「どんなに心が疲れても、推しを嫌いになれない…」葛藤から抜け出すための現実的なアプローチとは【推しへの“愛”を心理学で解説 #7】
偏愛カルチャーWEBマガジンとして、さまざまなコンテンツの魅力を届けているnuman。本連載「オタクの心理学~推しを愛する心の裏側~」では、オタクが推し活の中でなんとなく感じている“心の不思議”を紐解きます。
危険な行動を取ってしまう心理や、推し疲れと消費の心理――そんなオタクの心の内を、オタク文化を網羅的に分析した書籍『オタク・スペクトラム : オタクの心理学的研究』の著者であり臨床心理士・公認心理師の山﨑尚彦先生のご知見を交えて紐解いていく本連載。今回は、「“推し疲れ”から抜け出すための具体的なアプローチ」について聞きました。
自分でも気付けなかった感情の正体や心の仕組みを知ることで、自身の推しへの向き合い方や、推し活をするうえでの注意点についてより深く理解できるはず!
<プロフィール>
山﨑尚彦(やまざき・なおひこ)
臨床心理士・公認心理師として、精神科臨床や学生相談など、主に医療・教育分野の臨床に携わる。帝京大学医学部付属病院脳神経内科にて高次脳機能障害の研究に従事し、東京藝術大学・関東学院大学などで非常勤講師も務めつつ、筑波大学大学院人間総合科学研究科ヒューマン・ケア科学専攻3年制博士課程を修了。
■『オタク・スペクトラム : オタクの心理学的研究』
(山﨑尚彦/福村出版)
定量的データと膨大なコンテンツ紹介でオタク文化を網羅的に分析する。心理臨床支援にも役立つオタク論。■公式HP
「推し以外で満たせばいい」は理想論。同じ悩みや後悔を持つ“仲間”を見つける大切さ
――前回は「推し疲れ」を感じた際の客観的な対処法について伺いましたが、「“頭では分かっていてもやめられない”と苦しむ方も多い」と仰っていました。そうした当事者の方に向けて、本質的な向き合い方やアドバイスをお願いします。
山﨑尚彦(以下、山﨑):
まず認識していただきたいのは、「心が疲れているのにやめられない」という、まるで行動嗜癖(こうどうしへき)のような状態は、「放っておけば自然に治る」という前提を置かないほうがいい、ということです。例えばギャンブル障害などの大規模調査でも、約3分の1は自然に改善するものの、残り3分の2は自然には治りにくいという結果が出ています。
私の臨床経験やフィールドワークにおいても、「推し活によって得ている満足感を、それ以外で満たすことができれば苦労しない」と感じる当事者が非常に多いのが実情です。現実で深い恋愛関係や友人関係を築きたくても、拒絶されたりした過去の経験が苦い記憶として残り、足踏みしてしまうケースも少なくありませんでした。
そうした背景を無視して「ほかで満足を得ればいい」「つらいならやめればいい」とアドバイスするのは、少し無責任だと感じます。大切なのは、自分が「どこで、何につまずいているのか」を正しく理解し、少しずつでも前に進めるようなアプローチを模索していくことです。
――では、具体的にどのように前に進めば良いのでしょうか?
山﨑:
お伝えしたいのは、ご自身の状態を「メンタルヘルスに関連する問題かもしれない」と客観的に捉え直してみる、ということです。
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