごいよな」「もうそんなに頑張らなくてもいいか……」と急に思ってしまって。年が明けて少し経った2月、3月はすごくモチベーションが下がっていました。最初「1冊出せればいい」と思っていた人間からすれば、もう夢が叶いまくっていますからね。

――そこからどうやって、再びモチベーションを取り戻したのでしょうか?

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